5ー3
「……キーボード見ずに文字打てるの?」
まいの素朴な疑問。
「打てないから楽しいんじゃん。何が出てくるか分かんないんだし……。」
ふん。
鼻息荒くあいが言う。
その顔はなぜだか自信満々であった。
「は、はぁ……。」
こいつは何を言っているのだ?
意味が分からないまいであった。
そして、それと同時に内心やや苛立つのであった。
こうしてあいの発案により、普段からキーボードを凝視し、両手の人差し指でしか文字を打てないほどの二人がタッチタイピングすることになるのであった。
「よーし、じゃあ画面だけ見るね。」
そう言い、あいは検索を始めた。
もちろんキーボードを触れているのは両手の人差し指のみである。
カタ……カタ……カタ……。
「いや、おっそ……。遅過ぎるでしょ……。」
脳内の言葉がノンフィルターでまいの口を通り出た。
「しょ、しょうがないでしょ!うちにパソコンないんだから……。うぅ……。」
しどろもどろで不慣れな言い訳をするあいであった。
あいの指から打たれる文字。
それは到底意味があるとは思えないようなものであった。
つまり、まともに文字を打てていないということである。
「き、気を改めて調べよう。」
その言葉を聞き、まいが画面を見る。
とてもまともなサイトが出てくるとは思えない。
ターン!
あいがエンターキーを勢い良く叩く。
「あ、出てきたね。」
ポツリと呟くまい。
「なんか良く分かんないのしかないね。」
あいの声。
海外のサイトだろうか。
アルファベットか並んでいる。
あいが分からないとなると、おそらく英語ではないのだろう。
「ど、どれ見る?」
「え?エンターキー押したいだけじゃなかったの?」
「えー、せっかくだし何か見ようよー。」
「……もう、一つだけね。」
まいも、気になっていなかったわけではない。
あいの言葉にそう言ってしまうのであった。
しかし、その言葉を後悔することになるのはすぐのことであった。