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ロカ、ニルンルート  作者: 明広
17/38

エルフの奴隷

 フランシスの右腕に○の中に三角形が二つ、星型の文様が浮かび上がった。

「よし、成功だ。今からお前は私の奴隷だ。もし、私に逆らったり、反抗したりすれば、その魔法陣が発動して、お前の身体を炎が焼き尽くすだろう。」


 ゴールドはフランシスの指に刺さったナイフを全て抜取り、フランシスの戒めを解いた。

 そしてナイフを1本机の上に置いた。


「そのナイフで私を殺してみろ。」

「えっ。」

「私が憎いだろう。」

 フランシスは自分の右腕の文様とゴールドを交互に見た。

 先ほどのゴールドの言葉は本当だろうか?と思ったのだ。

 焼き尽くす?

 しかし、このままでは自分はウィリアム、キッドに殺される。


 フランシスはナイフに手を出した。

 その瞬間、右腕が火傷をしたような痛みに襲われた。

 ポトリッとナイフを落した。


「如何した?私を殺さないのか?

 お前は口を割ったのだ。仲間を売った裏切り者だ。

 これがウィリアム、キッドに知られれば、殺されるだろう。」


 フランシスはもう一度、床に落ちたナイフを拾おうとした。

 その瞬間、また右腕が焼けるような痛みを感じた。

 フランシスはゴールドを見た。

 その目は恐怖に怯え、涙に濡れていた。


「もしお前が、私の奴隷を望むのなら命だけは助けてやろう。」

「本当ですか?」

「本当か、どうかはお前の心がけしだいだ。お前に家族はいるのか?」

「妻と2人の子供がいます。」

「愛しているか?」

「はい、愛しています。」


「よし、ウィリアム、キッドが帰って来たら、この指輪で私に知らせよ。

 お前が、この指輪に向かって神の使徒と唱えれば、私はお前の前に現れるだろう。


 ゴールドはうす青色の光の粒を発しだした。

 フランシスは、これを見て神の使徒の意味を悟った。

 自然とゴールドの前に跪き、お祈りを捧げ出した。




 フランシスは家に帰って来た。

 妻には何知らぬ顔で商売は上手く行ったとだけ伝えた。

 フランシスの妻の名前はサティア、ロゴス28歳だ。

 サティアはフランシスのようすがおかしい事に気付いた。何か心配事があるように感じたのだ。


 そしてベットに入る時、フランシスの右腕に痣がある事に気付いた。

「あなた、その痣は如何したのですか?」


 フランシスはサティアに全てを話した。

 神の事で嘘を言えば、命が無いと思ったのだ。

 フランシスは自分の生い立ちから話しだした。

 自分はロベリハ村の農家の出身だ。小さい時から水鳥を弓で獲るのが上手かった。

 ロベリハ村には回りにロベリハ湖、ロベリタ湖、ロベリカ湖があり、水鳥が沢山いたのだった。


 しかし15歳の時、もっと違った仕事がしたくて、ロベリア領都に出て来た。

 そこで赤髭船長と出会った。今から23年前の事だった。

 赤髭船長の船に乗せてもらい海へ出た。

 最初の頃は海賊と言っても命がけだった。まだ船1隻の小さな海賊だったからだ。

 死に掛けた事も多々あった。それでも弓の腕を買われて、メキメキと仲間内での地位が上がって、兄貴と呼ばれるようになって行った。


 10年後、ある事件が起きた。

 赤髭海賊団は大きくなり、5隻の船団になっていた。


 そんな時、目の前で1人の少女が切り殺された。

 その時、助けてと自分に言ったのだった。

 また殆ど無抵抗な村を襲った時、10歳ぐらいの男の子が目の前で殺された。


 この時、神の声が聞えた。

「お前は、このままだと身を滅ぼす。海賊を辞めよ。」


 えっと周りを見渡した。

 それから1週間後に赤髭船長に「海賊を辞めさせて貰えませんか」と直訴した。

「何、うちの団を辞めるだと。そんな事が出来ると思っているのか!!!!」

「俺にはこれ以上無抵抗の者を殺す事が出来ません。」

「なんだと!!!」

 ぼっこぼっこに顔が腫れ上がるまで殴られた。

「どうだ、これでもまだ家を抜けるのか!!!」

「はい、ぬけちゃちぇてくだちゃい。」

「そうか、これでもまだ抜けたいのか!!!それなら両腕を置いていけ。こいつを押さえつけろ。」

「兄貴、ちょっと待ってくれ。」

「なんだ、ハイレッディン。」

「俺達ももう若くない。ここらで一旗上げようと思っていたんだ。」

「一旗上げる?」


「そうだ兄貴。

 領都に店を構え、俺らが手に入れたお宝や奴隷を、そこで捌くのさ。

 そうすれば資金が手に入る。

 その資金でエスニアの内乱に付け込んで、領都を奪うのさ。」


「そんな事が出来るのか?」

「ああ、任せてくれ。それには何となく商人ぽい人材が必要だ。」


 ハイレッディンはフランシスをじろりと見た。

「よし、やってみるか。」


 こうしてフランシスは海賊一味を抜けられなかったが、無抵抗の者を殺さずにすむことになった。

 赤髭船長から資金100万ロムを貰い、ローム王都に店を構えた。

 しかし信用が全く無く、店は赤字が続いた。


 この時、また神から声が届いた。

「噴水の所で金に困った貴族が座っている。助けてあげなさい。」


 さっそく噴水の所に行くと、貧乏そうな貴族がしょんぼりと座っていた。

 話を聞くと自分はタイモン、ロゴス38歳、ロゴス領の東側、ウラル山脈の山沿いの村の村長をしているとの事だった。

 この度の魔物の襲撃で村民と王都に避難していたが、魔物がいなくなったので復興の為、村へ帰った。

 しかし村に戻って見て、村は壊滅状態、復興資金がなければ全く先行きが見えなかった。それで王都に出て来て、資金調達に奔走したが、目処が立たず、途方に暮れて、この噴水の前で座り込んでいたと語った。


 フランシスとタイモンは食料や復興する為の資材や道具を持って、タイモンの村に来た。

 そこでフランシスは一目惚れをした。

 タイモンの娘、サティア、ロゴス18歳にだ。

 サティアは髪の色は水色、瞳の色も水色で身長は165cmぐらい、森と泉の妖精のような美人だった。

 フランシスはタイモンに言った。

「娘さんと結婚させて下さい。さすれば、これからも一生懸命復興のお手伝いをします。」

 流石にタイモンは一旦断った。

「娘の意見を聞いてから、ご返事します」と言った。


 フランシスは駄目かと諦めた。自分は海賊だと言う後ろめたさがそう思わせた。

 翌日になってタイモンは承諾の返事をした。

「えーーっ、結婚させてもらえるのですか!!!!!」


 こうしてフランシスはサティアを連れて王都に戻って来た。

 その夜、初夜を迎えた。

 サティアは目を閉じて、シーツをジッと掴んで行為が終わるのを待っていた。

 フランシスは一言も口を聞かないサティアは自分を嫌っていると思った。

 シーツには赤い染みがついていた。


 しかしそれから2ヵ月後、フランシスは重い病に罹った。

 サティアは懸命に看病してくれた。

 それで聞いてみた。

「サティア。」

「何ですか。」

「あの、そのー、私を嫌っているのではないのか?」

「何言っているのです、バカな事を。病気で気が小さくなっているのですよ。」


 そして、これまで王都で自分がしてきた事。

 本日、勇者様に出会って、この文様を付けられた事を正直に話したのだった。


「そう、辛かったでしょう。あなたが何かに苦しんでいたのは知っていたのよ。」

「こんな俺を許してくれるのか?」

「何言っているのよ、夫婦でしょう。しかし、その文様、勇者さまに付けられたの?」

「あー、今ならはっきり分るよ。うす青色の光りの粒を発しておられたから。」

「そう、それなら、その紋は勇者の紋ね。」

「勇者の紋?」

「そう、かっこいいわよ。それに何かご利益がありそうだわ。」




 この夜、フランシスはサティアを抱いた。

 今までの心のつかえが取れ、側にサティアがいるだけで幸せを感じた。

 サティアの水色の髪が、今まで以上に神秘的に見えた。


 サティアは薄いネグリジェを着ていた。

 サティアは28歳だ。すらっとした手足と程よく肉のついた腰、そして石鹸の匂いがした。




 翌朝になり、サティアはフランシスの寝顔に向かってそっとささやいた。

 あれからあなたがずっと父に援助しているのを知っているのよ。

 あなたの愛情はずっと感じていたわ。

「愛しているわ、フランシス。」




 それから1ヵ月後にウィリアム、キッドが帰って来た。

「フランシス、エルフの奴隷は売れたか?」

「はい、100万ロムで売れました。これが売れた代金です。」



「100万ロムか、まあいいだろう。

 これで装備を整えて、もう一度エルフの村の捜索をしよう。

 場所は分ったのだが、何か結界があって村の中に入れなかったのだ。

 今度こそ、あの結界を破って村の中に入るぞ。

 装備のリストを渡しておく。準備をしろ。」



「はい、畏まりました。」

 フランシスはゴールド達の隠れ家の邸に来て、指輪に神の使徒と唱えた。

 直ぐゴールドとアリス、ユリアにサンターナ、ライオス、アデリナ、ナイキ、ロカ、アンリ王子、ナウマンが現れた。


 ゴールドはアリスと2人で、この問題を処理するつもりだった。

 しかしユリアがエルフの少女を見て、自分も一緒について行くと言い出した。

 見た目10歳ぐらいの少女が奴隷の首輪を付けられ、売られようとしていたのだ。


「海賊は許しません」と怒りを言葉にした。

 ゴールドには、何も言えなかった。

 そこにいたアデリナも自分と同じくらいの少女に同情して、ライオスと一緒に行くと言い出した。

 相手は海賊だ。それも100人ぐらいいるのだ。

 ライオスは危ないと思ったが、アデリナの手前、いやとは言えなかった。

 気持ちだけで戦える相手ではないのだ。


 しかしこうなるとアンリ王子にも報告しなくてはならないと思った。

 そもそもベラドンナ城塞都市の役割は、村人を海賊から守る事が第一の役割なのだ。


 こうなるとアデル王にも知らせておかなくてはならない。

 それで王宮からも兵士が1,000人動員されて、港の周りを固めたのだ。

 1人たりとも逃がさない為だ。



「アンリ、これは本来ベラドンナ領主になる、お前の仕事だ。

 国民を守るのだ。

 先陣をロカ、ナイキ、ライオスと務めよ。

 海賊は全員生かしておく必要はない。切り捨てよ。」



 ゴールドは海賊船の看板の上にワープで飛んだ。

 甲板の上には、30人ぐいの海賊達が見張りをしていた。

 手には武器を持っている。

 ゴールド達に気付いた海賊の1人が叫んだ。

「敵襲だーーーーっ。」


 その時、アンリ王子がウインドストームを放った。

 風の刃の嵐が海賊達を襲った。

 20人ぐらいの海賊が風の刃に切り刻まれて倒れてた。

 アンリ王子のウインドストームの威力は凄まじく、直撃すれば海賊達の腕、足を切り飛ばした。


 残りの海賊達は、ライオス、アデリナ、ナイキ、ロカがウインドカッターで倒した。

 ライオス達のウインドカッターは確実に海賊の咽喉を切り裂いた。

 それに魔力操作により、1人を倒したウインドカッターは2人目を倒すべく大きく曲がって行き、自由自在に左右、前後から海賊達を襲った。


 ゴールド達には、風の刃が自由自在に飛び交っているのが見えるのだけど、海賊達には見えなかった。

 突然、仲間が血を吹いて倒されるのだ。

 最後の3人は川に飛び込んで逃げた。

 川には王家の船がぎっしりと埋め尽くし、川岸にも兵士が立ち並んでいる。

 1人も逃さない作戦なのだ。



 今まで、ローム王国の民を攫っていた海賊と分った時から、兵士達の士気も高かった。

 船の中から、海賊達がわらわらと出てきた。

 アンリ王子とロカ、ナイキが斬鉄剣改を抜いて前に出た。

 その後からライオスが槍で牽制した。

 怯んだ所をアデリナがウインドアローを敵の眉間に放った。

 至近距離から放たれたウインドアローは、深々と敵の眉間に刺さった。

 ナウマンも、この列に加わった。

 アンリ達は海賊の湾刀ごと切り倒した。



 もう一つの出入り口からも海賊達が現れたが、こちらはサンターナとアリスが対処した。

 サンターナ達は海賊を一刀両断した。

 海賊達の首が飛び、身体がズリッと二つに分かれて死んで行った。


 アンリ達の方から、ウィリアム、キッドが出てきた。

 がっちりした大男だ。

 2本のカットラスを軽々と振り回してアンリに攻撃して来た。

 これにはアンリ達も防戦一方になった。

 左右からロカとナイキが攻撃したが、2本のカットラスが4本も5本もあるように振り回して攻撃して来た。


 ライオスは勇者の槍を投げた。

 ヒュンと音を立てて、ウィリアム、キッドの胸を突き抜けて空の彼方へ消えて行った。


 後は全て倒すのに、そう時間はかからなかった。



 翌日、ゴールドとユリア、サンターナ、アリスはエルフの少女を村まで送って行った。

 ロマ砦までワープで飛び、ここからフライで飛んで、海岸沿いをナトニア王国の方へ進んだ。

 海岸沿いを50kmぐらい行った所に海際まで森が迫っている所に来た。

 ここが攫われた所だとエルフの少女は言った。


 エルフの少女の名前はアリアナ、ロゼッタ98歳、妖精率20%だ。

 古のエルフ、カスターニャ、メンディが妖精国の森を出て、ロゼッタ領の公子と恋に落ちて、ここに住みついたらしい。


 海際の森の入り口に来た。

 そこは(いばら)の森で塞がれていた。

 ウィリアム、キッドはここを焼き尽くそうとしていたらしい。


「アリス、ここの結界は魔法ではないよ。」

「魔法の結界で無かったら、炎で焼き尽くすの?」

「いや、違うよ。これは森の木々に誰かがお願いして、村を守らせているのだよ。」

「森の木々が自分の意思でエルフの村を守っているの?」

「そうだよ。」

「そんな事、出来るの?」

「アリスは出来るじゃないか?」

「私?私、そんな事、出来ない?あっ、森の祈りの事を言っているの?」

「この森は、エルフの村を守るように意思を持たされているよ。」

「ゴールド、森の祈りなんて、私達エルフでさえ誰も出来ないわよ。」

「ここにいるじゃないか?」

「私はやっていないわよ。」

「それじゃ、もう1人のエルフだな。」

「私の他に出来るエルフ?あっ、後は大おばあさましかいないわよ。」

「アリスがやって無いなら、エルフ様がやったのだろう。」

「大おばあさまがここに来たの?」

「来たんじゃないかな。とにかく森の祈りを使って、棘を退けてもらってくれないか?」



「分ったわ。森よ、森、私のお願いを聞いてね。私達をこの中に入れて下さい。」

「いいわよ。」森から声が聞えて来た。


 棘が左右に分れて1本の道が出来た。

 ゴールド達はその道を進んだ。

 道はクネクネ曲がって、まるで迷路みたいだった。

 30分ぐらいすると、村が見えて来た。


 村の入り口には、武器を持ったエルフ達が30人ぐらいいて、こちらを見ていた。

 アリアナは走りだした。

「おとおさーーーん。」

 1人のエルフがアリアナを抱きしめた。

 そのアリアナの声を聴いて、家の中から女のエルフが出て来て、アリアナを抱きしめたのだった。


 1人のエルフが前に出て来て、アリスの前に跪いた。

「エルフ、メンディ様?よく、お出で下さいました。」

「私は大おばあさまでは無いわよ。」

「えっ、エルフ様ではないのですか?確かに良く見れば、お若くなられたように見えます。」



 ゴールド達は村に案内された。

 エルフの村は田畑がずっと広がり、村の真中を小川が流れて長閑(のどかな)な田園風景を作っていた。

 家は普通の人族の家で石作りだ。

 一番大きな家に案内されて食事が出された。

 食事には、味噌、醤油、砂糖が使用されていた。

 アリスは思った。

 自分の妖精国の里より、食事がとっても美味しいと。

 同じエルフの村なのに、この違いはいったいなんなのだ。


 大おばあさまは、この食事の美味しさを求めて、外の世界へ行っていたのだと思った。

 そう言えば、自分もゴールドの食事の為、危険なダンジョンをクリアしたのだと思ってしまった。

 村長が言った。

「村の娘を助けて下さりありがとうございました。

 何でもオークションで買い取って貰って助けて頂いたとか。

 値段を言って貰えれば、お支払いいたします。」


「いえ、結構ですよ。」

「いえいえ、こちらの気持ちですので、おいくらだったのでしょう。」

「100万ロムです。」

「えーーーーっ、100万ロム!!!

 そんなに娘はするのですか?

 100万ロムなど、この村の10年分の税収ですよ。」


「いくらぐらいだと思われたのですか?」

「金貨1枚くらいかと。」

「1万ロムですか!!」現代価値で30万円だ。


 ゴールドは安いと思ったが、ここは自給自足の村なのだ。

 村長も皆から税を集めて、道や田畑の水路の修理、村に無い物の買出しなどに使っているのだ。

 食料、武器、防具、農具にいたるまで自給自足している。



 村長の名前はタウトヴィラス、メンディ690歳、妖精率30%だ。

 アリアナの父はサロモン、ロゼッタ780歳、妖精率30%、

 母はサミア、ロゼッタ320歳、妖精率20%だ。


 長い年月が経つ内、人族と交わりながら、世代を重ねる内に、妖精率が段々低くなってきているそうだ。

 ゴールドは食事が終わると村長タウトヴィラスに聞いて見た。

「サカ、シカ、ミカを分けてもらう事は出来るでしょうか?」


「少しなら、お分けする事は出来ます。

 何処の家でも2~3年分ぐらいは作って保存しています。

 どれくらい必要ですか?

 アリアナを助けて頂いてたお礼に差し上げましょう。」


「いや、御代はお支払いいたします。サカ、シカ、ミカを10樽づつぐらい、合計30樽頂けますか?」

 1樽は1リットルぐらいの大きさだ。

「少しお待ちください。」

 村長は各家からサカ、シカ、ミカを10樽づつ集めて来てくれた。


 ゴールドは1樽につき、金貨1枚を支払った。

 サカ、シカ、ミカを提供した村民はおおいに喜んだ。何せ金貨1枚1万ロムは、3年分の税金に当たるのだ。

 アリアナの父と母は娘のお礼と思い10樽も出していたので、喜んだり、恐縮したりした。

 ゴールドは久しぶりに黒砂糖、醤油、味噌が手に入り嬉しかった。

 それで後1泊して、この村に泊り(うたげ)をする事を村長に伝えた。

 村長はおおいに喜んで了承してくれた。


 翌日の朝から村長宅の前の広場で準備に取り掛かった。

 ゴールドがヒドラの蒲焼、ユリアが雪ウサギのシチューを作った。

 サンターナとアリスは2人の手伝いをした。


 お昼頃には砂糖醤油で焼いたヒドラの良い匂いが村に漂いだした。

 村の女性のエルフが切り分けをしてくれた。

 そして子供達から食べ出した。無言でパクパク食べた。

 男衆も食べ出した。男達は涙を流していた。

 何百年も生きていて、初めての味だった。

 旨い。

 ゴールドは男達の為にウイスキーの水割りを作ってやった。

 普段酒を飲まないエルフの屍が広場を埋めるのに、そんなに時間がかからなかった。


 女性達は最後に食べ出した。

 普段、おしゃべりして食べるのに無言だ。涙を流しているエルフもいた。

 それでゴールドは女性達の為に炭酸入りラモンジュースを作ってやった。

 女性達は飲んだ瞬間にむせた。

 それでも残りを一気に飲み干した。


 そしてゴールドに御代わりをねだった。

 ゴールドはまたむせるといけないと思って断りを入れた。

 そうしたら、1人の女性がゴールドに抱きついて言った。

「私を好きにしてください。それで先ほどのジュースをもう一度、飲ませてください。」

「いやいや、そう言うつもりで断りを言ったのではありませんよ。」


 後から女性が抱きついて言った。

「私は貴方の奴隷になります。条件は先ほどのジュースを時々飲ませてくれる事です。」


 ゴールドは何かやばい感じがした。

 ラモンジュースは麻薬なのか?

 その時、ユリア姫が真女王の特技を放った。

「お控なさい。」

「ユリア様、申し訳ありませんでした。」

「いえ、貴女達の気持ちは良く分ります。

 それで、今のジュースの作り方を教えます。

 ここにラモンの種があります。」


 ユリアはラモンの種をたまてばこに入れた。

 直ぐ芽を出した。それを広場の泉の周りに植えて行った。

 最後に雨降らしポーションを使った。

 見る見る内に、背丈ぐらいのレモンの木になった。



 蜂蜜の取り方も教えた。

 ここにはお花が沢山咲いているのだ。

 気温も結界の為、良好だ。

 食べ物の力は最強だ。

 女達はせっせとレモンの木々を育てた。養蜂も手がけた。

 村中の女性の共同作業になった。

 しかし炭酸だけは無理な話だった。

 それでも十分満足して村の特産になった。



 男達はヒドラの蒲焼に目覚めた。

 今までは、魔の森からヒドラが出て来ても手を出した事はなかった。

 その内、諦めて帰って行くからだ。

 しかし、ヒドラの蒲焼を食べた後では、ヒドラを見つけたら戦うようになった。



 またユリアの作った雪ウサギのシチューを食べた男全員が「うおーーーっ」と声を上げた。

 そして、その作り方を聴いた。

 作り方は普通のシチューの作り方だ。

 中身が問題だとすぐ分った。

 それで何処で手に入るのか尋ねた。

 ふぶきと炎の洞窟で手に入ると分った。


 エルフは長生きだ。

 是が非でも食べたいと思ったエルフがエスニアまで出かけて、ふぶきの洞窟に挑戦した。


 吹雪の洞窟に挑戦すると聞いたゴールドは、このエルフに異空間収納袋を渡した。

「これに入れて、持ち帰りなさい。」

「ありがとうございます。」


 最初、入った瞬間に倒れた。

 それで防寒着を着込み挑戦しだした。

 しかしエルフは非力だ。

 中々なウサギを倒す事が出来なかった。

 エルフは時間の感覚が人族と違っていた。50年ここで頑張ったのだ。


 1階層の小屋に住み着いた。

 マンスール、ロングストリート達がこの小屋にやって来た時、エルフの男がいた。

 エルフの男は名前をタウンセント、メンディ350歳、妖精率30%と名乗った。

 そして、ここへ来た訳をマンスールに話したのだ。


 ゴールド様とお会いして、ここのウサギの肉のシチューを食べさせてもらった事。

 あまりの美味しさにここにいる事を伝えた。


 マンスールは勇者ゴールドの名前を聞いて、丁寧にタウンセントに接した。

 食料を届けたり、武器を届けたりした。


 タウンセントは段々力をつけてウサギを倒せるようになって行った。

 この洞窟に住み着いて30年目に4属性魔法に目覚めた。

 残りの20年をウサギ狩りに費やした。

 そして50年ぶりに里の村に帰って来たのだった。


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