同士の咆哮
朝10:00時、夜22:00時の二話ごとの投稿を予定しております。
恐らく二週間も経たないうちに第一章の全てを投稿し終わります。
(マグナレア)
「いやぁー、だから私は神様で貴方も神様なの...
ここまではオーケー?」
(永道)
「オーケー?じゃねぇだろ!!
もっと詳しく教えてくれよっ!!」
(マグナレア)
「ほんっとに飲み込み悪いわね~
まあいいわ。
とりあえずこの世界について軽く話すわね」
その後、俺は彼女から多くのことを教えてもらった。
この世界は、人知を超えた神の領域。
数多の神々が存在し、そして俺たちもまた、神である。
俺たちがなぜこの世界に来てしまったのか。
どうすれば元の世界へ戻れるのか。
その理由も手段も、今のところはわかっていない。
そして今の俺自身についてだ。
俺たちは「神の身体」に乗り移ることで、この世界に存在している。
その結果、常識では考えられない力を手に入れてしまった。
だが、俺が乗り移った瞬間、マグナレアはそれ以前にこの神が誰で、どのような関わりを持っていたのか...その「記憶」を完全に失ってしまったのだ。
なのに、どうしてか俺を「主」として認識してしまっている。
さらにこの変化は、マグナレアにだけ限定されることではなく、この神を知る全ての者に同じ変化が起きているのだ。
マグナレアが言うには、「私のときは、乗り移った後の皆の対応には変化無かったと思うんだけどな~」だと。
最後に、現在の状況について...
単刀直入に言うと俺たちは今、かなり絶望的状況に瀕している。
なぜなら、俺たちの前に立ちはだかる最大の脅威「ウーラ・ヴァシリアス」と呼ばれる、圧倒的な支配者が、すぐそこまで攻め込んできているからだ。
俺を「主」とし、複数の神で構成される一団「ティターン」は、現在このウーラ・ヴァシリアスの侵攻を受け、この「エリュシオン」と呼ばれる離島まで避難しているとマグナレアは言っていたが...
(永道)
「いきなり急展開すぎるだろ!!
なんで神様の世界がこんなにも物騒なんだよ!!」
(マグナレア)
「せっかく女神になって、希望に満ちた第二の人生を送ろうと思ったのに...
私なんてこれで戦争すんの3度目よ!!
まだあの日常の方がマシだったと思ってしまう...」
(永道)
「マグナレア?」
(マグナレア)
「いいの、忘れて。
それよりも貴方今から軍議に出て仕切ってもらうんだから、緊張感持ちなさい!
何も知らない貴方に言うと、か~なり骨が折れるわよ...」
(永道)
「え...クセ強い感じすか
しかも仕切れって言われても、今の俺は無能に等しいと言っても過言では無いんだけど...」
(マグナレア)
「まあ、フォローはするわ…たぶん。
だけど一応私達の主様な訳だし、皆の性格はおろか、容姿について突き詰めることはやめてほしいの。
多分私みたいに記憶はなくしても、心の奥底から貴方のことを信頼していると思うから」
(永道)
「えっ!?それ告白ですか?」
(マグナレア)
「違うわよ?
言っとくけど、私の貴方への第一印象は最悪だったってことは覚えておきなさいよ」
(永道)
「いや、それは、まあ、分かった。
気をつけるよ...」
そう言うとマグナレアに連れられて、奥に見える巨大な扉を目指して歩み始めた。
***
少し歩みを進めると、コツッ、コツッと足音が天井に反響し、静かな空間に広がっていく。
巨大な扉の隙間からは、重く淀んだ空気がじわじわと流れ出し、肌を撫でるように伝わってきた。
高まる心数...胸の奥で鳴る鼓動は強まり続け、手足の震えも収まる気配はない。
(マグナレア)
「貴方、緊張しすぎでしょ。
別に怪物みたいなのはいないわよ!
ポイのはいるけど...」
(永道)
「全然慰めになってねぇーよ!
こういうのは威厳が大事なんだよ!
これは緊張じゃ無くて...身体がうずうずしているだけだよ!」
(マグナレア)
「ふっ...強がってんのバレバレだよ」
マグナレアの煽りを聞いて顔が赤くなるも、扉の前に立って深く呼吸を整えた。
この先に待つのは、人知を超えた空間。
不安と好奇心が混ざり合いながらも、扉がゆっくりと開いていくその音に合わせて、俺は静かに一歩を踏み出した。
「聞け、同志よ!我らが主のお見栄である…」
***
扉を開けた瞬間、現実から弾き出されるような感覚に襲われた。
そこは、素朴で美しい彫刻が施された壁画に、豪華なシャンデリアが輝く空間。
大理石の長机の向こうには、威風堂々とした剛健な神々が静かに佇んでいた。
神秘的な空気に見とれていると、2メートルは軽く超えるであろう大きな男が立ち上がり、こちらに近づいてきた。
(2m超えの男)
「主よ! よくぞ参られた!
しかし、まるでダメだな! 顔を見れば思い出すかと思ったのだが…やはり、少し顔立ちのいい坊主にしか思えんな!
ガハハハハッ!」
(マグナレア)
「ちょっと!
記憶がないのは仕方ないけど、少しは言葉を選びなさい。
それで、ヴァルガス。ウーラの大軍はどこまで迫っているの?」
(ヴァルガス)
「いやぁ、これは失礼した。
ウーラの奴らは未だこちらへ向けて進軍中だ。
そして、交戦していたディーネとソールが先ほど敗走したとの知らせを受けた」
(永道)
「敗走って……」
ヴァルガスの最後の一言で、この場の空気は一瞬にして凍りついた。
(マグナレア)
「また…」
(ヴァルガス)
「だが、あいつらはウーラの大軍相手によく戦ってくれた。
何せ、丸二日も持ちこたえたのだからな…」
仲間の二人は生死不明。
そして唯一の希望であった「主」は、彼らの記憶からも失われた存在となってしまった。
言わずもがな、状況は最悪だ。
だが、彼女は言ってくれたんだ。
「記憶を失っても、皆はあなたを心の底から信頼している」と。
ならば、絶望に沈む部下たちを希望へ導くのは、主である俺の役目なのではないか。
(永道)
「俺にはお前たちと過ごした記憶がない。
それは、お前たちにとっても同じなはずだ。
だが、それでも心の奥底で俺を信じる気持ちがまだ残っているのなら…俺に続いてくれ。
皆が俺を支えてくれる“主”でいられるように。
俺が皆を希望へ導けるように。
そして、新たな記憶の第一頁目として、この戦いに俺の勇姿を刻んでやる!
お前たちの“主”が、お前たちを救ったのだと!!」
そして、下を向いていた者たちが顔を上げ、前を向き、立ち上がり、咆哮を上げる…はずだった。
(マグナレア)
「まあ、この世の中、うまくいかないこともあるわよね…」
ただ、静寂が流れていた。
(永道)
「ちょっと…沈黙が一番ツラいんだけど…
これじゃ俺がただのイタいやつじゃないか!」
(ヴァルガス)
「主よ。
言葉だけでこの現状を打破するのは容易ではないぞ」
(永道)
「わかってるさ!!
でも、この状況を変えるのは主の役目だろう、普通!!」
(ヴァルガス)
「…ああそうだ!!
言葉だけでは伝わらない思いもあるが、覚悟わ気持ちがこもっているのならそれは大きな間違いだ!
今こそ、海洋神ヴァルガス・キマロテクス!
我らが主に崇敬の念をここに示す!」
ヴァルガスはその場で片膝を床につけ、俺の前にひざまずいた。
両手を組み、まるで神を崇めるような姿勢を見せた。
(永道)
「神が神に祈ってるのか…?」
(ヴァルガス)
「我に続く者、名を挙げよ!!」
その一声で、次々とその場にいた者たちがひざまずいていく。
(クリシオス)
「守護神クリシオス・プロスタシア、崇敬の念を我が主に…」
(ポロス)
「ʓ※みぬЯほ∽ん8(訳:天空神ポロス・セレスティア)
〆ヲ&ゑか☾た(訳:崇敬の念を我が主に…)」
(永道)
「ん!? なんて!?」
(モシュア)
「創造神モシュア・メーモリア、崇敬の念を我が主に…」
(ルクス)
「太陽神ルクス・ハイベリオン…不本意ながら、崇敬の念を我が主に…」
(永道)
「無理せんでいいわ!」
(ユスティリア)
「調和神ユスティリア・ノーモス、崇敬の念を我が主に…」
(フォティノス)
「光明神フォティノス・プロフィリア、崇敬の念を我が…あ〜ん大好きー!!
主さまぁーー!!」
(永道)
「主張が激しいわっ!」
(テテュス)
「破壊神テテュス・キマロテクス、崇敬の念を我が主に…」
(イアペトス)
「冥界神イアペトス・オーピロー、腐敗した臓器を汚物の塊に…」
(永道)
「後で表出ろ」
(ティア)
「超越神ティア・ランペリシア、崇敬の念を我が主に…」
(マグナレア)
「最後に、地母神マグナレア・キュベーレル。
崇敬の念を我が主に…」
(永道)
「何人か気になるやつがいたが、まあ気のせいだろう。
みんな、まずは礼を言う。
そして、この戦いは俺が前線に出て牽制を行う。
だが、作戦立案はヴァルガスに任せる」
というのも、未だこの世界のことを把握できていない俺が作戦を立てれば、戦線崩壊まっしぐらだ。
先ほどの言動からしても、ヴァルガスは周囲の信頼が厚いだろう。
今はとにかく、情報収集が優先だ。
(マグナレア)
「…そうですね。
ここはヴァルガスに任せて、主はタルタロストの地底神殿に協力を仰ぎに行ったほうがいいでしょう」
ナイスアシストだ、マグナレア!!
タルタロストの地底神殿がどんな場所かは分からないが、今は彼女の提案に従うのが最善だろう。
それに、協力が得られれば勝利の確率も少しは上がるかもしれない。
(ヴァルガス)
「うむ。確かにそのほうが良かろう。
では、このヴァルガス!
主のご意向に沿い、我らの勝利を確実なものにしてみせよう!」
そして軍議は終了し、解散となった。
ヴァルガスの作戦は後ほど使者が伝えてくれるという。
その後、俺はマグナレアに連れられ、タルタロストの地底宮殿へ向かったのだった。
情報量が多くなってしまい申し訳ございません。