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※この作品は、フィクションであり、記載されている物は実在する団体や個人等とは、一切関係ありません。
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2018年12月7日
あさまる
とある高校。
ある日の放課後。
そして、その空き教室の一つ。
そこに、二人の女子生徒がいた。
「そういえばさー、まい?」
携帯電話を弄る少女。
机をはさみ、向かい合って座っている少女へ話しかけた。
彼女の名前は、結月あい。
この高校に通う二年生だ。
父親譲りの輝く金色、そして母親譲りの美しく艶のある髪を靡かせている。
日本人離れした顔立ち。
彼女がハーフであることを物語っていた。
「……なに?」
対するのは、艶やかな黒髪の美しい少女。
こちらは、文庫本を読んでいる。
彼女の名前は、束原まい。
あいと同級生で、同じクラスの生徒だ。
家が近所と言うこともあり、幼稚園の頃から一緒にいる。
所謂幼馴染だ。
「それ面白い?」
「……これ?」
まいは、読んでいる本を軽く持ち上げる。
「そう、それ。その本。」
「全然。」
「……は?」
予想外の返答に、困惑するあい。
「全然。」
まいが、全く同じ返答をする。
この場合の、全然とは、つまらないという意味を示しているのだろう。
「な、なのに読んでるの?」
あいの純粋な疑問。
「うん。」
即答。
「……もしかしてだけどさ。」
「うん?」
「私といるのって、それ読んでるよりもつまんない?」
「全然。楽しいよ。」
「……なのに読んでるんだ。」
訳が分からないあいであった。
「こういう本読んでると……。」
すくっと立ちあがるまい。
「賢そうに見える。……そうでしょ?」
このように、続けて言った。
想像以上に間抜けなことを言うまい。
そんな彼女に、あいは何と言っていいのか分からなかった。
「いや、ちっとも。そんなこと聞いちゃうとむしろ馬鹿っぽい。」
「まじかぁ……。私馬鹿っぽいかぁ……。」
すっと座るまい。
そうは言いつつも、読書を止めない。
「まぁ、否定しない。」
「あ、そういえばさ……。」
依然目線は本の中の世界にあるまい。
落ち込んでいる様子はまるでない。さきほどのあいの言葉など、全く気にしていなかったのだ。