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静寂の寓話シリーズ  作者: 瀬戸 陽子


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5. 静寂の寓話:村の記録

古い記録に残された、かつて村で起きた“影との対峙”。

村人たちは火と声で影を追い払ったが、

その夜、影は“別のもの”を見ていた。

記録の最後に残された一文が、村の未来を暗示する。

1.朽ちた本

村には、古い木箱にしまわれた記録がある。

今では誰も開けようとしない、黄ばんだ紙束だ。

誰も手に取ることもせず、

所々破け、朽ちている。


そこには、村がまだ若かった頃の出来事が書かれていた。


とても古い記録だ。



2.ある夜の出来事

ある夜、羊が突然鳴き叫んだ。

家畜小屋の扉が激しく揺れ、木が軋む音が響いた。


最初に気づいたのは、外で水を汲んでいた娘だった。

暗闇の中で、低くうなる影が小屋の周りを回っていた。


娘は叫び、村人たちが家から飛び出す。


3.影との対峙

松明を掲げた男たちが駆けつけると、

その影は一瞬だけ動きを止めた。


火の光に目を細め、低く唸りながら後ずさる。


村人たちは恐怖で震えながらも、

鍬や棒を手にしてその影を囲んだ。


影は火を嫌い、

人の叫び声に驚き、

やがて森へ逃げ帰った。



それから数夜、その影は試すように現れた


翌晩、別の家畜小屋の扉が引っかかれた。


その次の夜には、村の外れで低い遠吠えが響いた。


村人たちは交代で見張りを立て、

火を絶やさず、夜通し警戒した。


影は近づくたびに、火に、人の声に怯えている。


猟師が影に向かって弾を放つ。

……ターン……


一つの影は倒れ、そして消えた。


残った影は、その空間の方を見て、

怯えたように周囲を見渡している。


そこいた、何か、を探すように。



一回り大きな影が吠えた。

今までに聞いた事も無いほどの大きな咆哮。


その直後、影たちはいっぺんに森へ向かった。


しかし、大きな影はだけは

何度も振り返っていた。


その目は、怯えとは違う、何か不気味な知性があるように。



その次の夜、何も起こらなかった。

その次の日も、さらにその次の日も。


村人たちは言った。


「追い払ったんだ」

「もう来ないだろう」

「ここは安全な場所だ」


その言葉は、

やがて“村の誇り”になった。



ただ、影たちが来なくなったことだけを喜んだのだ。



そして、その事実は数年も経つうちに、誰も口にしなくなった。


やがて見張り台は朽ち果て、誰も立たない。


火を持って夜を歩く者もいなくなった。



しかし、記録の最後には、こう記されていた。


――“あの影は、逃げながらもこちらを見ていた。

  火と叫び声を、じっと見ていた。

  鉄砲を理解しようとしていた。


  あれは恐れていたのではない。

  学んでいたのだ”――




次話:6.静寂の寓話:起源(Ep.0)

2026/2/25 20:00に更新します

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