11ー2
少しすると、あいは次々と声をかけられていった。
ナンパやスカウトなどだろう。
ギリギリ歯軋りをする陽子。
歯痒い。
すぐにこんな不埒な輩どもを排除したい。
しかし、そんなことをしてしまえば自分が彼女を見ていたとバレてしまう。
ごく自然、そうごく自然に会う必要がある。
こんなこと、ストーカーみたいだ。
「違う、私は違う。ストーカーじゃない。声をかけるタイミングを探しているだけ……。」
ぶつぶつぶつぶつ……。
あいが待っていた者が現れた。
「ごめん、ごめん。お待たせー。」
「いや、良いよ。今来たところだから。」
ベタだ。
ベタなやりとりだ。
だかそれが良い。
陽子は心の中で感涙した。
あいが待っていたのはまいだったのだ。
歩く姿も絵になる。
なぜ近所に住んでいる彼女らがわざわざこんな街中で待ち合わせているのか分からない。
しかし、そんなことはどうでも良い。
今二人がそこにいることが陽子にとって重要なことであった。
安心のあまり、帰りそうになる。
「危ない危ない……。」
見届ける必要がある。
それが今の陽子が自分に課した使命であった。
フンス!
鼻息荒く、周囲の視線が陽子に集まる。
「ママー、あのお姉ちゃん牛さんみたーい。」
「こら、こっち来なさい!見るんじゃありません!」
古くからから続く伝統芸能の件が終わった。
二人が歩き出した。
それに着いていく陽子。
人混みをかき分けていく。
付かず離れず。
適度な距離を心がけていた。
雑貨屋に入っていく二人。
店内は狭く、通路をすれ違うと肩がぶつかってしまうほどであった。
これは店内に入るとバレてしまう。
泣く泣く通りから二人を見つめる陽子であった。
声が聞こえない。
それだけで楽しさが半減する。
陽子は目を凝らす。
凝視するのは彼女ら二人の口元。
読唇術などしたことない。
それでも彼女は持てる最大限の力を使い、何を話しているのかを見るのであった。




