最終話、ビクトリア王国へ
アリスは死を覚悟した。
ゴールドに願いを叶えて貰えれば、死んでも構わないとの想いが、剣の突きになってゴールドに放たれた。
ゴールドは、その突きを左にいなして、そのままアリスの咽喉にピタリッ、斬鉄剣改を着けた。
そして言った。
「私の勝ちだ。私に従ってもらうぞ。」
アリスは泣き出してしまった。
「ごめん、大丈夫かい!!」
「大丈夫じゃないわ。何よ、これ。」
「ごめん、ごめん、ちょっと神から頂いた、この身体を試して見たんだよ。」
「何したのよ!!」
「今、私のステイタスレベルは2万ぐらいだと思うよ。」
「レベルが2万?」
「そう、アリスの約5倍だね。しかも、もっと上げられそうだよ。」
アリスにも納得いく答えだった。
あの恐怖を感じたのは、正しいものだったのだ。
その時、ゴールドは自分の後ろにサンターナがいるのに気付いた。
サンターナはアイドルの声と動きに失神したように、頬を赤く染めてゴールドを見つめていた。
ゴールドはしまったと思った。
これはあれだ。
豹の女の宿命だ。
好きな男で自分より強い者の言葉には逆らえない状態だ。
むしろ強制する言葉を待っている状態なのだ。
先ほど、「私の勝ちだ。私に従ってもらうぞ」と言ってしまった。
このまま、サンターナは自分の言う事には逆らえなくなるのだろうか!!!
ゴールドはアリスとアドリアナを置いて、サンターナを抱え、邸に戻ってベッドに寝かせた。
「ゴールド、サンターナは如何かしたの?」
ゴールドはユリアに先ほどの出来事を説明した。
「サンターナは治るだろうか?」
「ゴールド、サンターナは今まで1度も貴方の言葉に反対した事はないわよ。大丈夫だと思うわ。」
「そうかな?」
「きっと大丈夫よ。」
ユリアの言葉通り、サンターナは夕方には気がついて、いつも通りだった。
翌日、ゴールドは皆に最後の仕事だと言って、アドリアナと龍のダンジョンにやって来た。
1階層に入ると、ワイバーンが3匹飛んでいた。
今回、ゴールドは何もしないつもりだ。
「アドリアナ、1号に命じて、あれを倒してみなさい。」
「ユキ、あの大きな鳥を倒せますか?」
「ワイバーンを倒すのですね。了解です、姫。」
「えっ、あれがワイバーンなのですか!!! 」
アドリアナは小さい頃、読んだ御伽噺に出て来るワイバーンを始めて見た。
想像していたよりも、かなり小さいと思った。
空の彼方に飛んでいるのだ。
ユキ達は10機編隊を組んで、ワイバーンに突撃した。
ユキが真中で鶴翼の構えだ。
そのままワイバーンに突っ込んで、ワイバーンの身体を突き抜けた。
2匹目、3匹目と倒して、アドリアナのレベルが330上がって、アドリアナのレベルは578になった。
「ゴールド様、これでお別れですね。」
アドリアナは涙を流した。
「アドリアナ。」
「はい、ゴールド様。」
「貴女が指にはめているアダマンタイトの指輪にラティアス、ゴールド、ワープと唱えれば、いつでも私の元へやって来る事が出来ます。」
「わたくしを連れて行ってはもらえないでしょうか!!!」
「神は貴女がここロームで、これからなさる行為に期待しておられます。
神ムーン シルバー様は子孫繁栄の神です。
貴女はこれから、多くの人々を救って行くでしょう。
それを神は貴女に期待しておられるのです。」
「分りました。私はゴールド様の、その言葉に従って生きてまいります。」
「ありがとう、アドリアナ、ワープ。」
ゴールドとアドリアナは王宮の謁見の間に飛んでいた。
そこには誰もいなかった。
アドリアナはゴールドに抱きついてキスをした。
その頬には、涙が流れていた。
「ゴールド様、またお会い出来ますね!!」
「はい、きっとまた会いに参ります。」
ゴールドはワープで拠点の邸に帰って来た。
そして、その日の内にゴールド達はビクトリア王国に帰って行った。
次の日、アンリがゴールドを尋ねてやって来たが、玄関のドアにビクトリア王国へ行って来ますとメモ書きが貼られていた。
ゴールドがワープで飛んだ先は、ビクトリア王国の王立図書館だった。
「王宮へ行きましょう。」
「ユリア、ここは何処なの?」
「アリス、ここは王宮の側にある図書館よ。」
ユリアを先頭に王宮へやって来た。
門にゴールドの知らない近衛兵が2人立っていた。
「おおーっ、ユリア姫様、お帰りですか!!」
「はい、今帰りました。兄上はおられますか?」
「はい、マルス王様は政務をなされておられます。執務室におられると思います。」
「では、会いに行って来ます。」
「はい、お通りください。」
ゴールドは門番に挨拶しようとした。
「勇者様、お帰りなさいませ。」
「貴方は私を知っているのか!!」
「この国で勇者様を知らぬ者はおりません。どうぞ、お通り下さい。マルス王がお待ちです。」
「この者達は私の連れなのだが、一緒に通ってもいいだろうか?」
「はい、お通り下さい。」
ゴールドはほっとした。
なんとなくだが、通してもらえないと思ってしまったのだ。
しかし、ここビクトリア王国では違っていた。
何処に行っても、素通り出来た。
ユリアの後を着いて行き、王の執務室の前までやって来た。
前に来た時、ドアを開けてくれた近衛兵が立っていた。
直ぐドアを開け、中へ「ユリア姫様、勇者様、お帰りでございます」と声をかけてくれた。
ユリアが執務室の中に入ると、兄の机の前に2人の男性が立っていた。
「あっ、リンウッド小父様、フェルトマン小父様、お久しぶりです。」
「ユリア、帰って来たのかい。」
「はい、ただ今帰りました。」
「兄上、ただいま。」
「お帰り、ユリア。」
この時、ゴールドが部屋に入って来た。
マルスは椅子から立ち上がり、ゴールドの前で跪いた。
「勇者様、お帰りなさいませ。」
「マルス王、元気そうですね。」
「勇者様もお変わりないようで安心しました。」
「勇者様、あのおりは、助けていただいてありがとうございます。」
「貴方達はどなたですか?」
「申し送れました。私はフェルトマン、クリスタル35歳でございます。勇者様。」
フェルトマンはマルスの後ろで跪いた。
「私はリンウッド、アイスマン32歳でございます。勇者様。」
「貴方達もあの時、謁見の間にいたのですか?」
「はい、この国の生き残りは、全員このオルレーンに避難していました。
そこへゴブリン軍団が押し寄せて来たのです。
マルス王が倒れ、ユリアが殺されようとして、これで最後と諦めた時でした。
私達はマルス王のいた左側のドアを守っていたのです。
ユリアがゴブリンに斬られようとした時、勇者様が天から光と共に降臨なされました。
最初、何が起きたのか分りませんでしたが、光が人の形になり、ゴブリンを倒して下さりました。
ユリアが助けて下さいと光の人に言いました。
光の人はかしこまりました。
この勇者ゴールドが姫の願いかなえましょうと言われました。
そして光の人は勇者様になられたのです。」
「そんな事をナタリナ、シルバーも言っていましたね。」
「勇者様、復興の為の資金を提供してくださり、ありがとうございました。今日は我が領の復興具合をマルス王に報告に来たのです。」
「我が領?」
「マルス王、お2人は何処の領主なのですか?」
「リンウッドはリンウッド、アイスマン公爵、ローリエ領を治めています。
フェルトマンはフェルトマン、クリスタル公爵、リンベル領を治めています。
ビクトリア王国の公爵家は皆、近い親戚なのです。
リンウッドとフェルトマンは、私と歳が近い所為で私が実の兄のように思って育って来たのですよ。
いつも、私を守ってくれています。
あの日も、3ヶ所あるドアの一ヶ所をしっかり守ってくれていたのです。」
「ゴールド。」
「なんだい、ユリア。」
「小父様達は強いですよ。」
「なるほど、それは頼もしいね。」
「ユリア、勇者様を呼捨てにするのは、いけませんよ。」
「お兄様、私達は結婚するのです。名前で呼び合うのは、恋人として当然です。」
「えっ、ユリア、結婚するのか?」
「はい、そうですよ。」
「誰と結婚するのだ?」
「ゴールドとです。」
「ゴールド?誰だ、それは。」
「勇者、ゴールドに決まっているではありませんか。」
「勇者様と結婚するのか!!!」
「マルス王。」
「はい、勇者様。」
「その為もあり、この度帰って来たのです。ユリア姫との結婚を許して貰えないだろうか!!」
マルスは頭が一杯になり返事が出来なかった。
そこへ、ハーモニがやって来た。
「ユリア、お帰りなさい。」
「おかあさまーーっ。」
ユリアはハーモニに抱きついて泣き出した。
「あらあら、如何したの?」
「私、ゴールドと結婚するの。」
「あら、良かったわね。」
「マルス。」
「はい、母上。」
「結婚式をしなくてはね。リンウッドもフェルトマンも協力してね。」
「はい、ハーモニ様、お任せください。」
「では、マルス王。」
「何です、宰相。」
「先ずは爵位を勇者様にお授けください。無官では、さすがに王族と結婚は難しく思われます。」
「そうだね、勇者様、公爵では如何でしょうか?」
「マルス王、ユリアと結婚すれば貴方は義兄になられます。ゴールドとお呼びください。」
ゴールドはマルスを立たせた。
「リンウッド殿もフェルトマン殿もお立ちください。そしてこれからはゴールドとお呼びください。」
「では、ゴールド様。公爵を受けていただけますか?」
「いや、マルス王、公爵より伯爵位をいただけないでしょうか!!」
「ゴールド様、伯爵位より公爵の方が上ですが!!」
「あっ、私は前世で読んだ本でゴールド伯爵に憧れを持っていたのです。出来れば、伯爵位にして頂けないでしょうか?」
「宰相、考えはありますか?」
「伯爵位でよろしいかと。」
「いいのか!!ではゴールド伯爵とします。領地はここ辺りで如何でしょう。」
マルスはオルレーンとフェアール地方の間に丸印をつけた。
「マルス王、私にこの辺りを与えください。」
「ゴールド様、そこは湖しかありませんよ。」
「私は湖が好きなのです。」
「では、この辺りをゴールド伯爵領とします。」
マルスが地図に○印をつけたのは、フェアール地方の北、川と湖しかない地域とアルペン山脈の半分ぐらいの地域、広さだけなら王国随一の場所だった。
「では結婚式は1ヶ月後に行いましょう。ユリア、いいかい?」
「ありがとう、お兄様♡」
こうしてゴールドとユリアはビクトリア国民から祝福を受けて結婚した。
結婚までの間にゴールドは衛星都市の完成に尽力していた。
金も知識も力も惜しみなく使い、先ずラスベガス衛星都市から完成させた。
城壁の高さは15m、圧さ5mの城壁の上にバリスタを据え付けた。
バリスタの技術もビクトリア王国の鍛冶師達に教えて行った。
急激な発展を向かえたビクトリア王国で鉄が無くなった。
「マルス王。」
「はい、ゴールド様。」
「この国に鉄鉱山はありませんか?」
「魔物の襲撃前にはあったのですが、今現在稼動していません。」
「何処にあるのですか?」
「ルナ砦の東側、アルペン山脈に少し入った山の中です。」
ゴールドは地図で大体の位置を教えてもらった。
その場所はローム王国でロカの父、カサンドロス、ニルンルートが発見した場所の西側だった。
ゴールドはなるほどと思った。
あの辺りの山は全て鉄鉱山なのだ。
そしてアルペン山脈よりに良い鉄鉱石が取れるのだ。
ゴールドはアイスマン公爵、クリスタル公爵と共に1,000名の人員を投入して鉄鉱山の再開発に乗り出した。
ゴールドが土魔法で大々的に掘り起こし、それを各領に配送して行った。
一気に鉄が回り出し、発展に拍車をかけた。
衛星都市ラスベガスは約1ヶ月で完成したのだ。
衛星都市ラスベガス完成と同時にゴールドとユリアの結婚式が執り行われた。
そして初夜を迎えた。
ゴールドはユリアにキスをした。
しかし5cm以上は近づけなくなっていた。
前はホッペにチューが出来ていたのだが、それさえ出来なくなっていた。
神の眷属の身体の制約が厳しくなっていたのだ。
ゴールドは神の眷属の身体を捨て、レベル1からユグドラシルの身体になって本当の意味でユリアと夫婦になろうと思った。




