5ー1
ある日の昼休み。
「パソコンのエンターキーってあるじゃん?」
あいがそんな言葉を発する。
「あー、あるね。打ってる文字を決定とかするボタンだっけ?……っていうか早くご飯食べなよ。」
すでに昼食を済ませていたまい。
紙パックのジュースの成分表を見ていた。
「あれ強くターン!って叩くとなんか仕事出来る人っぽいよね。」
「あー、分かる。早くご飯食べなよ。お昼終わっちゃうよ?」
「私もあれしたいなーって思ってさー。」
「いや、あいの家パソコンないじゃん。」
「だからさ……。」
「お断りします。」
先手必勝。
あいが何か良からぬことを言い出す前にまいがそう言った。
チャイムが鳴る。
それは昼休みの終わりを知らせるものであった。
「あっ!お昼食べてなかった!」
あいのそんな言葉にため息が溢れるまいであった。
放課後。
「さ、帰ろう。」
あいが座っているまいへ向かっと言う。
「え?あ、うん。」
困惑するまい。
普段ならしつこいほど何度も言ってくるはずだ。
しかし今日はすぐに引き下がった。
それどころか何事もなかったかのようにしている。
何か企んでいる。
彼女と幼馴染であるまいの長年の勘がそう訴える。
二人で歩く通学路。
機嫌が良いのか、あいの口から鼻歌が聞こえる。
「あれ、あい今日うち来るの?」
「うん、駄目?」
「駄目ではないけど……。」
そう言い終え、まいはハッとした。
しまった。
あいの目的はこれだったんだ。
「……私の部屋のパソコン……。あー、そっか……。」
「……ふふ。」
ニヤリ。
まいのその呟きを聞き、その美貌には似合わない醜い笑みを浮かべた。
「あっはは!きったない笑いだなぁ。溝みたいだなぁ。」
大笑いするまい。
「き、汚くないわい!て言うか溝みたいってどんなだよ!?」
「もー、分かったよ。ほらうちに来な。」
まいの家へ向かう二人であった。




