帰りたい鍵っ子【成人】
家に帰りたい
私は歩く
やっぱり歩く
家にいくまでに橋があるはずだ
でもいつもの場所に橋がないのだ
橋の向こうに見えるあのマンションはいつもは私の家のはずなのだが橋がないということは今は私の家ではないのだ
だから私は歩く
なおも歩く
私の家だ
ついたのだ
家に帰りたい
私の願望はかなったのだ
入れない
鍵を忘れたのだ
しかたなくほかの私の家に帰ることにする
私は歩く
また歩いている
自販機だ
のどが渇いた
でも買えない
本来の私の願望は家に帰りたい。はずだからだ
でも今の私はジュースを買いたい。のだ
だから買うことにする
買えない
お金を家に忘れたのだ
だから私は歩く
まだ歩いている
子供達だ
鍵っ子と呼ばれる子供たちだ
私を見ている
この子たちが首にぶら下げている鍵はもしかしたら私の家の鍵ではないのか
ぶん取った
子供達は何もいわない
私は走った
今も走っている
川に沿って走っている
転んだ
鍵が木にひっかかった
でもいいのだ
あれはあの鍵っ子たちの鍵なのだから
私の鍵ではないのだ
いいのだ
いつかの鍵っ子たちが木の下であの鍵を見ている
知ったことじゃない
私は悪くない
放っておくことにした
私は歩く
川に沿って歩くのだ
順調だ
まさに順調だ
息切れもない
まさに順調だ
私の家についた
開かない
鍵がないのだ
でもいいのだ
元から鍵なんてかかっていないのだからいいのだ
ちょっとした運動不足が気になっただけだったのだ
開いた
広い海だ
いつかの鍵っ子たちもいる
どうやら私を覚えていないらしい
いつかの鍵っ子たちは小さな船に揺られている
私も乗ってみることにする
なんて広い
私はこの広いどこかの海で異次元の力を手にした気がした
私は無敵だ不老不死だ人間ではないのだ
そんな言葉がすべて嘘には聞こえない素晴しい海で
私は家に帰ってきたのだ




