10ー2
甘やかしてはいけない。
そうは思ってもこの彼女の表情を見るとついつい甘やかしてしまう。
そんな自分が堪らなく嫌いで好きなまいであった。
「海行こうよー!海海!」
「うぐっ……ひ、人多いし止めておかない……?」
俯くまい。
「えー?なんで?せっかくの夏休みなんだし泳ごうよ。」
そんな彼女の視線に合わせるようにまいの顔を覗き込むあい。
「な、なら潮干狩りにしない?ほら、その……貝だよ、貝。お味噌汁に入れたら美味しいよ?」
「……え?まぁ、確かに貝のお味噌汁は美味しいけどさ、潮干狩りの時期って梅雨の前くらいなんじゃないの?」
「え、そうなの?」
「……分かんない。」
沈黙。
どちらも答えを知らなかった。
「パソコンで調べて良い?」
答えが出ない為、話が進まない。
痺れを切らしたあいが言った。
その言葉に頷くまい。
先ほどの潮干狩りの件は、彼女の口から適当に出たものであった。
しかし、あいと話しているうちに少し興味が出てきたのだ。
「……基本的には春なんだって。」
「へー。」
「貝もいなくはないけど小さいんだって。」
「へー。」
「あれ?まい興味ない?」
「いや、そんなことないよ?よし、なら海は止めよう!」
時期ではないのであれば仕方がない。
うん、仕方がない。
では海は止めよう。
それがまいの考えであった。
「えー、ならプール行こうよー!流れるプール行きたいよー!」
くそ、ちょっと楽しそうじゃないか。
「い、いやプールも止めない?」
「えー、夏らしいことしようよー。」
夏らしいことか。
うーん。
まいが唸りながら考える。
「きゃ、キャンプとか……。」
「テント立てれるの?私作り方知らないよ?」
「な、なら流しそうめんとか……。」
「流す道具は?」
そんなものあるわけない。
「ぐ、ぐぬぬ……。」
何も言えない。
まいは唸ることしか出来なかった。




