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「うん?なに?」
あいも、依然として携帯電話を見ている。
興味なさそうな声と顔。
その様子は、まるで自室でリラックスしているようであった。
パタン。
本にしおりを挟む。
そして、ずいっとあいを見つめる。
そんなまいの目は、心なしか、ハイライトが消えていた。
「なんで携帯電話弄ってるの?私といるのつまんないの?他の女の子とやりとりしてるの?浮気?そうなんでしょ?」
「お、なんだなんだー?ヤンデレごっこかー?」
未だ、まいの方を見ない。
にやにやとしているだけであった。
「うん。昨日初めてみアニメの真似。似てた?」
まいの目のハイライトが戻る。
普段の彼女だ。
「あー、多分似てたんじゃない?知らんけど。」
そう言うあいは、心底興味がなさそうだった。
「そう。」
本を開き、再び読み始める。
「……え?それだけ?」
ずこっ。
あいは、まいの言葉に、座っているにも関わらず、ずっこけそうになる。
「それだけ。」
それだけ、だそうだ。
「暇。」
再び携帯電話を弄っていただけのあい。
そして、読書に集中していたまい。
時計の針の音のみが教室に響く。
「私といるのに……。」
まいの目のハイライトが、再び消える。
「あー、もういい、もういい。」
面倒くさそうなあい。
「ごめん。」
「いいよ。」
まいは、許された。
「帰ろっか。」
あいが言う。
「そうだね。」
こうして、二人は帰宅の為の仕度を始めた。
二人は、幼馴染で、幼稚園の頃からずっと一緒だった。
クラスが違うことは何度かあったが、基本的にはまるでコンビのようにずっと一緒にいた。
それがあいには当たり前であり、まいにとっても同様であった。
「帰りにどっか寄ってく?」
「うーん……私は私の家に遊びに行く。あいはあいの家に遊びに行こう。」
「それ帰宅じゃん。」
これは、そんな二人のヤマなしオチなしな日常譚である。




