6ー4
まいの視線に気づくと、姫の黒髪を撫でたい会の会員達はすぐさま慌てて四方八方を見た。
彼女と決して目を合わせようとしないようにしていた。
目を合わせようものなら目から浄化され、天に召されてしまうと思っての行動であった。
「……なんか露骨に目逸らされたんだけど……。」
「……照れ隠しだよ、照れ隠し。」
「……凄い傷ついたんだけど……。」
「ま、まぁ気になさんな……。」
「……凄い傷ついたんだけど……!」
再度のまいの言葉。
なぜか声が強くなっている気がした。
「……はぁ、分かったよ。要求は?」
陽子は、諦めたようにため息をついた。
そんな彼女の顔をチラリと見ると、まいはニヤリと笑みを見せた。
まいは陽子を連れて近所のドラッグストアに来ていた。
まいが陽子へ言った要求は、買い物へ付き合えというものであったのだ。
その目的は、単純なものであった。
あいの見舞いへ持っていくものを買う為だ。
カゴを持つまい。
その中にはスポーツドリンクや額に貼るような冷却シートなどが入っていた。
「おやつも買わない?」
そわそわする陽子。
「……あー、まぁ、ゼリーとかなら……。」
まいは、はぁと短いため息をつく。
そのため息は、呆れや諦めのものではなく、確かに必要だな、と納得した為出たものであった。
その声を聞き、トトトトと走っていく陽子。
彼女はゼリーやグミが売っている売場ではなく、スナック菓子類が売っている売場へ向かうのであった。
「あ!これCMで見たやつだ!地獄の辛さ、激辛スパイスポテチ!ね、これは?これは駄目?」
そう言う陽子は、まいに対し、無邪気な笑顔を見せた。
「お前だけ地獄に落ちろ。」
陽子へ向けてそう言うまいは、真顔でいつもよりもトーンの低い声であった。
「ちょ、ごめんって!」
あいへの手土産を買い終えたまいは、そのまま店外へ出た。
ズイズイ歩くまいに対し、おろおろと後ろから着いていく陽子であった。