ウィゴード国『お出かけ。』
エミリアは約束通りに馬車を用意してくれた。三台も。
二台になったのは想定外の人が付いて来たからだ。
想定外の人とは、国王カイゼル・ウィゴードと王子サキス・ウィゴードの二人。それに付随して護衛の騎士やメイドさん総勢40名である。
ほとんどの騎士は馬に乗っているので、三台の馬車は前から順に僕、エルザ、セシリア、ロクサーヌさんが乗る馬車。次にカイゼルさん・エミリア・サキス君の乗る馬車。最後にメイドさんと少しの荷物が乗っている馬車となる。
「御免なさい。サキスが付いて来ると言ったらお父様も・・・。」
「王子と初めての御視察をなされると申されますので諦めました・・。」
エミリアが謝るその言葉とウェルキンさんの言葉で大体察した。
おそらく書類仕事に嫌気がさしたカイゼルさんがエミリアとサキス君について視察をするという名目でウェルキンさんから逃れ、公式な視察となったので護衛やメイドさんが付いて来る事になったのだろう。
「なるべく早くお帰り下さいませ。」
ウェルキンさんのその言葉に見送られて城を後にした。
さすがに国王の馬車を遮る物はなく、行程は順調である。
ただし一つ問題がある。
「国王様こちらの・・・。」
「王子様に置かれましては・・。」
「本日のご予定は・・・・。」
「代官より館に逗留を・・・・・・。」
「姫様に面会の希望・・。」
王族との移動がこれほど面倒だとは思っていなかった。
何所に行っても歓迎されるのは良いのだけれど、観光ではなく、まさしく視察。若しくは政務と言い換えても良いかもしれない。
街を歩いて買い食いをする事もできなければ、ちょっと気になったお店に寄り道する事もできない。
エミリアは慣れた物らしい。カイゼルさんは言わずもがな。サキス君もなんとかこなしている。エルザはああ見えてもお嬢様らしいのでそつなく対応しているし、セシリアさんは他の騎士に混ざって馬に乗ってみたりと楽しんでいる様だ。ロクサーヌさんはメイドさんと料理の情報交換をし、時に振る舞ってくれる。また、毎日豪華な食事がとれるのは王族御一行様なのだろう。
決して悪い事ばかりではないけれど、一般庶民である僕にはどうも窮屈だ。それでも一週間をかけて二つの街を巡ると今回の視察は終わりである。
今回と次はいつもより短めです。




