寝不足+登校=ある意味ゾンビ
――現在時刻 07:43
時折隠れる陽の光……ゆっくりと流れる小さな雲たち……
晴天とは言えないが、それでも気持ち良い程に青い空の下、
都内の市立高校に通う高校生たちは時に笑い合いながら、時に急ぎながら学びの場へと向かっている
その中に、一人だけ実に不機嫌そうな男子生徒の姿があった
「……………………」
その目つきはかなり悪く、周りの生徒は彼に出来るだけ近づかないように距離を開けながら歩いていた
まるで危険物のような扱いをされている男子生徒だったが、一人だけ……たった一人だけ彼に話しかけようとする者がいた
その者はずっと後ろの方を歩いていて、彼の後姿を見つけると駆け足で近づき――
「チャオッス、たっちゃん。ご機嫌いかが?」
ぽんっとその肩を叩いた
気軽な感じで話しかけた彼に対し、たっちゃんと呼ばれた彼――工藤辰久は実に不機嫌そうな眼つきと視線で答える
その様子と周りの生徒たちの反応を見て、触れてはいけないものに触れてしまったことを彼――鵜宮翔太は悟った
だが話しかけた以上何もなかったことにする訳にもいかず、冷や汗をかきながらもどうにか言葉を続けた
「ど、どうしたよ?えらく機嫌悪そうな――というか、目の下にくま出来てないか?」
よく見ると目の下にうっすらとではあるが黒っぽくなっている
不機嫌そうな理由が少しだけ分かった翔太に対し、辰久はこれまた声量の低い不機嫌そうな声で喋り出した
「昨日、兄貴の彼女が泊まりに来たんだけど、その彼女の声がでかくてね。全っ然寝れなかったんだよ。
おかげで寝不足になるわバイトの疲れは取れないわ体は反応するわでもう本当に最悪な夜を過ごしたというわけだ」
「声がでかい?そんなに大きな声で話す人なのか?」
「いや、話し声がじゃなくて……なんて言ったら良いか……」
「ああ分かった、分かったら言わなくていい……でもたしかにそりゃ最悪だ。いろんな意味で」
少しだけフラフラしている辰久の話を聞き、心の底から納得した
それから2人で自分たちのクラスに行くと辰久は席に着くとすぐさま寝る体勢になり、数秒後には寝息が聞こえてきた
その後友達に呼びかけられても、先生に丸めた教科書で頭を殴られても起きる様子は無く、
辰久は放課後まで一気に寝て過ごしたのだった