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森の中にて。

 このエゴ大陸は大小の国が散らばっている。

 しかし大きな戦はここ数百年なく、平和だと思う。

 それでも盗賊等に身を落とす者もいて、戦いが無い訳ではない。

 だからこそ騎士団や傭兵団が存在し、大きくない商人は冒険者を護衛に雇う。



 日が暮れて来た。

 「キクノまで後一日って所だ。少し行けば水場があるからそこでキャンプを張る。」

 「了解。」

 直に火を起こせる様、枯れ枝を拾いながら男達の後に付いて行く。

 男達について約二週間。役割分担も慣れたものだ。三つ前の街でキクノに行く商人が護衛を募集していたのはラッキーだった。

 僕も当初は護衛として応募したのだけれども、実力が足りないとされ断られた。

 自分は冒険者らしくもないし、人族だ。それに体格も他の人の様にムキムキでも無いので、しょうがない。

 一人で行こうと覚悟を決めていた時に雇われた冒険者から声をかけられた。

 雑用をすることで一行に加えてもらえるらしい。給料こそでないが、それでも食事や寝泊まりは他の冒険者と同じなのは良いのだろう・・。

 (まぁ客扱いでもなく護衛でもなくといったところなのかな。)

 そんな事を考えつつ一行に追いつくと、不意に高い笛の音がした。護衛のリーダーである狼の獣人が立ち止まり手をあげる。続く馬車も止まり、護衛は各々の武器を手にした。

 自分も腰に佩いた刀に手を置き聴覚に集中する。

 「どうした?」

 馬車から商人が顔を出す。

 「警戒笛です。」

 警戒笛は街道を行く人が周りに危険を知らせる為に吹く物だ。護衛の獣人達も聞いているので聞き間違いは無い。

 「それに血の匂いがします。」

 先頭に居た犬の獣人が情報を追加する。

 「獣か。」

 「左前方。金属音がする。」

 自分で得た情報を知らせると皆がこちらを向く。

 「本当か。」

 リーダーが耳を澄ませて確認する。獣人の聴覚でようやく気付く事を人間の僕が気付いたのがにわかに信じられないのはわかる。

 「風下で気付くのが遅れました。こちらにも向かって来ています。」

 「ちっ。盗賊の情報なんて聞いてないぞ。人数は?」

 「わかりません。複数です。」

 嗅ぎ分けられないのは人数が多いせいか、血が籠っているのか。

 「逃げるぞ。」

 言うや否や、商人がいきなり馬に鞭を入れる。

 「くそっ。」

 走り出した馬車を目に追いリーダーが吐き捨てる。

 「追える者だけが行く。」

 その顔からは苦渋が見える。走り出した馬車に追いつき並走できる者。つまり獣人達だけだろう。

 「なに、殿も必要です。」

 「すまん。」

 言うや、三人が馬車の後を追いかけて行く。

 残ったのは僕を含めて人間三人。

 「お前達は若い。馬車と反対側に逃げてみろ。助かるかもしれん。」

 殿をすると答えたおっさんが言う。確かゴルラという名前だったはずだ。雑用として声をかけてくれたのもこのおっさんだった。

 「俺も若い頃それで助かった。」

 二人で顔を見合わせる。

 「すいません。」

 もう一人が答えるとゴルラが首から下げたタグを渡す。

 「生き残れたら家族に頼む。」

 冒険者の証だ。家族に渡せば金は降ろせるし、死んだ証拠にもなる。

 「はい。」

 男は受け取って反対に走って行く。

 「お前は良いのか?」

 逃げない僕に聞いて来る。

 「おそらく勝てないぞ。」

 「まぁ家族も居ませんし。やってみないとわかりませんから。」

 「そうか。」

 それ以上ゴルラは何も言わない。

 「撃って出ようと思います。」

 「わかった。」

 ゴルラの了解を取って森へと走っていく。付いて来てくれるらしく剣を抜きゴルラも続いて来た。

 強化魔法を巡らした足で土を踏みしめる。一気に加速するとゴルラは付いて来られないらしくその姿が離れる。

 敵に近づくにつれ正確に人数がわかった。こちらに向かって来るのは五人。気付かれる前に地面を蹴り飛ぶ。続いて木の幹を蹴り、更に枝を蹴り枝のしなりを利用して勢いを更に増すと、勢いそのまま落下し、斧を持った腕を切り落とし一人。

 「なっ。」

 右に居た男の足首を斬り二人。さらに奥にいた一人の手首を切り落とし三人。

 そこでようやく他の二人が武器を手にする。手前が剣、奥が弓。手前の剣士が振りかぶった時にはその胸に蹴りが刺さる。

 「ふんっ。」

 肺を圧迫されて呼吸が出来ない剣士の獣人。そのまま体ごと押しこむ。そうすれば相手の大きな体に隠れて敵の矢から体が隠せる。

 「くそっ。」

 弓手がサイドステップを踏んだ所で、盾にしていた剣士の体をさらに踏む様に蹴り付ける。尻餅をつく剣士は放っておいて弓を狙う。狙うは弓手本人ではなく弓。片手切りに弓を切り落とし、返す刀で相手の手に刃を落とす。

 「ぐぅ。」

 指が数本飛び、弓手が手を押さえて膝をついた。そこでようやく付いて来たゴルラが顔を出した。

 「お前一人で・・・・。」

 その言葉には答えず更に立ち上がろうとした剣士の首に打ち込む。剣士は峰打ちを受けて再び地面に座り込んだ。

 「この男達は任せます。」

 手首を押さえてうずくまる男を血振るいした刀で示し、刀を納めると敵の剣を拾い再び走る。更に先に居る八人が次なる敵だ。


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