6ー3
完璧。
偶像。
高嶺の花。
それらのイメージがクラスメイト達の間で肥大化してしまった。
そして、それにより彼女らとまともにコミュニケーションをとろうとする者は少なかった。
その為、陽子はあいとまいにとって貴重な友人の一人であった。
「あいがお馬鹿さんだから私がしっかりしておかないとって思ってね……。まぁ、今日はあいがいないから気が抜けてるの。」
あいがお馬鹿でまいがしっかり者?
ドングリの背比べではないのだろうか?
そのような言葉が喉を通りかける。
しかし、陽子は何とか堪えることが出来た。
「それでそのお馬鹿さんはどうしたの?」
隣の席が空いている。
陽子はそこへ座り、まいへ質問した。
「風邪だよ、風邪。」
「へー、珍しいね。」
ポツリと呟くように陽子がまいへ言った。
「うん、お馬鹿なのにね。」
まいが、あははと呆れたように笑う。
「……言うの我慢してたのに……。」
苦笑いの陽子。
「それで、どうしたの?」
「いや、あいつらがあんたが元気ないの心配してたよって言おうと思って……。」
「……あいつら?」
「ほら、あそこでお茶会してる婦人達。」
親指をクイクイッと向ける。
それは、先ほど陽子が話していた彼女らの方を示してした。
「……へー?」
いまいち納得のいかない様子のまい。
無理もない。
彼女にとっては向こうにいる彼女らとの面識はあまりないのだ。
そんな者達に心配だと言われても疑問に思うだけだろう。
「ま、まぁそれに……。」
「……うん?」
「あんたが元気ないとその……わ、私もなんかあれだし……。」
「……あれ?」
「そう、あれ。」
あれとは?
疑問に思うまい。
そして、なんだか今日は謎が多い。
彼女はこうも思うのであった。
「あれなんだ……。」
「うん、あれ。そう、あれあれ。あれだよ。あれ。ほらあれ。」
もはやあれがゲシュタルト崩壊していた。
その為、まいは深く考えるのを止めた。
「まぁ、そっか。」
チラリと陽子が指した方を見る。