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黒猫騒動記  作者: 肉屋鳴月
序章記
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第二話 黒猫

 私は黒猫。ただの黒猫。

 みんなからの嫌われ者。


 私が歩けば、虫けらを見るような目を私に向ける。

 私が鳴けば、恐ろしいものでも見るかのような顔を私に見せる。

 私と目が合えば、ふっと目を逸らす。


 この世に生きる人間は(みな)私のことを化け物と恐れ嫌っている。いや、嫌うという感情のほうが(まさ)っているだろう。私に対する態度で分かる。

『不幸を運ぶ黒猫』と言い始めたのは誰だったのだろうか。

『厄災』と言い始めたのは誰だったのだろうか。

『魔女の使い魔』と言い始めたのは誰だったのだろうか。


 不本意なあだ名ばかりが名付けられてきた。

 嫌厭(けんえん)さが滲み出る名ばかりを聞き続けてきたため、どれが本当の名なのか分からなくなっていた。

 もしかしたら、名などないのかもしれない。名無しの『黒猫』、なのかもしれない。

 名があったとしても呼んでくれる者などいない。しかし、探せば何処(どこ)かにいるだろうか。そうしたら、こんな虚しく空っぽな気持ちにならずにすむだろうか。

 しかし__夢のまた夢。

 これまで私をこの苦しみから救い、安らぎを与えてくれた者などいない。慈愛の神などいないのかもしれない。

 今更、誰かに大慈(だいじ)など期待したところでどうにもならないことを知っているため私は愚かな考えを振り払う。何かに(すが)ることは己の弱さの証。そして、弱さから目を背けている。


 孤独。


 黒猫と生を貰い受けたときから分かっていた。

 そして、とぼとぼと独りになれる場所を探し歩いていった。今はただ、一歩一歩()を進めるしかなかった。

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