だぶさん

006 家でも酒を飲むのが大事

　ラーメンを食べ終わると、だぶさんは真っ直ぐ家に帰っていた。寮には入らずに家から通っている新人は彼ぐらいである。あまりにもオジサン感があるので球団側も寮生活を強制してはいなかった。プレーをしている最中もいぶし銀の光るヒットやバントを連発しているのでとても新人には思えない。まるで何年もプレーを重ねているベテラン選手を見ている錯覚に陥るらしい。首脳陣達は。

　そんなこんなでだぶさんは家の中で日本酒を飲みながらくつろいでいた。いくら外でビールを飲もうとも宅酒には決して敵わない。特に御新香を食べながら飲む日本酒は格別であると、だぶさんは思っていた。このように、だぶさんという名前は決してマスコミから与えられたものではない。そもそも田部永十郎《たぶえいじゅうろう》は見た目も中身もオジサンまっしぐらなのである。