雨降らしポーションとドロップ ザ ドラゴン
その直ぐ後からサイ、ナソーとキャロラインが出てきた。
サイはゴールドの前に跪いた。
「使徒様、よくおいで下さいました。さあ、家の中へお入り下さい。」
ゴールドが家の中に入るとシンフォニーとテアがプ●キュアのおままごとセットで遊んでいた。
2年前、ゴールドがここを訪れた時、前世の記憶をもとに作った女の子のおもちゃだ。
今ならシンフォニーがテアと一緒にいる事の意味が少しだけだが分った。
テアには敵対心も恐怖心もない純粋な心があるのだ。
「ゴールド、何か遊ぶものを出して下さい。」
「シンフォニー、何がいいんだい?」
「ゴールドが出してくれるものなら、何でもいいわ。」
流石にゴールドも迷った。
テアにとって、このまま家の中でずっと遊ぶのは、健康によくないだろう。
少しは運動をさせた方がいいように思えた。
この部屋の客間は広い。奥行き15m、幅30mぐらいある。
天井までの高さも4mぐらいある岩をくりぬいた部屋だ。
ゴールドは部屋の隅に行き、変幻魔法Lv10オールチェンジを右手で、左手で土魔法Lv8鉱物形成を無詠唱で放った。
神の魔法レベル10を子供の玩具に使うなど、教会に知られたら怒られそうだ。
天井から鉄の鎖が次々と現れてきた。
サイとアリス、サンターナは見た事があった。
特にアリスは壁につながれた鎖に長く拘束されていたのだ。
「ゴールド、これ遊ぶ物なの?」
ゴールドはアリスに目でそうだと相づちをうった。
「これ、危ない遊びなのじゃないの?」
鉄の鎖はジャラジュラいいながらゴールドの腰より少し下まで来て、その鎖に鉄の板が横に現れた。
ゴールドは鉄の板に低反発マットを敷いて、その板に腰掛けた。
「それーーーっ。」
ゴールドはブランコを漕ぎ出した。
7m先の壁近くまで行って、今度は後に下がって行った。
ゴールドは中々の出来だと思ってブランコを漕いでいた。
「ゴールド、私も乗りたいわ。」
「ユリア、これは子供の!!」「はい、交代します」
ユリア姫はブランコを漕ぎ出した。
あまりの気持ちよさに「キャーーーッ」と黄色い声をあげてはしゃぎだした。
シンフォニーがゴールドのズボンをつまんだ。
「あっ、そうだった。」
子供達の為に最初のブランコの横に1m間隔で2台のブランコを作った。
シンフォニーの腰より少し下までクサリを伸ばして子供用を2台作った。
シンフォニーとテアもブランコで遊んだ。
3人で「きゃーーーーっ」と黄色い声をあげだした。
「ユリア、代わってくれない?」
「もう少ししてからね。とっても気持ちいいのよ。」
アリスはゴールドを見た。
流石にこれ以上ブランコを作るスペースはなかった。
「ゴールド様、御用は何だったのでしょうか?」
ゴールドはここへ来た用事をすっかり忘れていた。
「これから王都へ行きます。それでアシュウイン殿に、その仕事を手伝ってもらいたくてここへ来ました。」
「そうですか、弟は森へ狩りに行っています。」
「えっ、アシュウイン殿が狩りをしているのですか?」
「はい、使徒様から頂いた槍を持って、森の奥深くまで行っているのです。」
「あの森にはミノタウロスやカメレオン、ダイナソーがいますよね。」
「はい、あの槍は一撃でミノタウロスやカメレオン、ダイナソーを倒します。
私も一度、一緒について行って見たのですが、凄い槍です。
今までは、ルナ、モスラがいる広場から先へは、ルブナ、ワイズ達でさえ進めなかったのですが、あの槍でルナ、モスラを倒して奥へ進めるようになり、かなり大物を持ち帰るようになったのですよ。
これまでは10人で森に入っていましたが、今は20人で森に入って狩りをしています。お陰で肉に困る事はなくなりました。ありがとうございます。
夕方には帰って来ますので、お待ち願えますか。
こちらでお茶を飲みながら、旅のお話をお聞かせください。」
お昼過ぎからゴールドは旅の話しをサイに聞かせた。
シンフォニーとテアはずっとブランコに乗っていた。
ユリア、アリス、サンターナとユリまでがブランコでずっと夕方まで遊んだのだ。
旅の話が大体終わりゴールドはサイに尋ねた。
「作物の生長はどんな様子ですか?遅くはありませんか?」
「えっ、何故それをご存知なのですか?
ゴールド様がナソーに居られた時、小麦を刈り取って、その後直ぐ、また小麦を植えたのですが小麦も野菜も成長がとても遅いのです。
今すぐ食べるのに困りはしませんが、このままいくと問題です。」
「サイ殿はナパ領、コカ村をご存知ですか?」
「はい、知っています。」
「あの村でも魔物との戦いの後、小麦の生長が遅かったのです。
魔物が持っている毒が、土と混じり作物の成長を遅らせているように思えました。
そこで神の薬ポーションを使って見たのです。」
「ポーションですか?どんな薬なのでしょうか?」
「これです。」
ゴールドは雨降らしポーションをサイに見せた。
「これが神の薬なのですか?」
サイはポーションを手にとってみた。
「効果はどんなものだったのでしょうか?」
「中々有効でした。
実際使ってお見せいたしましょう。
この下の畑でお見せいたしましょう。」
ゴールドはサイを抱えてベランダから100m下の畑へフライで降りた。
サイには始めての空の旅で、ゴールドから背中を押されてふっと浮いた感じの後、100mを一気に降りたので、「あああーーっ」と声を上げてしまった。
丁度地上に降りた所へアシュウイン達が戻って来た。
「使徒様、お久しぶりです。」
「おおーっ、アシュウイン殿、おじゃましています。」
「何をなされているのでしょうか? 」
「アシュウイン殿もそこで見ていてください。」
ゴールドは雨降らしポーションを畑に撒いた。
地面から魔力の霧が空へ立ち上がり、雲を作り出し魔力の雨を降らし始めた。
サイには何も分らなかったが、アシュウインには魔力の雨が見えたのだった。
「使徒様、その雨は何なのでしょうか?普通の雨ではないように思えます。」
「アシュウイン、雨が降っているのか?」
「兄上、目の前に降っているではありませんか?」
2人は顔を見合わせて、ハテナの顔になった。
「アシュウイン殿、この雨は魔力の雨で、普通の人族には見えないのですよ。アシュウイン殿は見えるのですか?」
「はい、はっきりと見えます。」
ゴールドはアシュウインにサーチを放った。
レベル92!!
「ええーっ、レベル92」
どれだけ大物を倒して来たのだ。凄いの一言だ。
まだ魔法には覚醒していないが、空間魔法Lv1空間把握と聖魔法Lv1サーチの文字がうす暗く現れている。
人族でも自力でここまで来れるのか?ゴールドは嬉しくなった。
しかし、これは槍のなせる技だと言う事をゴールドは見落としていた。
1分ぐらいすると畑の雑草が生え始めた。
今まで茶色だった所が緑色に変わって行った。
そして野菜は生き生きしだして成長し、小麦も腰辺りまで生長したのだった。
「おおーっ、これは凄い薬ですね。」
「サイ殿、これを10本与える。1本で1km四方に効果があります。サイ殿が後は撒いてください。」
「使徒さま、ありがとうございます。
ムーン シルバー様、感謝いたします。
あっ、そうだった。
ゴールド様はお前に用事があって来られたのだ。」
「私に御用ですか?」
「明日、私は王都に行ってライオスを弟子にするつもりです。
そしてライオスを連れてベラドンナへ行きます。
早くて半年、遅くとも1年後には王都ナッシュビルに帰すつもりです。
この間、アシュウインとアラディンに王都を守って欲しいのです。
二人なら、どんな敵でも対処出来るでしょう。
どうですか、頼みを聞いてもらえますか? 」
「アシュウインは使徒様の僕でございます。しっかりとライオス王の留守をお守りいたします。」
「ありがとう、明日出立しますのでよろしくお願いいたします。」
この日、シンフォニー、テア、女性陣らは夕食を食べた後もブランコを夜遅くまでして、中々眠れなかった。
翌日ゴールドはシンフォニーをここに置いて、ナッシュビルへ飛んだ。
飛んだ場所は王宮の謁見の間だ。
ここにライオスがいる事が分ったからだ。ゴールド達が現れたのは謁見の間の真中だ。目の前に人が3人跪いて、ライオス王に挨拶をしていた。
ライオスは椅子を立って、お客を通り越しゴールドの前に跪いて、お祈りを捧げた。
「おおーっ、神よ、ありがとうございます。」
ライオスにはゴールドが来た意味が既に分っていたのだ。
ライオスは神王なのだ。
これにはお客も近衛兵も吃驚だ。文官達はただ黙って立ったままだった。
アシュウインは「えっ」と思った。
ライオス王がうっすらと光りの粒を発していたからだ。
今ならライオス王が言った言葉が理解出来た。
ライオス王は言ったのだ。
「私にははっきりと使徒さまが発しておられるうす青色の光の粒が見える」
あの時は見えなかったが、今自分にもはっきりと見えているのだ。
神と見間違えるような光の粒が、使徒さまから出て、回りをまわっているのだ。
しかし、何故ライオス王まで光っておられるのだ?
「ライオス。」
ゴールドの言葉使いが変わった。
「今からお前を私の弟子とする。
弟子は師匠に対して身も心もすべて捧げなければならない。
師匠の言葉は絶対だ。
嫌なら師弟の絆は解除される。
いつでも自由だ。
この神との契約を受ける覚悟があるか?」
「はい、お受けいたします。よろしくお願いいたします。」
「いや、王様、少しお待ち下さい。」
現宰相ジェイガン、ナスカ35歳が声をかけた。
「ナジラン領主、カイン、ナジラン様22歳とのお話の途中でございます。先ずはカイン様とのお話を終えてから、使徒さまのお話をお受けください。」
「これは私が失礼致しました。カイン殿、申し訳ありませんでした。私達は別の部屋で待っていますので、お話を続けて下さい。」
ここナトニア王国では一年前に全ての領地が魔物に襲われていた。
ナッシュビルより北の5つの領地は早い段階で壊滅状態になり、王都に避難していたのだった。
その戦いの最中、親達は倒れ、その息子達が領地を再建している最中なのだ。
1人の文官がゴールド達を来賓室に案内した。
案内して部屋へ入ると、その文官はゴールドの前に跪いてお祈りを捧げ出した。
ゴールドはこの文官の名前は知らなかったが、顔は覚えていた。
「お名前は何と言われる?」
「私の名前はアラン、ナセル20歳、現ナセル領主の3番目の弟です。私は早くから王都の文官をしております。」
「アラン殿は私が最初にここに来た時、右の壁際におられましたね。」
「はい、いました。あの時から、私は神を信じる事が出来るようになりました。」
「私は神ではありませんよ。」
「はい、存じております。神の使徒、ゴールド様です。」
「ではアラン殿にお聞きします。先ほどのライオス王とカイン殿の話の内容を教えてください。」
「今ナジラン領は復興の途中なのですが、ここ半年、作物が良く育たないのです。それで王家に食料の支援をして貰う為に来られているのです。」
「ナジラン領も小麦の成長が悪いのですか?」
「はい、そのようです。私の兄の領地、ナセルも似たようなもので兄も苦労しています。」「今の話では王都は大丈夫なのですか?」
「いえ、王都でも小麦の成長は悪いのですが、ここナッシュビル周辺だけ良く作物が取れるのです。」
「ここだけですか?」
「はい、他の都市、レアンドロス、ミカリーナ、ニケーフオロス、シエベスチェーン、アイゼンスタットでも作物の成長は悪いと聞いてます。」
「ナッシュビルだけ成長がいいのですね。」
「はい、そうです。」
ゴールドは神の魔法、ドロップ ザ ドラゴンが関係しているように思えた。
「アシュウイン殿、ナソー領のドロップ ザ ドラゴンの魔法具をあれから発動されましたか?」
「いえ、使徒様、キラービーが現れる事はございましたが、2~3匹程度だったので、私の槍で倒しました。まだ一度も発動した事はございません。」
ドロップ ザ ドラゴンも雨降らしポーションのように地面から見えない力が立ち上がるのだ。
これによって土地が浄化され土地の力が活性化するのだとゴールドは考えた。
とりあえず一度実験してみる事にした。
ゴールドは謁見の間に戻って、ライオス王に言った。
「その問題は私が解決して差し上げまりょう。カイン殿を少しの間、お借りします。テレポート。」
ユリア姫が素早くゴールドの腕につかまった。
ゴールドとユリア、カインはバルコニーに飛んでいた。
ここからフライにて上空3,000mまで上昇した。
そしてワープにてナジラン領の上空に飛んだ。
飛んだ所から下に落ち出した。
ユリア姫は慣れたものだ。
しかしカインは「助けてーーーーっ、あああーーーっ」と声を出した。
ゴールドはフライを発動してゆっくりとナジラン川の畔に降りた。
ゴールドは詠唱しだした。
「空に生きるものどもよ。神の使い、天空の使徒の名において命ずる。地に落ち、ひれ伏せよ。ドロップ ザ ドラゴン。」
地面から魔力の力が上空へ上がり始めた。
1匹のキラービーがゴールドの目の前に落ちてきた。
上空へ伸びた見えない力が地面へ戻って行った。
1匹のキラービーが落ちて来た以外は何も起きなかった。
しかし1分ぐらいしてカインが叫んだ。
「おおおおーーっ、使徒様、あれは何でしょうか?」
カインが指差す方をゴールドは見た。
それは茶色の大地が緑色に変わって行っている風景だった。
その緑色は加速度的に広がりを見せ、ずっと向こうの崖まで続いて行った。
雨降らしポーションのように、急速に成長するのではないが、地面を活性化したのは確かだった。
また、ドロップ ザ ドラゴンは見える範囲で効果があるのだ。ゴールドは気付いていなかったのだが、魔力量に比例して距離が伸びているのだ。
ゴールドのほぼ無限大の魔力量があって出来る力技なのだ。
普通の魔力量では10mぐらいが効果範囲だろう。
ゴールドは雨降らしポーションをその場に降りかけた。
直ぐ回りの野菜と小麦が成長しだした。
「カイン殿、これは神ムーン シルバー様の薬です。
1km四方にこのような効果があります。
これを10本上げますので、必要な所に降りかけてください。
そうすれば、食料問題は解決です。
他の場所も段々小麦が取れるようになるでしょう。」
カインはゴールドの前に跪いていた。
「おおーっ、神よ、ありがとうございます。」
「カイン殿、私達は王都に帰ります。王には伝えておきますので、領都の再建をして下さい。」
「使徒様、ありがとうございます。」
ゴールドとユリア姫はライオスが待つ謁見の間にワープで戻った。




