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なろうラジオ大賞7(1000文字以下の短編)

猫の雨宿り

作者: 葉山麻代
掲載日:2025/12/20

「このバスタオル貰っても良いか?」

「え?どれー?」

「この、シミのあるやつ」

「良いけど、切って雑巾にしようと思っていたのよ。もっと綺麗なの出すわよ?」

「いや、これで良い」


 先ほど外から帰ってきた私は、朝の天気予報をしっかり聞いていたので傘をちゃんと持っていた。しかし、傘で防ぎきれないほどの降水量で、ずぶ濡れになりながら玄関のドアを開けると、足元を何かが横切った。


「うわ! なんだ?」


 キョロキョロしてみると、玄関のすみにずぶ濡れの猫がすまなそうに小さくなっていた。


 私は猫を刺激しないようにそっと離れ、テーブルに積まれていた古着の中からバスタオルを見つけ、妻に声をかけたのだった。



 誰かがこぼしたらしいココアだかコーヒーだかのシミが取れないバスタオル。それを広げ、少し丸く形作り、震える猫のそばにそっと置いてきた。

 猫はじっとこちらを見ていたが、私が少し離れた場所から「それ使って良いよ」と声をかけると、人の言葉がわかるのか、そっとタオルの上に丸まった。


 ふと人の気配に振り返ると、妻がニヤニヤしてこちらを見ていた。


「優しいじゃん」

「ずぶ濡れは辛いだろう?」

「そうね」


 そんな妻は、もう一枚タオルを持っていき、猫の上にもかけてきていた。


 猫は眠ってしまったのか、ほんの少しタオルが動いて見えるが、じっと動かなかった。


「飼ってあげられれば良いんだけど、難しいね」

「うちって魚しかいないからね」


 妻と話し合い、飼えないからエサは与えないことにした。


「そういえば、玄関の戸は開けておくの?」

「開けておいたら寒いだろう?」

「じゃあ、猫さんは、どうやって帰るの?」

「起きて鳴き出したら戸を開ければ良いんじゃないか?」

「そうね。そうしましょう」


 数時間たって、息子が帰ってきた。


「ただいまー。なんか玄関に猫がいて、俺と入れ替わりに出ていったけど、あれなに?」

「おかえり。猫、驚いて出ていったの?」

「いや、俺を見てからゆっくり出ていった」

「昼間どしゃ降りだったから、雨宿りに来たみたいよ」

「へえー」

「お父さんが、バスタオルを献上してたのよ」

「それで玄関にバスタオルが丸まって落ちてたのか!」


 息子が妻と話してるのが聞こえた。


「おかえり。雨やんだのか?」

「ただいま。もう降ってないよ」

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