災厄の扉
荒らされた神殿には、多くの堕天使が飛び回り破壊の限りを尽くしている。
(???)
「あのバカどもがッ!!
ああも無計画に破壊しやがって...
アレでウーラが潰れでもしたらどうするのだ...」
そして、大きな黒いドーム状に包まれた結界の中では、ポロスとテルーシャが少なくとも生き延びられる可能性を模索しているのであった。
(ポロス)
「さすがは原初の神...
お二方?がこの場にいなければ、私はもう倒れていました。
ですが未だ、危機に瀕しているのに変わりありませんね...」
(テルーシャ)
「ええ。
これは一時的なものなので、直ぐに破壊されます。
そして、奴らの狙いは恐らく、この神殿のどこかに隠されているウーラ様の奪取だと思われます」
(ポロス)
「ウーラですか?
その理由について詳しくお伺いできますでしょうか...」
(テルーシャ)
「ウーラを奪取することで得られることは三つ。
一つ目は、この世界の支配者を完全に消滅させること。
二つ目は、ウーラの力そのものを取り込むこと。
そして三つ目は、我々原初の神の支配権を得ることです」
(ポロス)
「では、我々はただ生き延びるだけではなく、ウーラの奪取を阻止しなくてはならないと...」
(テルーシャ)
「そうしていただければ助かります。
敵対者であったウーラを救うことに、否定的な情を抱くのは当然です。
ですが、何もかもを破壊し尽くす堕天使の手に渡ってしまえば、この世界は...」
(ポロス)
「承知の上です。
少なくとも私たちの主様であれば、阻止するように動くでしょう...
ですので、今は私個人の意見などどうだっていいです。
さあ、時間も無いですし、行動に移しましょう」
(へメラノクス)
「では、ウーラ様の件は私へメラノクスが行います。
ですので、貴殿はテルーシャ様とともに引き続き、ここにいる兵士を守り切ることに専念してください」
(ポロス)
「承知しました。
θα είμαι αστέρι
ではこれより戦闘に"$)(B!O@aんhうw(訳:移らせていただきます)...」
***
(セラフィム)
「とりあえず、ここは片付いたか...
さあ、扉を閉じて永道君のところへ向かわなければ...」
セラフィムは三体の堕天使を撃破し、扉を閉じる準備を始めていた。
そこへ、ハデスに連れられた永道たちが到着した。
(永道)
「セラフィム!?
ということはここが最奥ということか」
(セラフィム)
「少し待ってくれ...
新手が出る前にここを閉じる!」
セラフィムの足下が光り、髪や翼はなびきゆっくりと裂け目は閉じていった。
(ハデス)
「なっ...我の権限であるはずが、こうもいとも簡単に!
まあいい。
これで我の感じている違和感も無くなる。」
(永道)
「・・・・・。
少しいいか?
ハデスは先ほど扉を閉じることは冥界神にしかできないことだと言っていたが、どうしてセラフィムにもできるんだ?」
(セラフィム)
「一応我々天使は、この世界の管理者を務めているのでな...
この手のことなど造作でない...いや、ちょっと待てくれ...
まさかこれは...」
(永道)
「そうだ。
その扉を開いたものに心当たりができてしまってな...」
(セラフィム)
「すまないが、私はてっきりハデスがしでかしたことだと思っていた。
だが、奴なら可能だ...
先ほど見せた扉の開示も、唯一不可解であった転送の能力も...」
(永道)
「もしそうだとするなら、奴は俺たちを地底神殿の最奥に向かわせ後に...
その場にいた堕天使を連れて俺たちの神殿に向かった可能性が高い!!」
(セラフィム)
「すまない...
私がっ、もっと早く気づくべきだった...」
後悔する暇も無く、永道たちは少しでも、ほんの少しでも早くたどり着こうと、急いで来た道を引き返すのだった。
***
(テルーシャ)
「数が多いっ...
とてもじゃないですけどもう持ちません」
(ポロス)
「あjrんbz8ほ&$あhん37あln
(訳:さすがにもう持ちそうにない)」
イアペトスのときのように、ポロスは疑似惑星を自身に取り込み、テルーシャの補助を受けながら迫り来る堕天使の攻撃を防いでいた。
一方、テルーシャはポロスの補助や、周囲の兵士の防御に手一杯で一歩敵に踏み込まれただけでも危険な状態へと陥る瀬戸際に立たされていた。
そこへ、一人の天使が舞い降りた。
(ソロネ)
「まだ持ちこたえていたのですか!?
頑張りますね...であれば丁度いい。
ウーラはどこにいるのですか?
セラフィム様の言っていたウーラのいる地下牢が運良く残っていたもので、あのバカどもに破壊される前に確認したところウーラが見当たらな買ったのですよ...」
(テルーシャ)
「ここでは答えることができません!
それよりも、今は私たちに加勢してくださいっ...」
(ソロネ)
「フッ...
何が残念だ?いるのだろう哀れで間抜けなリマルギア...
あの時はよくも私をけなしたな?
まさか...喰ったりなどしていないだろうな?」
(テルーシャ)
「貴殿はいったい何のお話をッ!?
まさか...」
その場の空気は凍り付いた。
テルーシャは最悪な状況になると察し、ポロスに逃げるぞと言わんばかりの視線を向けた。
だが、もう遅かったのだ。
(ソロネ)
「そう!そのまさかだ!!」
ソロネの翼は徐々に黒く染まり始め、瞬きをして再び目を見開いたときには、もうその瞳は紅い色に満ちていたのだ。
(テルーシャ)
「えっ...あ...あぁ...」
(リマルギア)
「ああ...ああああ...
だまれっっ...だ、だまれーー!!」
テルーシャが向いた先には、地に仰向けになったポロスの姿とそれを踏みつける声の主がいた。
それはしわくちゃにしたような長い髪の毛に、ボロボロの衣に巻かれた、堕落した天使の姿をしていた。
そして、テルーシャが視線をその天使の指先に向けると、衝撃のあまり震えが止まらなかった。
(ソロネ)
「本当に喰っていないですよね?
その持っているモノを見てしまっては、さすがに不安になりますよ...」
(リマルギア)
「こ...こいつのことか?
安心して...いいぞ。
ウーラじゃなくて、クイモノだ!!」
手にぶら下げているのは、食い散らかされたクリシオスの姿であった。
大きなハエのような生き物が、周囲を飛び回り、血肉を喰らっている。
(リマルギア)
「つ、次はこの這いつくばっている奴で...
その次は...そこの女だ...」
(ソロネ)
「おい、喰うより先にウーラを見つけろっ...
そろそろ哀れなセラフィム様も近づいていることだろうし、ここに簡易的な扉を開いておこうかな。
さて、そろそろ待ちくたびれているだろうし、あの方々を呼ぼうか...」
***
一方で、永道たちは神殿の直ぐそこまで来ている。
行く手を阻む堕天使たちはセラフィムにより、一瞬にして跡形無く消えていく。
(セラフィム)
「永道君...恐らく神殿は貴方の想像よりも悲惨な姿になり果てているだろう。
このような事態を招いてしまったこと、本当に申し訳ない」
(永道)
「・・・・。
カオスが言ってたんだよ。
力を貸す代わりに、絶望を味あわせてやるって。
悲惨な姿を目にしたとき、俺は真っ先に『これが絶望なのか』と思うかもしれない。
だが、結局は絶望かどうかは自身が決めることで、簡単に受け入れたくないんだ...」
(セラフィム)
「そうか....私もカオスのことはよく分からない。
世界の管理を生まれたばかりの私に押しつけ、突然私の前から姿を消した。
でも管理を任された以上は、この世界を私なりに守らなければならない。
私もそんな気がしているのだよ...」
(永道)
「前から気になっていたのだが、セラフィムはどうして俺の本当の名も、皆の記憶から消えてしまったマグナレアの存在も知っているんだ?」
(セラフィム)
「私はこの世界を管理している存在だからか、本当に何でも知っているのだよ。
それに、私を直接造ったカオスからいろいろと情報をすり込まれているからね。
だから...顔も合わせたことのない者でも、知らず知らずのうちに名前も過去も全て頭の中に入ってくるのだよ」
(永道)
「そ、そうなのか...」
(セラフィム)
「そこで、全てを知り尽くした私から永道君に助言をしておこう。
マグナレアは必ず生きている。
だから、彼女がいつか帰ってくるその日まで、その命を大事にしているといい」
(永道)
「どうして、そんなことが言えるんだ...」
(セラフィム)
「簡単なことだ。
もしも、本当にカオスが永道君の描く未来を見たいと言っていたのなら、永道君が主としての道を選んだきっかけを意地でも守り通すのだと思うんだ。
永道君が、堕天使の件でハデスと地底神殿に向かうとき、もしマグナレアがいた場合、ハデスや永道君ならばどうする...」
(永道)
「最も安全な神殿に待機させている...と思う」
(セラフィム)
「だが、今の状況を見て欲しい...
今頃神殿では壊滅的な被害を受けているだろう。
だがら、カオスは先を見据えてそのような行動をとったのでは無いかと私は思う」
その後、永道の顔には喜びとも怒りともとれる、複雑な表情を浮かべつつ黙り込んでしまったのだ。
***
(ソロネ)
「ときは満ちた!
これより、扉を呼び出しましょう!」
ソロネは虚空に手を当てると、横に空間を切るようなそぶりを見せた。
次の瞬間、裂け目が現れてどんどん広がっていった。
そして、ついに裏の世界に眠っていた災厄が解き放たれようとしていたのだった。
(ソロネ)
「どれだけ光を照らし続けても、陰という闇に寄生されてしまう...
本当に哀れだな...セラフィム様は...」




