12ー1
「ね、ねぇ……。」
「うん、まいの言おうとしてることは分かる。」
後日の朝。
教室で談笑していたあいとまい。
そんな彼女らが、自身らに向けられたある視線に気づいた。
その容姿から普段も注目の的の二人。
そして、街中では声をかけられることもある。
そんな生活をしていた為、二人とも、自身らに向けられた視線には慣れたと思っていたのだ。
しかしそれは甘かった。
ねっとりとした不快感。
身体中鳥肌が止まらない。
視線の正体。
それは彼女らの友人からのものだ。
陽子からのものなのだ。
二人がゆっくりと陽子へと歩み寄っていく。
件の陽子はと言うと、先ほどまでチラチラと彼女らを見ていたのに露骨に視線を逸らしていた。
「ねぇ、陽子?」
先陣を切ったのは、あいだった。
「んへっ?な、何?」
ぴくっ。
大袈裟に反応する陽子。
その間も、二人のいる方を決して見ようとしない。
「なんか最近おかしくない?その……おかしくない?」
あいに続くまい。
具体的に変化した場所を述べようとした。
しかし、あまりにも初期の彼女と印象がかけ離れている現在。
何をどう言えば良いのか、彼女には分からなかった。
「そ、そうかな?いや、ほら、二人話したら?私は聞いてるからさ、ね?」
「いや、今は私達が陽子の……。」
「ほらっ!早くイチャつきなよ!」
声を張り上げあいの言葉を遮る陽子。
「い、イチャつきっ!?」
「は、はぁ!?な、何言ってるの!?」
驚愕、そして直後に赤面。
タイミングに誤差こそあれど、あいとまいの顔には同じ表情が浮かんでいた。
チャイムが鳴る。
授業が始まる為、一時中断しないといけない。
「と、とにかく後でねっ!」
あいはそう言うと、自身の席へと小走りで戻っていった。
一方のまいは、無言で俯いたままゆっくりと席へ戻っていく。
その際、彼女は周りが見えておらず、周囲の机にぶつかりながら進んでしまった。




