表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/64

獣王国『お礼』

 「でしたら馬などはいかがでしょう?」

 「それいいわ!」

 サツキさんの提案をライラさんが褒めている。

 どうやらお礼を考えてくれたのはライラさんではなくサツキさんみたいだ。

 「獣王国の馬はあまり有名ではないですが、頑丈です。」

 「頑丈?良質とかではなくて?」

 大体の馬は早いとか強いとか言う言葉を使って評価している気がするのだけど・・。

 「はい。多くの騎士が求めるのは早さや強さですが、我が国の馬は頑丈です。馬車を引く商人なんかには結構人気があるのですよ。それに足が遅い訳ではないので。」

 「では明後日までに用意しておいてね。馬車込みで。」

 「わかりました。」

 ライラさんとサツキさんの会話だけど、どうしてこういう話しになったのか。

 話しは遡る。


 チビ姉ちゃんの下着を交換し、さらに何着か購入して戻るとメイドさんに会食の時間を知らされた。これが大体五時間前。


 特に出かける予定もなかったのでチビ姉ちゃんの魔法研究を眺めながら魔力制御の鍛錬をして四時間。時間になったのでチビ姉ちゃんと一緒に指定された部屋へと向かう。途中メイドさんが案内に付いてくれたので迷う事もない。

 そして部屋に入ったのが一時間程前。


 会食はライラさんがやって来て今回のお礼を改めて言う所から始まった。

 メンバーは僕、チビ姉ちゃん、ライラさん、サツキさん、それと研究者だと言っていたカニアさん。

  会食のメンバーに三人娘とドウが居なかったのは別に良い。イリアとノサキはライラさんの従業員なのだから一緒のテーブルには付かない物なのかもしれないし、シオとドウも自分の国の王と食事をするのは気を使うし楽しく無いだろう。

 カニアさんもサツキさんと同じくライラさんの昔からの付き合いで、今は魔法学研究所の主任研究間なのだとか。カニアさんによると、研究所は大きく分けて戦闘魔法部門とそれ以外に別れるらしく、それぞれを副所長が監督している。そのそれ以外の方の一チームの代表がカニアさん。研究内容は魔法を使った物の移送。最終目標は転移魔法の魔導具化らしい。

 本来はこの時間にライラさんと話し合いが行われるはずだったのだけど、僕達の会食でなくなったのでライラさんに頼み込んで会食に参加したみたい。その目的は明確で魔王たるチビ姉ちゃんに色々と質問をしている。

 「ほら、それくらいにしておきなさい。今回はトラくんへのお話しがあってこうした場を儲けたのだから。」

 「そうです。邪魔をするつもりなら席を外してもらいますよ。」

 「あ、ごめんなさい。こうしてお話しさせてもらう事が嬉しくて・・・。」

 どうもカニアさんは二人の妹分的な存在らしい。年も少し離れているし、どんな関係だったのだろう。

 「僕は気にしていませんけど、お話とは昨日言っていたお願いというやつでしょうか?」

 「ええ。覚えてくれていたのは良かったわ。それでそのお願いなのだけど、ドウ達を学園まで連れて行ってあげてくれない?」

 「キクノ学園へですか?」

 別に構わないけれど、ドウが居れば道中困らずに行くことは出来るだろう。それに僕はこの後、竜王国へ向かうつもりなので遠回りになる。

 「そう。キクノ学園へ連れて行って欲しいの。」

 「ドウは新年度から新たに授業を取り直しますし、シオは新年度からの新入生となります。イリアとノサキも入学を希望しているので入学する事になるでしょう。」

 「この後竜王国に行くつもりなのですが?」

 「勿論覚えているわ。一緒に連れて行ってあげて欲しいの。」

 「後から僕の仲間も来るのに先んじて連れて行く理由を教えてくれますか?」

 学園に行くだけならドウだけでも出来るし、誰かと一緒が良いのなら後から来るエルザ達と一緒に向かえば良い。時間を気にしないのならなおさらだ。

 「端的に言いますと、これから面倒な人達が城に来るので避難しておいてもらおうという事です。」

 サツキさんがライラさんに代わって答えてくれた。

 「改革がらみですか?」

 「そうです。」

 おそらくライラさんやドウに取って面倒な人達がここに来るのだろう。

 「わかりました。ただ向こうで彼等が暇になっても知りませんよ?」

 「それは本人達にも行って聞かせておきますから。」

 こうしてドウ達が同行する事になったのだけど、そこで出たのが移動手段に付いて。三人娘が居るなら馬車があった方が良いという事になり、さらにそこから馬の話しへ。ついでに僕へのお礼としてそれをそのままくれると言う。

 必要なくなったら処分しても構わないと言ってくれたので、学園まで戻ったら売ってしまうのも一つの手だろう。

 その後も会食は進み、部屋を変えて軽いツマミとお酒がメインに。

 ライラさんは、少しお酒が入ってからは世間話から愚痴へ。愚痴の内容は今回のハスキールの件や他の貴族に対する文句、三人揃って結婚できていない事等幅広い。元々お酒には弱いらしく普段は飲まないのだとサツキさんがこっそり教えてくれた。

 そうして、ただの雑談の会へと変わった会食はカニアさんが船をこぎ始めるまで続き、終わった頃には夜も大分深まっていた。

 

 ちなみにチビ姉ちゃんとサツキさんはザルみたい・・・。



 翌日は特にやる事もない。用意は全てしてくれると言うし、チビ姉ちゃんはカニアさんが二日酔いを押して質問しに来ているのでその相手を。ドウや三人娘はなにやら準備があるらしい。 

 と、言うわけで明日からに備えて惰眠をむさぼる事にした。

 竜王国に入って暫くは街が無いので、ベッドでゆっくりと寝る事は出来なくなるし、お風呂も入れないだろう。なのでご飯、お風呂、ベッドのローテーションで過ごす事にした。

 一日なにもなく、夜になってベッドにチビ姉ちゃんが来たのが変化と言えるくらいだろう。


 用意してくれた馬車は思って居たよりも立派な物だった。屋根のある馬車で、それも幌ではなく箱馬車。その為少し重たくなるので馬は二頭引き。何かあったときは一頭でも引けるらしい。装飾はほどほど、これは豪華すぎると盗賊なんかに狙われやすいから。内装には寝床にもなるソファーだけでなく、魔導ランプや集水器といった物まである。

 集水器とは魔導ランプと同じ様に魔石を燃料とする魔導具で、効果は水を生み出すと言うもの。これは空気中の水分を集めるもので、水系の魔法と同じ原理らしい。その為乾燥地域では効果が薄い。さらに出回っている数も多く無い上、必要とする魔石が高い為に中々お目にかかる事は出来ない。

 他にも空気の入れ替え機能や砂塵に対する防御機能など色々付いている。

 外装に比べて大分高価な馬車だけど、それもそのはず。王が出かける際に使用する物と略同じ物で違いは獣王家の紋が付いているかどうかだけ。二つある予備のうちの一つをくれたと馬車の説明をしてくれるサツキさんから聞いた。


 そんな話しを聞いたら処分するとかできませんよ・・・・。

 

 さらに食料や通行証なども用意してくれていたので僕達は馬車に乗って出るだけ。見送りにはライラさんも来てくれた。

 御者はドウも出来るらしいし、三人娘も覚える気がある様なので、旅の途中で交代しながら教えてあげるつもりだ。

 獣王国を出るのはスムーズに行った。獣王家の通行証は勿論、国境まで兵士の送迎がついた事も大きかったのだと思う。どの町の門も待たされる事も無く素通り、さらに開門時間すら無視。これは貴族でも許可されない王直属近衛兵の特権らしい。

 獣王国の国境を出ると新しい道が左右に続いている。これは開拓地へと続く道で幾人かの商人なんかがそちらへ向かって行く。

 一方僕達が向かう道の同行者は馬車が三台。徒歩は無し。彼等はいずれも商人で、僕達と同じく竜王都まで行くらしい。同じ方向へ行く人が居る場合は協力するのが当然だけど、商人達は合わせて三パーティーの冒険者を雇っているうえに、僕達の半分以上は女の子ということもあって見張りとかはしてくれるらしい。

 一応僕とドウが見張りをするつもりだったけれど、商人達だけでなく冒険者の皆さんにもしなくて良いと言われてしまった。

 感謝しつつも、ドウと相談して一応の警戒は怠らないでおくつもりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ