3ー2
親友の父親の性事情など聞きたくない。
まいがポツリポツリと呟くあいを制止した。
言い方が悪かった。
あいは、まいのその言葉を聞き、明るい笑みを見せた。
「じゃ、じゃあ良いってこと?私スーパー行ってお刺身買ってくる!」
「え?あっ、ちょっ、待って!」
まいの制止も虚しく、あいのいない自室に響くのみであった。
「やばい……やばいやばいやばいやばいやばい……。」
本気か?
あいは本気なのか?
意味が分からない。
まいの頭は今にもパンクしそうだった。
なんとか回避することは出来ないだろうか?
まいは知恵を振り絞る。
「……あ。」
思いついた。
スッと立ち上がり、玄関へ向かう。
そして、鍵をかける。
完璧だ。
「あ、そうだ……。忘れてた。」
自室に戻り、携帯電話の電源を切る。
自力で拒めないのであれば、彼女が抗えない状況を作れば良い。
要は立て籠れば良いのだ。
「よしっ。」
一安心。
ベッドに横になるまい。
ガラララ。
「いや!おかしいでしょ!?」
ベランダから入ってくるあい。
その手には、ビニール袋。
中にあるものなど、見なくても分かる。
「な、なんで入ってこれるの……。」
「え?なんでって……普通にって開いてたし……。」
あいはそう言いながらガサゴソと袋の中を漁る。
「あっ……。」
そうか、うっかりしていた。
「さ、やろっか?」
にっこり。
手にはまぐろの刺身の入ったパック。
あぁ、逃げられない。
まいは、あいの笑みに今まで感じたことのない絶望感を味わうのであった。
身体から力が抜ける。
もう動けない。
逃げられない。
「さ!寝て寝て!」
るんるん気分のあい。
そんな彼女に促され、自分の意志とは裏腹にベッドに横になるまい。
なぜこんなことになってしまったのだろう。
あいに服を捲られ、まいの腹部が露になる。
羞恥で顔が熱くなり、自身の顔が真っ赤に染まっているのが分かった。