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プロローグ

この話は「ソリストデグローリア -憧れた世界が現実となったら-」の続きです

未読の方は先にソリストデグローリアを読むことをおすすめします


Side:???

「ねぇ、もしこの世界が本当にあったら素敵よね」

 白のケープをひるがえして少女は男に問いかける。

「私は素敵だと思うわ。私はあなたのおかげで外の、こんなに素晴らしい世界を知れたんだもの」

 そうだな、と答え男は微笑を口元に浮かべた。

 次はどこがいい。そう尋ねた男のそばには誰もいなかった。

 傍らに漂う微かな光に手が伸ばされ、そしてため息と共に力なくおろされた。



-----



Side:結城

 赤いローブを羽織った男はカツカツと靴音を立てて白い廊下を速足で歩く。

 男が通り過ぎるたび、施設内の人員は左手でつくった拳を右胸にあて軽く頭を下げるいう大旅団独特の敬礼を男にする。それに対し結城は左胸にあてた右手を指をそろえ開き頭の横に軽く上げる、という返礼をしていたがそれも最初のうちだけだった。

 あまりにも数が多いため途中から右手のひらを軽く上げるだけの略式返礼に切り替えるとさらに歩調を速める。その顔はだんだんと険しくなっていっていた。

 程なくして地球側の総司令室にノックの返答も待たずに入り、扉を閉めた途端結城は深々とため息をついた。

「お疲れのようですね、結城総司令。お疲れ様です」

 窓際に設けられた席でニコニコと笑いながら男はソファを掌で示した。男の母語は日本語ではないが、違和感なく自動翻訳されているため結城には日本語に聞こえている。

 すでにソファの前に設けられたテーブルには湯気をたてるお茶とお菓子が置かれていた。結城は手に持っていたファイルを男に渡すとソファに沈み込んだ。

 しばらくして姿勢を正しお茶を一気に飲み干した結城は男に向き直る。

「毎度毎度すまないな、エリック君。どうもメディアは苦手でね」

「ですから重要なもののみ出席していただいて、ほとんどの交渉、会見、訪問は地球側の総司令である私が大旅団総司令の代理として行ってますよね」

「その件は本当に感謝しているのだがね。……地球に着いてすぐ報道陣に囲まれるとは何事かね?」

 結城の言葉にエリックは先ほど受け取ったファイルを開いて肩をすくめる。

「ガライア、ですよ」

 ファイルの1枚目にはカチューシャ状のガライア本体とチョーカー型の畜エネルギー補助装置が写されている写真が挟み込んであった。


 汚灰はいによる汚染事件収束から約半年の時が過ぎていた。

 大旅団は表向きは新たに発見された惑星の調査と宇宙開拓の名目上、そしてその実績が認められ世界規模の組織として事件収束後も解散せずに機能している。

 コールドスリープは順次解凍され、今では人々は元の生活を取り戻していた。

 大旅団員も各々の生活へと戻っている人が大多数だが、希望した人員は今も大旅団員として組織に所属し活動している。

 ただし、完全に汚灰はい事件前と同じというわけではない。

 世間では大旅団出身者は『旅人トラベラー』と呼ばれ、さらにその中でも戦闘部員は元からの区分の呼称のまま『イスク』と呼ばれている。汚灰はいを止めたとして各国のニュースで大旅団が取り上げられたことも関係しているのだろう。

 世間からでなく国家レベルでも大旅団に対する関心はとても高かった。

 そんな中、大旅団は1つの機器を発表した。

 ガライアと呼ばれる機器はVR・AR・MR複合型のガジェットである。クレアレアの技術を大々的に使用した初の商品であり、同時に大旅団の技術力を発信するきっかけにもなった。

 開発者である結城が大旅団の総司令であるということも合わさり、これもしばらくニュースが絶えなかった。しかし、結城は惑星リドレイスの調査のため再び規模を縮小した大旅団艦隊と共に地球を離れていたためその対応はエリックがすべて行っていた。

 結城が一時的に帰還するという知らせを受けた記者たちが殺到するのも頷ける。

「……しかし、いいのかね。クレアレアについては、まあ、ほとんど本人たちに自覚がないとはいえ彼女たちがうまく制御してくれている。だが未だに理解できんことも多い。絶対安全とは言い難いのだよ?」

「それについては災厄もそうでしょう? まだ終わったわけではないのですよね?」

「それとこれとでは話が違うのだがね……。して、あの2人の様子はどうだね?」

 結城は施設の窓から遠くの空を見た。




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