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竜王国『日々。』


 そう思っていた事もありました。


 まず、少し時間はかかったけれど五階層は突破。

 翌月には六、七階層も突破できたらしい。

 六階層で現れたのは殺猿キラーエイプ。迷宮も変化をとげて樹々が立ち並び、その上からは殺猿キラーエイプが攻撃を繰り出し、虎人ワータイガーが地をかける。

 七階層はそれに追加してゴーレムがあらわれた。その大きく固い体を使って、虎人ワータイガーの盾や殺猿キラーエイプの避難場所に。ボスは宝石巨人ジュエルゴーレムだったけれど、これは簡単に倒された。宝石を気にせずぶっ壊したらしい。

 もったいない・・・。


 再び問題となったのは八階層から。まず。基本的に道で迷う事はなくなった。代わりに部屋が直線上に幾つかあり、いずれも一人一人が待ち構えている形だ。

 待ち構えていたのは偽人ドッペルゲンガー。以前僕が強者としてあげた人達の劣化板だ。順番はチビ姉ちゃんサフさん、シス、デン爺、師匠。

 それでも一対一のときは良かったらしい。ボス戦では全員。それも魔法使いである劣化チビ姉ちゃんも劣化デン爺並みの体術を使い、弓士であるサフさんは後衛から矢の雨を振らす。

 シスとデン爺は腕が何本も生えてそこから攻撃するし、師匠に至っては武器攻撃が通らないなぞの強化済み。

 九階層も五人。部屋が繋がっているのも一緒。ただし、部屋の大きさは巨大。そして居たのは竜。正確には偽竜ファントムドラゴンなのだけど、モデルとなったのは順番にトゥアル君、エルザ、ホーンさん、デン爺、リエールさんと僕が竜の姿を見た事あった人達。勿論最後には強化された五人まとめて。

 ちなみに劣化トゥアル君は弱かったらしく、それを聞いたトゥアル君が怒っていた。僕の所為じゃないのに・・。

 

 十階層は大きな一部屋だけで、そこに八階層と九階層のボスがまとめている。


 その報告を受けたのは二月の半ばを過ぎた頃だった。

 「なら新学期には間に合いそうですね。」

 「うむ。学園へはこちらが責任もって送ろう。」

 「そうですね。」

 デン爺の案にホーンさんが了承してくれたので、誰かが学園へと運んでくれるのだと思う。一ヶ月あれば学園へ戻る事も出来るとは思うけれど、運んでくれるのならばその方が早いし安全なので助かる。

 「それにその方がじっくりと準備を整えることができますし。」

 「準備ですか?」

 「はい。次のマスターになる者を連れて行かないといけませんし、崩壊時には周りに被害が出ない様にしなければいけません。」

 崩壊時に魔物が溢れるということを忘れていた。

 「万が一に備えて街を出ている人達にも声をかけるので、、実行は三月に入ってからになるでしょう。」

 「わかりました。」

 三月に出発したなら間に合わないかもしれないけれど、多少の遅れなら何とかなると思う。一応、何度も学園に連絡はしているし、先生達からも個別に手紙をもらっている。リエールさんも了承しているので、最悪融通を利かせてもらおう。 

 ホーンさんが帰った後には裏庭に出る。

 「セイッ」

 「ヤッ」

 裏庭では三人娘とトゥアル君が突きや蹴りを繰り出している。

 「あ、先生。」

 「続けなさい。」

 先生と呼ばれたのはデン爺。三人娘はデン爺に武術を教わっている。

 「ほら、休まない。」

 「はい。」

 デン爺が見ていないときはトゥアル君が三人の指導係となっているのだけど、さすがにもう慣れた様だ。指示を出す姿も堂に入っている。初めは妹弟子が出来たと張り切りすぎてデン爺に怒られていたっけ・・・。

 ドウは少し離れた所で素振りをしている。デン爺に教わったりもしているけれど、それ以上に他の竜族に武器の使い方を教わっているので弟子と言う訳ではない。

 それでもこちらの姿を認めると素振りを止めて一礼を忘れない。

 「ふむ。少し立ち会おうか。」

 デン爺がドウと立ち会うと聞いても他の人は動きを止めない。これも何度も繰り返されている光景なので、慣れたのだろう。

 「グッ。」

 「ここまでだな。」

 これも何度も繰り返されている光景。

 「ありがとうございました。」

 息も絶え絶えにドウがデン爺に御礼を言う。

 「うむ。次はトゥアル。」

 「はい。」

 こうして順番にデン爺が立ち会って行く。勿論それぞれに手加減をしながらだ。

 ただし僕の番は回って来ない。

 また楽しくなって怪我をさせない様に、と言う事らしい。立ち会いたいなら怪我を覚悟するか、もうちょっと実力を上げないと駄目と言われたのだけど、デン爺が手加減を上手くできる様になる方が早い気がする。

 その後、イリアまで立ち会いが終わると、地面に座り込んだ皆にダンジョン攻略の目星がついた事を伝え、三月には学園に向かう事も一緒に伝える。

 翌日はダンジョンへ向かう。

 今回は、僕とノサキ、シオ。もう一チームがドウ、トゥアル君、イリア。丁度三人ずつに分かれたけど、たまたまで毎回籤で決めているので、六人一緒のときも一人だけの時もある。これもデン爺の指示の一つだけど、これのおかげでトゥアル君とも随分と仲良く慣れたと思う。

 「こっちの方が稼いで来るからな!」

 そんな事を言っているけど、戦闘は協力してくれるし、指示にも従ってくれる。嫌われては居ないよね?



 「くそっ。」

 換金後、トゥアル君が肩を落としている。

 「岩蟹ロックラブの希少種が出たから買ったと思ったのに・・。」

 岩蟹ロックラブは言うなれば岩を纏った蟹だけど、希少種と言う事は大型の魔石か宝石を得たのかもしれない。

 「そろそろ諦めたらどうですか?」

 「空間収納を使えるトラ様には勝てないと思いますよ?」

 「それに六人で分けるのだから良いではありませんか。」

 三人娘に慰め?られるトゥアル君。

 確かに空間収納が使える僕は、高価な所だけでなく多少安くなる部位も持って帰ることができるので、同じ量を倒した場合には僕の方の換金率が良いという事になる。

 「山分けだから施しをされる様で嫌なんだ。」

 「兄弟子というか、格が違うのだから諦めた方が早いですわよ。」

 「ぐっ。」

 今までも何度か繰り替えさえてきた光景だけど、最近のツッコミはキツくなった気がする。

 「まぁ、いつまでもここに居ても仕方がありませんし、師匠のお家に帰りましょう。」

 「そうだな。悔しかったら鍛錬あるのみだ。」

 「はい・・・。」

 皆でデン爺の家に向かう。最近はトゥアル君も一緒にお世話になっている。

 それにしても、トゥアル君。ドウには素直なんだよね・・・・。


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