冒険者学校
翌日になり、冒険者学校の講義が始まった。
Aクラスをゴールドが講義した。
Bクラス、Cクラス、Dクラスをユリア、アリス、サンターナが講義した。
クラス分けは適当だ。ただ適当に振り分けただけだ。
たまたまAクラスにラオール達がいた。
ゴールドの最初の講義は小テストから始まった。
簡単な文字の読み方と書き方のテストだ。
Aクラスの人数は33名。
流石にロベリアの騎士の子供達は全員正解した。
村から来た子供達でも殆どの子供達は読み書きが出来た。
読み書きが出来た生徒にはゴールドが書いた地図を渡した。
これで地理の勉強をさせたのだった。
しかしこの地図を見た全員が驚いた。
ローム王国の地図でさえ、見た者は殆どいなかったのだ。
隣の国、ビクトリア王国とナトリア王国の名前ぐらいは知ってはいた。
しかし地図など見た事もなかった。
それにゴールドの書いた地図は上空から見た地図なのだ。
もっとも驚いたのは南大陸が画かれていて、幻の大陸、アトランティス、獣人国、妖精国まで画かれていた事だ。
これを全て覚えるように言ったのだった。
地理はこのテストに満点を取れば1ポイント獲得出来た。
2ポイント目はステイタスカードにその地図の場所を言えば、説明文が音声で流れた。
この国の現状、歴史、今後の問題点などなど。
このテストに合格すれば2ポイント目が貰え、さらに文官への道が開けていた。
読み書きが出来なかった子供達には読み書きの授業をさせた。
ステイタスカードに簡単な読み書きアプリが入っていて、それを見ながら問題を解いていく授業だ。
これを見た他の生徒もこのアプリを使ったテストに挑戦した。
このアプリには5段階でレベルがあり、最高点を取るとデジタルロムが貰える事になっていた。
しかし普通にレベル3が最高点だった。
翌日ゴールドはBクラスを受け持った。
昨日と同じ講義をした。
ユリアは剣術を担当した。
ゴールドから身体の一部を切断する事は禁止と言われていた。
それで素振りから始めた。
素振りが終われば走りこみをさせた。
走りこみばかりさせられたベテランの1人がクレームを言って来た。
この女性はアナリーゼ、ニストロム24歳、レベル24、剣術Lv3ソロの傭兵だ。
アナリーゼが冒険者になりたい理由はナイキと同じ強さを求めた為だ。
走りこみをする為ではない。
アナリーゼは伸び悩んでいた。
どうすれば強くなれるのか?
悩んでいた所に冒険者募集の紙を見つけたのだ。
そして募集しているのが勇者だと知ってここにいる。
「教官、私は剣の稽古がしたいです。剣の稽古をつけてくれませんか?」
アナリーゼはユリアをただのギルドの職員だと勘違いした。
自分より如何見ても歳下なのだ。
「私はゴールドから生徒を斬るのを止められています。貴女の要望には応えて上げられません。」
「おや、そう言って逃げるのですか?」
「ふふふ、いいでしょう。
剣の稽古をつけてあげます。
斬り飛ばさなければいいのです。
薄く斬るくらいはいいでしょう。」
「私を斬るだと!!斬れるものなら斬ってみな」
アナリーゼは鉄剣を抜いた。
流石に初対面なので中段に構えた。
周りにいた生徒達が集まって来た。
ユリアはゆっくりと来国長⊕を抜いた。
抜いた瞬間にアナリーゼは大きく後に下がった。
周りにいた初心者達はその場に蹲り失神した。
アナリーゼは見た?いや感じた。
これまで戦って来た、どんな魔物よりも凄い魔物が目の前にいると。
ユリアはゆっくりと前に進んだ。
アナリーゼは足が動かなくなった。恐怖で身体が動かないのだ。
「来るな、バケモノ。来るなーーーっ。」
目の前を何かが通り過ぎた。
その時アナリーゼは恐怖から失禁した。
しかし意識は辛うじて残っていた。
残った意識から胸からお腹にかけて痛みが沸き起こって来た。
段々痛みは酷くなり、耐えられなくなった。
声を出して蹲った。
お腹を見たら、服が裂け、下着も裂けて真っ赤な血が滲み出ていた。
血を見たら、猛烈に痛み出した。
死の恐怖と痛みで大声で泣いていた。
ふと気配を感じて上を見たらバケモノがいた。
「殺さないでくだちゃい。お願いちまちゅ。」
アナリーゼはあまりの怖さに、地面にお腹を抱えて、座ったまま頭をつけた。
まるで切腹した後のようだとゴールドが見たら思っただろう。
上から光が降って来たように感じた。
その瞬間に痛みは治まり、恐怖も去っていた。
上を見ればユリア教官が困ったような顔をしていた。
「大丈夫?」
「今のは幻?痛みはありまちぇん!!」
「そう、立てる?」
アナリーゼは立ち上がった。そして気付いた。
革鎧が二つに切られ、ズボンも斬られている事を。
乳房があらわになっている。急いで前を押さえた。
ユリア教官は、ローブを渡して来た。
そのローブを上から羽織って改めてお腹を見た。下着や鎧には血がべったりついているが、お腹はなんとも無かった。
アナリーゼはユリア教官から斬られたのは確かだと思った。
そして何かの方法で治して貰ったのだと思った。
そうして見ると、先ほどのバケモノは既に居なくなり、女神のような笑顔が、そこにはあるだけだった。
アナリーゼは周りを見回した。周りには何十人と人が失禁して、蹲ったまま意識を無くしている光景が目に飛び込んで来た。
先ほど見て感じた事は現実だったと思った。
そうしてユリア教官を見ると、自分の求めていた姿がそこにある事に気付いた。
アナリーゼはローブで前を隠す事も忘れて、ユリア姫の前に土下座した。
「ユリア様、私を貴女様の弟子にして下さい。」
「貴女は既に私の生徒ですよ。」
「いえ、生徒ではなく、弟子にしてください。」
「貴女は弟子が如何いうものか分っているのですか?」
「はい、いつもユリア様のお側にいて、ユリア様の身の回りのお世話をして、ユリア様の命令を全て受け入れる者の事です。」
「貴女は奴隷の事を言っているのですか?」
アナリーゼは少し考えて、「はい、そうです」と答えた。
「弟子とは、そんな者ではありませんよ。
弟子は身も心も師匠に捧げなければなりません。
そして師匠の言葉は貴女にとって絶対の物です。」
アナリーゼには、弟子とは奴隷より酷い扱いではないかと思えた。
しかし、今を逃しては自分の未来はないように思えた。
「弟子にして下さい。」
「分りました。貴女は今から私の弟子です。では立って剣を構えなさい。」
「えっ、このまま立って剣を構えるのですか!!! 」
アナリーゼは、このまま立って剣を構えれば、乳房は丸見え、ズボンもずり落ちてパンティも見えてしまうと思って躊躇した。
「師匠の言葉は絶対です。2度目はありません。その時は師弟の絆は永遠に切れるでしょう。」
アナリーゼは立って剣を構えた。
胸は丸見え、ズボンもずり落ちて恥ずかしい格好になったが、剣をユリアに向けて構えた。
「どんな事がおきても、目を開けていなさい。」
ユリアは来国長⊕を抜いた。また、先ほどの恐怖が襲って来たが、身体も心も捧げると誓ったのだ。
その心が気持ちを強くした。剣が目の前を通り過ぎたように感じた。
その瞬間に自分の鉄剣が中ほどから切られ、ポトリッと地面に落ちて行くのが見えた。
それから剣がすーっ、すーっと目の前を通ったように感じた。
その度毎に服が裂けて行った。永遠に続く恐怖と痛みの中、アナリーゼは立ち尽くした。
回りの生徒の意識が戻り始めた時、師匠から声がかかった。
「今日はこれまでにしましょう。」
「今日は!!!! 」
アナリーゼは逃げ出したくなったが、心の中の何かが引き止めた。
それからローブを着込み自分の部屋へ戻ったのだった。
アリスは弓を教えた。
最初誰もが、今更弓などと思った。
このユグドラシルの世界では、弓は誰もが扱う道具なのだ。
農民でも弓は子供の時から自然に扱うものだ。
それでなければ、うさぎなどの小動物を獲る事は出来ない。
うさぎや小鳥は大切な食料なのだ。子供達は集団で弓を持って狩をする。
小川で魚を捕ったり、森で小動物を獲って食べるのだ。集団にはリーダーがいて、小さな子供達と遊びながら狩の仕方を教えて行く。
12歳になると、このリーダー達は大人の集団へと組み込まれて行く事になる。
ここに来ている者達は12歳以上の者達だ。
弓術はレベル1から2に達している。上手な者はレベル3になっている者もいた。
この訓練場はギルドの前の森を切り開いただけの広場だ。
第1から第5練習場まである。
1つの広さは100m四方ぐらいだ。
アリスは弓を構えた。的は20mぐらいにいてある。
何気に矢を放った。矢は的の真中を射抜いていた。
大体これくらいの腕でレベル3ぐらいだ。
殆どの生徒が「おおーーっ」と賞賛の声を上げたが、2~3人の生徒はフンッとした顔をした。
ベテランの傭兵達だ。ベテランの傭兵達は弓術Lv4だ。
弓術レベル4は50m先の的に当てる事が出来る腕を持っているのだ。
アリスは次、的を50m先に移動させた。今回も何気に矢を放った。
「トンッ」と小さな音がした。
皆「おーーっ」と声をあげた。矢が的に当たったからだ。
そして的が手元に持って来られた。矢は的の真中に当たっていた。
次アリスは100m先に的を置いた。流石に今度は、誰も当たらないと思った。
ベテランでも100m、矢を飛ばすには弧を描いて撃たなければ飛ばない。
それに100m先の的を射抜くにはレベル5はないと無理だ。
達人の技なのだ。
ここにいるベテラン傭兵達でも無理な相談なのだ。
今回もアリスは何気に矢を放った。
ベテラン達は「クスッ」と笑った。矢を真っ直ぐ射たからだ。
良く飛んでも70mぐらいで地面に落ちると思ったからだ。
しかし矢はそのまま飛んで、100m先の的に当たった。
今度は「おおーーっ」と感嘆の声が上がった。
あの細い身体の何処に、あんな力があるのか?そう思って感嘆の声を上げたのだった。
的が持って来られ、また的の真中に矢が当たっているのを確認すると、皆少し恐怖を覚えた。
自分の知らない事を見せられると、驚きを通り越して、恐怖を覚えるものらしい。
最後にアリスは空に向かって矢を放った。矢は空の彼方に消えて行った。
皆、細い身体なのに凄い力持ちだと改めて思った。
そしてアリスを見ると、まだ空を見上げていた。
ずっとずっと見上げたままだ。
それで全員空を見上げ続けた。
3分ぐらいして何か落ちて来た。2mもある大鷲だった。
大鷲の胸にはアリスの矢が深々と刺さっていた。
ありえない!!!絶対ありえないと皆思った。
アリス教官が言った。
「皆には、これを全てマスターして貰います。」
全員「えーーーっ」と声を上げた。
サンターナは魔法を教えた。
4属性魔法だ。サンターナの4属性魔法はレベル1だ。
Mp10を生徒1人、1人に流し込んで行った。
始めに流し込んだのは風魔法Lv1ウインドの魔力だ。
15人の生徒の後ろに15人の生徒を立たせ、意識を無くしたら、その場に寝かせるように言った。
全員意識を無くして眠りについた。
夕方になっても、意識が戻らなかったので、サンターナはパーフェクトヒールをかけてみた。
ゴールド様からアンリ王子の修行の時、パーフェクトヒールをかけたら早く意識が戻ったと聞いていたからだ。
本当に30分ぐらいしたら、意識が戻ったのだった。
生徒達は、この後驚く事になる。寝る前の事だ。
寝る前には、身体を拭いたり、洗ったりして、清潔にして眠るようにゴールドから言い渡されていた。
特に傭兵のベテランは水浴びを嫌った。
男性はいざと言う時の癖がついていたからだが、女性は今まで戦って出来た傷跡を見られたくなかったのだ。
しかし、ある日、ゴールドから指摘が入った。
「臭い、体を洗ってきなさい。」
その時から、毎日、汗をかいたら水浴びをし、寝る前には水浴びか、身体を拭いて眠るように言われたのだった。
ゴールド的には、生徒達の体臭が臭った事もあるのだが、集団で生活するのだ。
病にかからない為には、清潔にしておく事が1番だと前世の知識から言った事だった。
それで全員が、寝る前に自分の身体を見たのだ。
特にベテラン達は驚いた。
傷が無くなっていたのだ。
男達は何故?と思っただけだったが、女性達は嬉しさのあまり涙を流した。
それに不規則な傭兵生活だった為、肌も荒れていた。
肌まで、しっとり潤った肌になっていた。
傭兵の女性は皆美人だ。締まった身体をしているので、荒れた肌や傷が無ければ、素敵な女性なのだ。
この日から、傭兵の女性達は可愛い服や大胆な服を訓練でない時は着るようになった。
傭兵の男達は「うおーーっ」と声を上げた。
新人の少年達も顔を赤らめて、見つめていたほどだった。
この事は、瞬く間に他のクラスや女性達に広まって行った。
サンターナ講師の魔法訓練は、女性も男性も憧れの的となった。
1週間の冒険者学校の授業が終わると、翌週からはお仕事だ。
あくまでもダンジョンアタックは仕事だとゴールドは念を押した。
お前達の生活費を稼ぐのが第1で、魔物と戦うのは第2だと言って聞かせた。
例えば、ヒールポーションの材料はブルーフラワーとルナ草だ。きれいな水は、ここロームでは朝早く湖で汲めば、何処でも手に入った。
ブルーフラワーとルナ草が無ければ作れない。この2つの薬草が必要なのだ。
この2つをヒールポーションの販売価格、銀貨2枚、200ロム。
現代価値で6,000円の十分の一の買取価格に設定した。20ロムだ。
どんな新人でも10組は集めるだろうとゴールドが考えたからだ。
ゴールドの前世の記憶では材料費が3割、人件費が4割、利益が3割だったと記憶していた。
これなら、仕事として成り立つ。
また200ロムは、宿1泊2食付の価値だ。新人冒険者が頑張れば、200ロム稼げて生活出来るようにした。
ダンジョンでは、魔物と戦って勝つことより、負けないこと事が第1だと何度も何度も言い聞かせた。




