3. 静寂の寓話:旅人の章
旅人が地図を頼りに村へ向かうが、そこには家の跡しか残っていなかった。
森の奥から響く声と、地図の“変化”に気づいた旅人は、
何が起きたのかを確かめようとするが――。
地図には、確かに村の名前が書かれていた。
だが、辿り着いた場所には、家の跡しか残っていなかった。
焼けたわけでも、壊されたわけでもない。
ただ、そこに“あったはずのもの”が、静かに消えているだけだった。
風が吹くたび、森の奥から低い声が響く。
遠吠えとも、うめき声ともつかない音。
背筋が冷たくなる。
「……ここで、何があった?」
そうつぶやいた瞬間、地図の端がふっと揺れた気がした。
見直すと、村があったはずの場所が森に覆われている。
闇の奥で、いくつもの光が揺れたように見えた。
ただひたすら走った。
森から遠ざかるように。
背中に視線が貼りついている気配を感じながら。
息も絶え絶えの中、何とか別の村にたどり着いた。
旅人は、なぜ自分が襲われなかったのか、など考える余裕など無かった。
大声で村人に叫んだ。
息が荒くて、言葉が途切れそうだった。
誰も立ち止まらず、耳を向けない。
それどころか嘲笑うような視線が向けられる。
ただ、背後で続く低い遠吠えだけが、妙に規則的だった。
その声が、彼を追ってきた理由にも気づかないまま。
次話:4.静寂の寓話:影の章
2026/2/20 20:00に更新します




