獣王国『入国』
短いのに連続でごめんなさい・・。
ウィゴード国と獣王国の国境は厳しいかと思っていたけれど、そうでもなかった。出国も入国も身分証代わりの学生証を提示すれば済んだし、入国の目的も「夏休み中の旅行」と言えば大丈夫だった。
学園の生徒というのが効いたのか、僕が人族なので緩いのか。
まぁ後者だろう。
国境からいける街は北東西の三つ。
北は首都方面らしいので、他の皆に見付からない様に東西のどちらかに移動してから北に移動しようと思う。
「さて、どちらにしようか。」
僕の様に悩んでいる人は無く、皆三方向のどれかに移動をしている。特に北が多い。
「これで決めるか。」
腰の刀を鞘ごと抜いて地面に立てる。
倒れた方向に進もう。
「どうした?」
刀を倒す前に検問所に勤めているであろう兵士に声をかけられた。
「東と西どっちに行こうかこれで決めようと思いまして。」
他の人達が立ち去る中、留まっていたので目立ったかな?
「はは。気の向くままの旅か。首都は行かんのか?」
「ちょっと会いたく無い人が居るといいますか・・。今回は止めておこうかなと。」
「はーん。彼女と喧嘩でもしたか?まぁ細かい事は効かんが東西どちらかなら西は止めとけ。西でこれから騒ぎがあるからな。東はもう落ち着いたと思うから大丈夫だと思うが一応気を付けて行け。」
「騒ぎですか?」
不安定な国なのだろうか?
「聞いていないか?戦争を企てた馬鹿な一族が居たんだよ。命だけは助けてもらったのだが、領地は北に変わった上に監督が付く。それに、慣れない開墾の日々になるらしい。それで東から順に移動中という訳だ。」
「あー。」
ハスキールの件か。
「やっぱり知っていたか・・・。学園で獣王国の評判はたっているか?」
苦い顔で尋ねて来た。
どうも色々と話してくれると思ったらそれが気になっていたようだ。
「大丈夫だと思いますよ。騒ぎを起こした奴が居たとはさすがに知ってはいるでしょうけど、その目的までは基本的に知らされていないはずですから。僕が知っていたのはたまたま知り合いがそれに関係して行動していただけですし。」
学園でも公にはしない事にしているけど、騒ぎを企てた獣人をデン爺達が取り押さえたという事にはなっている。
獣王国ではそう言うわけにはいかずに、皆に知らせた上で罰を与えたのだろう。
「そうか。戦争を望んだのは奴らであって我々はもう戦争などしたく無いと思っているのだよ。」
「そうですよね。」
国境の緊張感が高まっていないのも、その考えが浸透している証の一つだと思う。
「ま、ありのままの獣王国を見て学園に知らせてくれ。時間を取らせたな。」
「いえ、教えて下さってありがとうございます。東に行ってみようと思います。」
「そうか。良い旅を。」
「では。」
兵士と別れて右の道を行く。
話しによれば半日もかからずに着くはずだ。
少し急いだおかげで夕方薄暗くなる前に付く事が出来た。街の様子は少し暗いようだけど領主が変わるのだから不安なのかな?
目についた宿に入り様子を聞く。やはり領主の変更とそれらが牛耳っていた商売に影響が出ているらしい。それに次に来る領主の一族がまだ発表されていない為に不安が漂っているそうだ。
僕が次に向かう街はこの街を含むいくつかの街の中心らしく、さらに混乱しているだろうということだ。
それでもその混乱に乗じて商人達は幾人もやって来ていると聞いて、商人の逞しさを知る。
宿の値段も料理も昨夜の方が良かった。ロクサーヌさんの料理には言うも及ばず。
夜、寝る前にチビ姉ちゃんに領主の交代や街の混乱について知らせておいた所、既に知っていた。というか予想してライラさんと情報のやり取りはしてあったのだとか。
それよりも昨夜連絡しなかった事を起こられた。初日くらい連絡しなくても良いかな?と思ったけれど駄目だったらしい。
朝早いうちに宿を出る。朝と昼のお弁当は昨夜既に頼んであったので出際に受け取り食べながら歩く。
次の街も混乱している様だし、恐らくその次もそうだろう。違う一族が治めている地まで一気に移動するつもりなので最初から身体強化も使っておく。
街道は基本的に樹々に囲まれている。緑の種類も多く、時折動物の気配もする。
良い森だと思う。




