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川の中に落ちた浩太と真夜の二人はまるで
恋人同士のように水中で見詰め合った。
だが、すぐに真夜は息が苦しくなり、
水面へと上がった。
浩太も真夜のあとを追いかけ、水面へと
顔を出した。
「おい! 大丈夫か?……」
二人のことが心配になり、琢也らが慌てて、
浩太と真夜のもとに駆け寄り、二人を岸へと
引っ張り上げた。
急にいなくなった真夜を探していた由貴は
川の方から水音がしたのに気付き、
慌てて、浩太らのもとに駆け寄ってきた。
やっと、岸に這い上がった浩太に
「あんた、何をしているの?……」
由貴は一瞬、びしょ濡れの真夜を見ると怒りながら、
浩太の背中を思い切り、叩いた。
「痛いなぁ~…… 何をすんだよ! 俺は被害者だぞ!」
浩太は由貴に叩かれた背中を押さえながら、
由貴に言い返した。
由貴は再び、びしょ濡れに濡れた真夜を一瞬、見ると
「嘘をおっしゃい! 大事なこの子までこんなに
濡らして……」
浩太に文句を言った。
「あの~……」
真夜は本当のことを言い出そうとしたが
「真夜ちゃん。ちょっと、待っていてね!
家に帰って、着替えを取ってくるから……」
由貴は真夜にそう言うと浩太を睨み付け、
自分の家である民宿へと慌てて、戻っていった。
由貴がいなくなったのを見て、真夜は慌てて、
「本当にごめんなさい!……」
不貞腐れている浩太に謝った。
浩太は不貞腐れたまま、
「琢也。すまないが薪を集めてきて
くれないか?…… 濡れた服を乾かしたいから……」
琢也に薪を集めてくるように頼んだ。
びしょ濡れの浩太を見ながら、
「おおぉ! いいぞ。ちょっと、待っていろ!……」
琢也はそう言うと仲間らと共に薪を集め始めた。