梁の光
梁は、
揺れを止めない。
揺れを否定しない。
ただ、
揺れの中で倒れないための
かすかな強度をつくる。
その強度は、
英雄の力ではなく、
制度の硬さでもなく、
名もなき誰かの、
名もなき選択の積み重ねから生まれる。
光は、
叫ばない。
輝きを誇らない。
誰かを押しのけない。
誰かを裁かない。
ただ、
胸の奥で灯り、
次の誰かへ渡される。
梁の光とは、
その二つが交わる場所だ。
揺れを抱えた手が、
もう一つの揺れた手に触れ、
光を渡す。
その光が、
梁となり、
水平に広がり、
文明の見えない骨格をつくる。
文明は、
塔ではなく、
この水平の梁の連鎖によって
支えられてきた。
そしてこれからも、
そうであり続ける。




