8ー4
一方のあいのファンクラブは、比較的明るめな者達が大半であった。
彼女らはお茶会などはしないが、アプリであいの写真を撮り、日夜品評会を行っているらしい。
どちらもぶっ飛んだ集団だ。
それが、彼女らに対する陽子の抱く印象であった。
これ以上ここにいる者達と関わっていたら危ない。
「そ、そうなんだね、ありがとう。じゃあ私行くから。」
「まぁまぁ。」
がしっ。
陽子の右肩を掴む。
「せっかく私達のお嬢様に興味を持って頂いたのですもの。」
がしっ。
陽子の反対側の肩を掴む。
「もっと話そうよ。」
にっこり。
なぜ普段は意見が合わないのにこういう時だけ合うのだ。
苦笑いの陽子。
半ば強制的にこの場に留まることとなった。
「あの方の綺羅びやかな金の髪をご覧になって?」
「あいの黒真珠みたいな髪を見てよ?」
「輝いていて綺麗でしょ?」
「艶やかで綺麗でしょ?」
「透き通るような白い肌。」
「黒く長い睫毛。」
「サファイアのような高貴な光を放つ瞳。」
「モデルのようにすらりと伸びた手足。」
左右から交互に囁かれる。
フラフラと、陽子の身体から力が抜けていく。
咄嗟に椅子に手が伸びてそのまま引き寄せて座ることが出来た。
しかし、それによりもう逃げれる可能性はなくなってしまうのであった。
こうして授業が始まる直前まで左右から交互に囁かれ続けた陽子。
もうそこには今までの彼女はいなかった。
彼女の奥底にあった固く閉ざされていた扉が開くのであった。