10ー1
バタン!
「まいー!遊びに行こうぜー!」
まいの部屋の扉が開くや否や響くあいの声。
ノックなど不要。
そんなものは使わなくて良い。
そう言わんばかりのあいの態度。
それに内心苛つきながらも顔には出さないまいであった。
「……宿題やったの?」
「八月にやるから大丈夫。」
むふー。
鼻息が荒い。
なぜかしたり顔をしているあい。
これは知っている。
毎年経験しているものだ。
恐らく例年通り、彼女は八月末に泣きすがることとなるだろう。
「それ毎年言ってるよね?」
「まぁまぁ。落ち着いてよ。ほら、アイスでも食べて。」
「え?ありが……ってそれうちの冷蔵庫から持ってきたやつでしょ!?もう!」
それは、夏休みが始まり三日が経った朝のことであった。
まいは、自室で宿題をしながら携帯電話を用いて大学のホームページを見ていた。
そんな彼女の部屋へ来たあい。
彼女の白い肌が、少し日焼けして、ほんのり赤くなっていた。
「……日焼け止め塗ってないの?」
「あー、面倒だからね。」
これも例年通り。
「……後で後悔するよ?」
「それもまた一興。」
これも例年通りだ。
そして、恐らく数日としないうちに痛みに耐えられずに、泣きべそをかきながら助けを求めるのだろう。
まぁ、良い。
毎年のことだ。
まいが宿題の冊子を閉じる。
ちょうど良い時間だ。
休憩がてらあいと何かしよう。
「あれ?もう終わったの?早いね。」
「いや、休憩だよ。」
まいがベチョベチョに溶けたアイスを見つめながら言った。
また冷蔵庫の冷凍室にでも入れればアイスとして食べられるだろうか?
そんなことを考えていたのだ。
「じゃあ、どっか行かない?」
そういう休憩じゃない。
「もう……明日ね。」
ため息をつくまい。
いつもそうだが、あいのペースに飲まれていく。
「やったー!どこ行く、どこ行く?」
目を輝かせるあい。




