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ロカ、ニルンルート  作者: 明広
20/38

学食

ダンジョンに入る段になって問題が起きた。

 ゴールドはダンジョンには5人1組以上で無ければ入れない事とした。

 今までのダンジョンアタックの実験から、そう判断したのだ。


 故に結界魔法を自分で作り変え、ダンジョンの入り口に、もう1つの結界魔法を施した。


 先ず今後はステイタスカードを持った者でないと入れない。

 レベル30以上ないと1人では入れない。

 レベル30以下は5人パーティー以上でないと入れない事として、付与魔法と結界魔法で1種の封印をした。


 新人達は5人パーティーを組んで何事もなかった。

 ベテラン冒険者もテオ、ロベリアを中心に5人パーティーを作った。

 後にベテラン7人が残ったのでゴールドはこの7人を1パーティーとして登録するように言ったのだった。


 しかしラオール達3人とパーティーを組むのを残りの4人は如何しても嫌がった。

 特にこの4人の中にアナリーゼを含めて女性が3人いたのだ。

 皆、普段から、もっと言えば前々からちょくちょくラオール達にセクハラを受けていた。


 ラオール達3人は素行が悪い上にレベルがここベラドンナとロベリアでは上位の傭兵なのだ。

 始末に負えない存在だった。

 それでゴールドは参加させない事にした。

 この7人を除いてダンジョンにアタックさせた。


 ゴールドは用心の為、ライオス、ナイキ、アデリナにウインドフライのポーションと万能薬のポーションを持たせ待機させた。

 各パーティーには発炎筒を持たせ、危なくなったら知らせるようにした。

 また、全チームにタワーシールドを持たせ、魔物を一旦盾で押さえつけて、魔物の動きを止めて全員で一斉に攻撃するように指示を出した。


 この結果、初心者パーティーでも魔物を倒す事が出来た。

 1階層の魔物を全て倒すまでは、薬草採取は禁止した。

 先ずは全員で魔物を倒す事を強いた。

 特に活躍したのは、テオ、ロベリアのパーティーだった。

 次から次へと魔物を倒して行った。15匹ぐらいは、このチームが倒した。


 2日をかけて全ての魔物を倒した。

 二日の午後には魔物は現れなくなった。

 残り5日が薬草採取の時間だ。


 初心者冒険者達は、ダンジョンで初の夜営をして1泊して一旦地上に戻り、またダンジョンに潜って薬草採取をして仕事を終えた。

 それでもどのチームも、1回で400束近くを採取、2回の採取で800束、銀貨80枚の収入になった。


 アルフレッド、クロスフィールドのチームが一旦ギルドに戻って来た。

 彼らはブルーフラワー100束、ルナ草100束、ルーン草100束、ルナ草100束を持って帰って来た。

 買取カウンターは銀行の横にある。ここはアクセルが受け持っている。

「いらっしゃいませ。」

「この薬草の買取をお願いします。」

 アクセルはカイケイくんに薬草達を呼び込ませて行った。

 アクセルの前のパソコンにブルーフラワー100、ルナ草200、ルーン草100と表示され、金額が提示された。銀貨40枚だ。


 銀貨40枚は4,000ロム、現代価値で12万円だ。

 これを5人で分けるので1人800ロムだ。

 800ロムあれば1泊2食付の宿に4日泊まれた。


 翌日からまたダンジョンに出かけ、2日後にはまた1人800ロムを手にした。

 この稼ぎが多いのか、少ないのか? アルフレッド達には分らなかった。

 貴族の子弟なので、この歳までお金を直接使った事が無かったからだ。



 ロベリン村のハニ エイジンガー達は稼いだ金を見て驚いた。

 ロベリン村では、時々祭りが催された。特に収穫祭には市が立ち、色々な店が並んだ。

 この時は親から金を貰って市で買い物をしていたのだ。

 貰える金は銅貨だ。

 普通の家の子供は1銅貨、10ロムだ。現代価値で300円。それでも楽しく遊べた。

 今回買い取りカウンターで言われた金額は銀貨40枚?あまりの金額で全員固まったが、その後「やったーーーっ」と叫んだ。


 やっぱりここに来てよかったと神ムーン シルバー様に感謝のお祈りを捧げた。



 テオ、リベリアのチームは次のリポップまで1階層で野営をしながら、薬草採取をした。

 夜の採取チームを2人、昼間の採取チーム3人に分けて薬草採取に励んだ。

 そして探索した地域を地図にして効率を上げた。そうすると薬草の群生地を見つけたのだ。

 特にルナ草の群生地を見つけたのは大きく働いた。

 また、いくつかの洞窟も見つけ、光苔、ベニテング茸も採取出来た。ブルーフラワー400本、ルナ草1,200本、ルーン草400本、光苔200本、ベニテングタケ200個を採取した。


 ゴールドから貰った背負い袋を全員2つづつ持って帰って来た。

 買取金額は銀貨240枚だ。2万4,000ロム、1人4,800ロムだ。

 テオ以外は傭兵だ。この金額に驚きと喜びを感じた。


 自分の将来、未来が明るいように思えて来た。転職を考えて良かったと思った。

 未来が明るいと皆の顔も笑顔になり、運もついて来るみたいだった。

 最初の冒険者の訓練期間は1年間、この間に仕事をしながら、勉強と訓練をしてゴールドの定めた10単位を獲得するのだ。


 1年後には皆卒業となる。卒業後は、このまま冒険者ギルトで働いてもいいし、違う仕事についてもいい。

 10単位獲得出来なかった者でも、ダンジョンアタックは禁止されたが、他の仕事は受けられた。

 最初ゴールドはポーションの材料集めだけが冒険者ギルドの仕事とするつもりだった。

 しかし冒険者ギルドでも、護衛の仕事を請けて欲しいとリーガンとロドリゲスに頼まれたのだ。

 この時の傭兵の主な仕事は商人や人々の旅の護衛だった。


 このユグドラシルの世界では、力のない人族は魔物の餌になりやすい。

 少し品格や素行が悪くても力が強ければ、傭兵としてやっていけるのだ。ゴールドがロベリン村でであったラオール達3人も、このような存在だった。


 高位の傭兵11人が一挙に抜けたので、特に商人組合からリーガンに嘆願書が出された。


「護衛をしてもらえないでしょうか?でないとロマ砦への武器や食料の届出が出来ません。」


 この解決策としてお願いされたのだ。

 引き抜きのような格好になっていたのだった。

 ゴールドはダンジョンアタック出来ないラオール達にこの依頼を振った。


 当然請けなければ冒険者学校は落第だと言った。

 ラオール達も酒代が欲しいので、この依頼を受けた。


 後残ったのはアナリーゼを含めて女性3人と男性1人だ。

 ゴールドはシンフォニーにこのパーティーの仲間になってもらえないかとお願いをしてみた。


「ゴールドの頼みなら、いいわよ。何をするの?」

「いや、何もしなくていいよ。」

「何もしなくていいの?」

「あっ、もし他の4人が危なくなったら助けて貰えるかな?」

「いいわよ。」

「あの勇者様。」

「何でしょうか、アナリーゼ。」


「そんな幼女をダンジョンアタックさせて大丈夫でしょうか?

 それに今の話では、私達が危なくなったら助けてやるとか言ってましたよね。」


「シンフォニーは私とユリアの子供ですよ。」

「えっ、師匠のお子供さまですか。」

「そうです。師匠の言葉は貴女にとって絶対でしょう。」

「はい、ユリア師匠の言葉は絶対です。」


「ではシンフォニーの言葉も貴女にとって絶対です。

 もしシンフォニーが貴女達に何か言ったら、絶対従わなければいけませんよ。

 他の3人はアナリーゼが従わせなさい。分りましたか!!」


「はい、分りました。」

 ゴールドはシンフォニーに自分の異空間収納袋を渡した。




 ゴールドは、この研修期間の1年間は食事と宿は無料で提供した。

 宿はベッドと机が1つあるだけの小部屋だ。

 全員、ここで寝起きする事になる。部屋の掃除は自分達でする事。


 食事は寮の食堂で食べられた。

 問題が起きたのは、この寮の食堂だ。

 寮の食堂とギルド併設の食堂はチェスター、クックが支配人で、人を雇って運営された。


 ローム王国一の料理人が作る料理なのだ。

 皆美味しく食べた。

 それでベラドンナの兵士まで食べに来るようになった。

 ロベリアの兵士も非番の時は、この食堂を利用しだした。


 それで、いつも満員の状況になり寮の方の食堂まで、手が回らなくなってきた。

 協議の結果、他の料理人を雇う事になり、当面ゴールドがこの寮の食堂を受け持つ事になった。

 喜んだのはユリア姫達だ。

 またゴールドの料理が食べられるとご機嫌になった。


 ゴールドが作ったのはカレーライスだ。100人分ぐらいを作った。

 下準備に見習い料理人を雇ったが、味付けは自分でした。

 生徒達は皆、喜んだ。

 しかし1週間もするとカレーばかりでは飽きが来た。


 どんなに美味しい料理でも、そればかりでは無理な話だ。

 また、ゴールドには講義もあった。

 最初は講義のない時だけ寮の料理を作っていた。しかしチェスター、クックがとても忙しくなり手が回らなくなった。

 ゴールドは前世の知識からコックさんを作る事にした。


 レシピはチェスター、クックの料理を登録した。このユグドラシルの王宮料理だ。

 コックさんは前世の一流料理人の腕を持つ。

 チェスター、クックの味と劣らない料理が寮の食堂で食べられるようになった。


 その日に出される定食は無料で生徒達は食べられた。

 村出身の冒険者はあまりの美味しさに涙を流した。




 ユリア姫がゴールドにお願いした。

「私アイスクリームとクレープが食べたいわ。」


 それでコックさんに本来の機能を付け加えた。

 そしてレパートリーも和風、中華、フレンチ、イタリアン、メキシカン、何でも出来るようにした。

 厨房も改造して、メインコンピューター、キウィに接続して、厨房にロボットアーム100本を持ったコックさんが出来上がった。

 生徒達はコックさんが作る、その日の定食は無料で食べられた。


 ゴールドは食券販売機を作って、定食以外は普通は食べられないようにした。

 値段を高額に設定したのだ。

 定食ならあまり手間は掛からなかったのだが、あれやこれや作っていたら、手間ばかりかかり、材料の調達も手間がかかり、100名分は難しいとゴールドが判断した為だ。


 生徒達は見た事も聞いた事もない料理だった事と値段が高額だった事もあって、誰もお金を出してまで食べなかった。

 定食が美味しかった事も理由の一つだ。


 しかしユリアとアリス、サンターナが白い冷たい食べ物とくるくる巻いたパンみたいなものを食べていた時の事だ。

 料金はどちらも1,000ロム、現代価値で3万円、二つで6万円だ。

 高額な食べ物だったので、まだ誰も食べた事はなかった。


 この時、3人の会話を聞いた者がいた。アナリーゼだ。

 アナリーゼは時間があればユリアの側に待機していた。

 いつ、どこで、訓練を受けられるか分らなかった為だ。

 ユリアはふっと思いたったようにアナリーゼに剣の訓練をした。

 寝る前とか、水浴びとか、授業の終わった後とかだ。

 上着を全て脱がせ、剣を構えさせ、アダマンタイトのナイフをすっ、すっと振るった。


 アナリーゼの皮膚を皮1枚で切り裂いた。

 アナリーゼは剣で受けようとしたが、あまりの速さで何も出来ずに切られたのだ。

 アナリーゼは気付いていなかったが、最初感じた恐怖を今は感じなくなっていた。

 ある時偶然、剣で受けれた時があった。

「キンッ」と音がして、自分の鉄剣が切られて落ちた。

 ナイフに剣が簡単に切られたのだ。


 しかしアナリーゼは実感していた。自分は強くなっていると。

 それは授業で生徒同士の試合形式の授業があった時だ。

 今まで、互角だった相手に簡単に勝てたのだ。

「えっ」と自分で思ってしまった。

 切られてばかりの修練なのにだ。


 それでアナリーゼはユリアを剣の神様だと思うようになった。

 ユリアは普段、アナリーゼに対して姫が侍女にたいするように振舞った。

 本物のお姫さまなので違和感などまるでなかった。


 ユリア

「やっぱりアイスクリームとクレープは美味しいわね。」


 アリス

「そうね、後炭酸入りラモンジュースがあれば最高だわ。」


 サンターナ

「ふふふっ、こんな日がくるなんて、夢のようですわ。」


 アナリーゼ

「ユリア様、今食べておられるのは、クレープと言う食べ物ですか?」


「そうですよ、これがクレープです。」

「もしかして、アドリアナ姫の5つの願いに出て来るクレープでしょうか?」


 ユリアは自分が食べたくて言った言葉だったので、ちょっと戸惑ったが「はい、そうですよ」と答えた。

「おーーっ、これがあの吟遊詩人達が歌っている幻のクレープですか!!!私も食べてよろしいですか?」

「1,000デジタルロム持っていますか?」

「1,000デジタルロム!!!いえ、今は持っていません。」


 アナリーゼはダンジョンにこの時はまだ入っていなかった。

 ラオール達を嫌っていたので稼ぎがなかったのだ。


「貴女は私の弟子、師匠だけ食べて、弟子に食べさせないのではいけませんね。私のステイタスカードを使いなさい。」

「いいのですか?」

「師匠の言葉は絶対ですよ。」

「ありがとうございます。」


 アナリーゼは食券販売機にユリア姫のステイタスカードをかざした。

 100万デジタルロム!!!驚愕の金額が表示された。

 とりあえずクレープ1,000ロムのボタンを押した。

 クレープの食券が出て来た。待つ事5分。


 クレープが厨房カウンターの前を流れて来た。

 それを取って、ユリア姫の横に並んで食べ出した。

「うおーーっ、美味しいです。」

 涙が頬を伝わって落ちて行くのを感じた。

 この噂は直ぐに広まった。特に女性は1,000デジタルロム支払っても食べた。


 アドリアナ姫の5つの願いは吟遊詩人が歌ったのでロベリン村のハニ達でさえ知っていた。

 アンリ王子も知る事となり、カトリーナ、ロゼッタと2人で食べに来た。

 リーガンと妻のユニス、ロベリア。

 ロドリゲスと妻のアレサ、カッターレ30歳も2人で食べに来た。


 しかしこの食券販売機はデジタルロムでなければ買えないものだ。

 それでアンリとリーガン、ロドリゲスはゴールドにお願いした。

 横に許婚と妻達がいるのだ。ゴールドは女性に弱い。

「今回だけですよ。」3人のスイテタスカードを作って、10万デジタルロムをプレゼントした。


「ありがとうございます。」6人は満足して帰って行った。

 これを聞いた兵士がリーガンにお願いした。


「私達は今までダンジョンに入って、薬草採取をして来ました。

 今後もダンジョンに入って、勇者さまの為に働きます。

 それでステイタスカードを自分達も作って頂けないでしょうか?」


 リーガンもこの兵士の言葉は無視出来なかった。

 言っている事が正しいし、これを無視すれば士気に関わって来ると感じたのだ。

 これからも頑張って貰うには必要な事だと思った。

 それで勇者様にお願いした。

 ゴールドもお世話になっているリーガンの願いだ。

 アーノルドの部下でもある。

 ゴールドはダンジョンアタックしてくれた兵士に限り、ステイタスカードを発行する事にした。


 ここまで来ると、この噂は兵士達からローム王国中に伝わって行った。人々が寮に押し寄せて来た。

 ゴールドは寮の門に鍵をかけて、一般人を閉め出した。これで一旦収束した。

 しかし次の年の冒険者募集定員100名に対して、1万人ぐらいが応募したのだった。

 これをきっかけとして、デジタルロムは徐々に広がりを見せて行った。




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