ニルンルート家
「カサブランカス殿、今回はお世話になりました。
それから疑問に思った事があるのでお尋ねいたします。
カサブランカス殿の家の名前はニルンルートと言われますがニルンルートと呼ばれる薬草があるのをご存知でしょうか?」
ニルンルート草は透明化のポーションの材料なのだが、ゴールドは旅の途中で殆ど見た事がない薬草だったのだ。
多く生息していたのはアメニア王国のアリオワ領の東の岩の柱の下の川岸で見た記憶だけだった。
後はきれいな川の上流で、たまに見かけた。
最近では、この和音のダンジョンの30階層のボス部屋の水辺で咲いているのを見かけただけだった。
「はい、ニルンルート草は我が家に咲いている薬草でございます。」
「えっ、貴方の家に咲いているのですか?」
「はい、我が家には山の岩から清水が流れていて、その下に咲いています。それで我が家の名前がニルンルートになったと言い伝わっています。」
「それは何時頃の話なのでしょうか?」
「我が家にも王家と同じ宝箱があり、その中の古文書に書かれているのです。我が家の宝箱は王家の物より小さい物なのですが。勇者様はビクトリア王立図書館で古の王子とその妻の話を知られたのですよね。」
「はい、今から1万5千年前の話です。」
「ではその第4王子と妻の名前をご存知ですか?」
「いえ、知りません。名前までは書かれておりませんでした。ひょっとして、あの姫の家の名前がニルンルートなのですか?」
「はい、そうです。第4王子の名前はアストリア、ラームー、妻の名前はナディラ、ニルンルートなのです。」
「おおーっ、それは凄いお話です。」
「又、ニルンルート草は我が家に伝わる薬の材料なのです。」
「薬とはポーションの事でしょうか?」
「いえ、勇者様がお使いになった妖精の雫の様なポーションではなく、病の癒しと傷の薬です。」
「姿が消える薬ではないのですか?」
「姿は消えませんよ。勇者様、そのような薬があるのですか?」
「神の薬の中にあります。」
「それは凄い薬ですね。
我が家の薬はニルンルート草が完熟した物を使います。
ニルンルート草は3ヶ月で完熟し、光り輝きます。
耳を近づけると、完熟したニルンルート草はリーンと音を出しています。
これを収穫して6ヶ月、日陰で乾燥させ、ブルーフラワーと呼ばれる薬草とルナ草を混ぜて、小さじ1杯飲むのです。
普通の病気や簡単な傷はこれで治ります。
王家にも献上しているのですよ。」
「なるほど、よく分りました。
カサブランカス殿、その乾燥させたニルンルート草を見せて頂く事は出来るでしょうか?」「はい、勇者さま。我が家に6ヶ月、すでに木陰で乾燥させた物があるので、持ってこさせます。30分ぐらいお待ちください。」
「ありがとうございます。」
ゴールドは、この場で待つ事にした。
その時、女王エカテリーナがゴールドに言った。
「ゴールドさま、ニルンルート家には他にも石を鑑定する力があるのですよ。」
「えっ、石の鑑定ですか?」
「はい、その石を見れば、中に含まれている鉱物が分るのです。」
「それは凄い力ですね。」
ゴールドは鉱物限定とは言え、サーチが使える人間がいる事に驚いた。
「カサブランカス殿も使えるのですか?」
「使える?」
「えっ、魔法みたいな力ではないのですか?」
「魔法が何かは分りませんが、私にも多少なりと分かります。」
では、この石を鑑定して貰えますか?」
ゴールドはアイテムボックスからレビテイション鉱石を取り出し、カサブランカスに渡した。
「おおーっ、これは幻と言われた鉱石、レビテイション鉱石ではないでしょうか?」
「はい、レビテイション鉱石ですが、幻の鉱石とは如何言う事なのでしょう?」
「アストリア、ラームーと妻ナディラの記録に、その石の事が記されています。
アストリアとナディラは妖精国の前に幻の国と呼ばれているアトランティス連合王国へ立ち寄ったとあります。
8つの高い山に囲まれたきれいな王国がそこにあったそうです。
そこは人族や獣人族、二足歩行する獣達の国で、皆仲良く暮らしていたそうです。
その国には空に浮かぶ島があり、王子が何故空に浮くことが出来るのか尋ねたら、天空石と呼ばれる石により、空に浮いているのだと教えてくれたそうです。
その鉱石がこれですと見せてくれた石をナディラが見たら、頭の中にレビテイション鉱石と鑑定が働いたそうなのです。」
「なるほど、とっても興味深い話ですね。そして凄い能力なのですね。」
「しかし私より兄カサンドロスが鑑定に関しては凄い力がありました。兄はその鉱石を見るだけで、あとどれくらいの埋蔵量があるのかが分り、その鉱山を見れば、どの辺りに鉱脈があるのかが分ったのです。」
「それはまた凄い力ですね。お兄様は、今どちらにおられるのですか?一度お会いしてお話をお聞きしたいですね。」
「兄は11年前に亡くなったようなのです?」
「えっ、お亡くなりになっておられるのですか?」
「はい、12年前ローム王国のロカ領の鉄鉱山を兄は見たいと言って、私と2人でロカ領の西にある鉄鉱山を見に行きました。
兄は今ある鉱山のずっと西にもっと良好な鉄鉱石が眠っていると言い、今のうちにこの辺りの山々を買っておこうと言い出しました。
それで私と兄はロカ領に行ったのです。
幸い兄が見つけた辺りの山々は、一般の領民の持ち物で、私がその領民と交渉して100万ロムで手に入れたのです。
現在の価格で3,000万円だ。
その夜、兄と二人で酒場にて祝杯を上げました。
その酒場から宿への帰り道で私達は10名のローブを被った敵に襲われている1人の黒覆面の騎士に出会ったのです。
黒覆面の騎士は強く、瞬く間に2人の敵を切り殺しました。
その時、屋根の上から投網が黒覆面の騎士に投げられたのです。
私達は離れた所から見ていたのであっと思いました。
兄を見たら、兄はすでに駆け出していて、黒覆面の騎士を助ける為、後から8名のローブを被った敵に切りかかりました。
私も兄に続き、2人で後から攻撃して、地上の敵は全て倒したのです。
しかし屋根の上の敵には逃げられました。
兄は直ぐ、その場から宿に行き、荷物をまとめてロカを出立しました。
私は黙って兄について行きました。
こんな時の兄の勘は絶対当たるのです。ロカの城門を出て直ぐ黒覆面の騎士が合流してきました。
兄は何も言わずにロゴス領を目指して駆けました。
半分ぐらいまで来た時、兄は森の中へ身を潜めました。
すると10分ぐらいして、騎馬が30騎ばかり駆け抜けて行きました。
それからは3人で森を歩いてロゴス領に向かいました。
ロゴス領都の城門前には騎馬が30騎いて、通行人を検めていました。
私達はそのまま森の中を進み、ローム王都まで歩いたのです。
王都に着いたのは、5日後でした。
兄は王都に着くと宿に入りました。
そのまま3人で倒れるように眠りについたのです。
夕方になり夕食を食べに食堂に下りて行く事になりました。
この時まで黒覆面の騎士は一度も覆面を外さなかったのです。
兄が言いました。お嬢さん、もう大丈夫ですよ。覆面を外して食事を取りに参りましょう。黒覆面の騎士は覆面を外しました。
腰まで流れる緑色の髪が覆面の下から表れました。
その翌日、兄は私に言いました。
お前は1人でここから帰り、私の代わりにニルンルート家を継いでくれ。
兄さん、如何言う事でしょうか?
私はこのお嬢さんとここに残る。お前は帰ってアミルカーラと一緒になり、家を継いでくれ。
この山の権利書はお前が持っていてくれ。
私は兄の説得をあきらめ、ベラドンナまで船で戻ってラームー王国へ帰って来たのです。二年後、私はローム王国へ行く事になり、その時、兄を探しにローム王都まで行きました。王都には兄の痕跡はありませんでした。
それでロカ領まで足を伸ばして調べました。
兄と別れて1年後、ロカ領都は5首ヒドラに襲われて、領都は壊滅状態になったそうなのです。
その時、2人の凄腕の剣士が現れて、5首ヒドラを倒したそうです。
そして2人の剣士は、その戦いの最中に死亡したとの事でした。
私は、その2人こそが、兄とあの黒覆面の騎士だと感じたのです。
それ以外は何も分りませんでした。
ずっと後で分った事なのですが、あの戦いの後ロカ領主の娘、アズリール、ロカ姫16歳がいなくなったそうなのです。
それで私はあの黒覆面の騎士がアズリール姫だったと今は思っています。
アズリール姫は16才の若さにも関わらず、剣の達人だったそうなのです。
兄も剣の達人でした。」
この時ニルンルート家から乾燥させたニルンルート草が持ってこられた。
ゴールドの頭の中に錬金レシピが現れた。
万能薬、透明化ポーション=乾燥させたニルンルート草+ブルーフラワー+ルナ草+きれいな水+魔力90Mp
「おおーっ、万能薬ポーションだ。」
乾燥させたニルンルート草以外の材料は比較的簡単に手に入る薬草だ。
「勇者さま。」
「はい、何でしょうか?」
「何か嬉しそうですね。」
「これは失礼いたしました。」
ゴールドはアイテムボックスから万能薬のポーションを取り出し、カサブランカスに渡した。
「このポーションは万能薬のポーションです。妖精の雫ほどの力はありませんが
どんな欠損、病気、呪い、状態異常を治す薬です。この神の薬が乾燥させたニルンルート草から作る事が出来るのです。」
「それは凄いです。」
「そのポーションはカサブランカス殿に差し上げます。」
「えっ、そんな凄いポーションは頂けません。」
「いえ、いろんな話と乾燥させたニルンルート草を見せて頂いたお礼です。それとご相談なのですが、お話に出た山の権利書を10倍の値段で私にお譲りくださいませんか?」
「えっ、10倍ですか?」
「はい、そうです。」
「勇者さま、利益が出るとしてもせいぜい3倍ぐらいですよ。3倍でも一生涯遊んで暮らせる金額ではありますが。」
「カサブランカス殿、私は今からベラドンナに於いて工房を始めます。
錬金術の工房です。
それだけでもローム王国は繁栄するでしょう。
当然鉄の需要が伸び、鉄の値段も上がります。
国が繁栄するには鉄が必要なのです。
そしていつの日か、私みたいに妖精の雫を作れる錬金術師が現れたなら、爆発的にローム王国は繁栄するでしょう。
その時、鉄が必要になるのです。」
「勇者さまは兄をそこまで信用なさるのですか?」
「私はこれでも神ムーン シルバー様の使徒です。」
ゴールドからうす青色の光の粒が立ち上がりだした。
「勇者さま、権利書はお譲りいたします。私が買った時の値段100万ロムでお譲りいたします。」
「カサブランカス殿、この金額は貴方の兄、カサンドロス殿に対するお礼の気持ちなのです。カサンドロス殿がこの鉱脈を見つけてくだされなければロームの繁栄はずっと遅れていたでしょう。」
ゴールドはカサブランカスの前にのべ金貨10本を並べた。
翌日ゴールド達はロームに帰ってきた。
「勇者さま。」
「はい、何でしょうか?」
「勇者さまはここであの神の薬をお作りになられるのでしょうか?」
「妖精の雫は今は無理です。貴方にも見せたヒールポーション、スタミナポーション、癒しのポーション、呪い解除のポーション、状態異常回復ポーションを作るつもりです。いつの日か、私と同じ能力の者が現れたら、妖精の雫も作れるでしょう。」
ゴールドは5種類のポーションを5本づつアイアランド、ロマーナに渡した。
アイアランドはゴールドの前に跪いた。
「このアイアランド、ロマーナ、勇者さまの僕でございます。」
「私は神ムーン シルバーさまのご意思に添って働いているだけです。貴方がそう願うのなら、神は貴方の側に居られるでしょう。」
ゴールドはポーションの売り先が決まり、次の行動に出た。
アンリに弟子の修行をさせるのだ。
まず1人、アンリに弟子を取る事にした。
それで募集をした。
ローム王家に募集は一任した。
アンリはローム王家の王子なのだ。
募集要項にはアンリ王子と一番相性の良い者を弟子にすると記した。
又、最悪死ぬ事もありうるので、その覚悟が必要だとも書いた。
その代償として、神のポーションと魔法を授けると書いたのだ。
ローム王家推薦の者3名にアンリが魔力を流して相性の良い者1人を弟子にする事にした。ローム王家からはアデリナ姫13歳がやってきた。
全員「えーーっ」と声を出した。




