8ー2
そもそもなぜ折った?
陽子の頭の中に、至極全うな疑問が浮かんだ。
「なんで折ったの?」
「……い、言いたくない。」
ぷいっ。
そっぽを向くあい。
それならば良い。
言いたくないのからこれ以上追求するべきではないだろう。
もったいぶられても、そこまで気にならない。
特に興味がなかった陽子はそれ以上聞こうとはしなかった。
「ほら、教えてあげなよー。ほらほらー。」
ニシシ。
二人に悪戯っぽい笑みを見せるまい。
あいの横腹をつんつんと小突いていた。
雨に濡れたくないあいはまいのその攻撃に耐えるしかなかった。
そして、その声に、彼女は更に困るのであった。
「え、えぇ……。」
あいではなく、まいが弄るのは珍しかった。
珍しいものを見たな。
そう思う陽子であった。
「うん、教えてよ。」
だからだろうか。
興味が湧いてしまった。
二人に詰められたあいの顔が真っ赤になる。
頬をかき、目が泳いでいる。
「……で、伝説の聖剣ごっこ……で、です……。」
ぼそぼそ。
伝説の聖剣?
なんだそりゃ。
「くっ、ふっ……ふふ……ふふふ……。」
顔を背けているまい。
彼女の肩が揺れている。
「伝説の聖剣って、傘が?」
「はい……。」
これ以上は聞かないでくれ。
そう言いたげなあいの返答であった。
なるほど。
これは楽しいかもしれない。
口角が上がる陽子。
「よく小学生の男の子がやってるやつ?」
追求を止めない。
「……はい。」
「……女子高生がそれをやっちゃったんだ。」
ニヤニヤ。
「う、うぅ……。」
楽しい。
「ま、まぁここまでにして……ほら、昨日のさ……。」
まいが割って入る。
流石にやり過ぎたか。
反省する陽子であった。
彼女らと同じ制服を着た生徒達がチラホラと見えてきた。
もう学校が近いのだろう。
そうこうしているうちに、校舎が見えてきた。
こうして彼女らの一日が始まるのであった。




