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ロカ、ニルンルート  作者: 明広
12/38

ライオスとアデリナ

「私がタンポポ先生と訓練した時は、ゴールドから褒美が貰える事になっていました。それで必死になって練習したのですよ。

 あなた達にも褒美を用意しましょう。

 少しでもタンポポ先生に矢を当てれば、この妖精の雫を与えましょう。」


「えっ、それが妖精の雫なのですか?」

「ナイキ、妖精の雫を知っているのですか?」



「はい、王都では、勇者様がその薬を使ってラームー王国の王様を生き返らせたと噂になっているのです。

 王都の商人の話では、1,000万ロムは最低でもするだろうと噂になっています。

 それでなくても、今王都ではポーションの人気は凄くて、あっと言う間に売り切れるのです。

 妖精の雫はどんなポーションだろうと貴族の間では、いつも話しに上るポーションなのですが、まだ誰も見た者はいないのです。

 1,000ロムもしても、欲しい人には是が非でも欲しい神の薬なのです。

 自分の大切な人で、死んだ人、死に掛けている人がいる者は、何処で手に入るのか?必死になって探しているはずです。」



「ナイキ、貴方にとっていい事を教えましょう。この妖精の雫は、ユリアによれば骨からでも生き返るそうですよ。」

「骨から?」


「そして、これを先に飲んでいれば、どんな呪いも麻痺、毒も効かなく、たとえ死んでも1回は生き返るそうです。

 ナイキのように、力を求める者にとっては是非欲しい薬だと思いますよ。

 何故なら相打ちでも勝てるのですから。

 貴方にとって、絶対勝てない相手でも、相打ちで勝てるのなら欲しい薬ではありませんか?」


 ナイキでも理解出来た。相打ちで勝てるのなら、どんな強敵でも倒す事が出来るだろう。


「アリスさま、もし1,000万ロム私が用意出来たら、その薬を売ってもらえるでしょうか?

 まだ、今の私にはそんな大金は持っていないので。」


「ナイキ、貴方が腰に差しているナイフはいくらするか、知っていますか?」

「このナイフですか?」

「そうです。」


「勇者様から頂いたナイフですので、高いナイフとは思いますが、10万ロムぐらいするのでしょうか?

 なんでも魔力操作が出来やすくなるナイフと言われましたが?」


「ナイキはアダマンタイト鉱石を知っていますか?」

「いえ知りません。」

「アリスさま。」

「なんですか、アデリナ。」


「私は知っております。

 王家の宝物庫で1度だけ見た事があります。

 指輪なのですが、世界で1番硬い宝石で、どんなものでも傷をつけられない指輪として王太子が王になるときに身に着ける物だそうです。」


「私も知っております。」

「ライオスも知っているのですか?」



「今ナトニアは、ここロームと同じく復興の途中なのですが、資金が足りなくて商人に王家の宝を鑑定してもらった時の事です。

 先ほどアデリナ姫が言われた指輪がナトニア王家の宝物庫にもあります。

 商人が言うには、この指輪はアダマンタイトで出来ている指輪で神の指輪といわれているそうなのです。

 誰が作ったか、分からないそうなのですが今の技術では不可能だそうで値段は1,000万ビルなら何処でも売れる宝だと言っていました。」



 現代の価格だと3億円だ。


「それではライオスもアデリナもその指輪の宝石を覚えていますか?」

「はい、覚えています。うす青い色をしていました。商人の話では、スカイブルーと言う色だそうです。」

「では、あなたの腰のナイフと比べて見てください。」

「えっ、同じです。このナイフはアダマンタイト宝石なのですか?」

「ナイキ、1,000万ロムなら、そのナイフの先っぽを少し削って売ればいいのではありませんか。」

「アリス様、このナイフはあの指輪の20倍の大きさはありますわ。このナイフ1本で、1領都ぐらいは復興出来そうです。」


「ライオス、このナイフはドルモアの父が作ったナイフなのですよ。

 妖精族ドワーフが作ったナイフで、人族では作れないナイフなのです。

 それに貴方達魔法使いには凄く便利な物なのですよ。

 ゴールドは簡単にあなたたちに与えましたが、それだけでも感謝するのですね。」


「アリスさま」

「なんです、アデリナ。」

「アリス様の時の褒美とは、どんな宝物だったのですか?」

「私の褒美ですか?それは凄い宝物でしたわ。」

「貰えたのですか?」

「残念ながら、あの時はもらえませんでした。」

「アリスさまでも、貰えなかったのですか?」

「まだ私も未熟だったのです。今なら貰えるのですけど。」


 アリスはタンポポをなでなでした。

「では今回は矢を2本から初めて下さい。」

 3人は張り切った。貰う動機は3人違っていたが。

 しかし2倍の魔力を使ったので、直ぐ意識を無くしてしまった。

 午後からはライオスとアデリナはそのまま、魔力操作の練習をした。


 ナイキは午後から服を脱いで訓練場に来た。

「ナイキ殿、何故上着を脱がれるのですか?」

「アデリナ姫、昨日の訓練で私の服は細切れになりました。今日も同じ訓練なら、服は必要ありません。むしろ邪魔です。」

 アデリナはユリア姫から斬られた時の事を思いだした。女でも容赦なく切られ、上着はぼろ布の状態だった。

 1人では耐えられなかっただろう。口では死ぬのを覚悟していると言ったが、実際斬られれば、そんな事は言っておられない。

 痛みと恐怖で耐えられる物ではなかったのだ。

 ライオス王が自分と同じように斬られ、服はボロボロ、血で真っ赤に染まって行きながらも頑張って立っている姿を見て、自分も頑張られたのだ。

 必死になって剣を構えて立っていたのだった。


「ナイキ殿。」

「はい、サンターナさま。」

「今日は、この広場を走ってもらう。ライオス達の邪魔にならないように、外側を走りなさい。」

「どのくらい走るのでしょうか?」

「夕食までです。」


 夕食まで後5時間はある。

 5時間も走れるだろうか?

 今まで長く走ったのは30分ぐらいだった。

 ナイキはマイペースを心がけて走り出した。走り出して直ぐ、タンポポ先生が横に並んだ。

 ナイキは1人で走るより、2人で走った方が楽しそうに感じた。


「サンターナさま。」

「何でしょうか、アデリナ。」

「あの状態でタンポポ先生へ矢を放てば、ナイキ殿にも当たってしまいます。」

「それが何か問題ですか?ナイキ殿は遊びで走っているのではありません。修練として走っているのです。構わず矢を飛ばしなさい。」

「はい、分かりました。」


 アデリナは矢を2本飛ばした。

 ライオスも2本飛ばしので4本の矢がタンポポを襲った。

 タンポポは矢が3mぐらいになるまで、ナイキの横にいた。

 ナイキは矢が迫って来たのを見たら、猛ダッシュして矢から離れた。

 横を見たら、タンポポ先生がそこにいた。

 矢はタンポポを追いかけて急旋回した。

 1mぐらいに矢が迫った時、タンポポはその場から掻き消えた。

 矢はナイキに当たりそうだ。


 ナイキはタンポポ先生が自分の側から消えた瞬間に、地面にへばりついていた。

 矢はナイキの上を通り、左へ回って行った。

 ナイキが半周した時、またタンポポがナイキの側に並走した。

 4本の矢は、また2人を追いかけて来た。

 これを3周した時、矢は追いかけて来なくなった。

 ナイキが2人の近くに来た時、2人は意識を失くして倒れていた。


 ナイキは走った。意識が飛ぶまで走った。

 ふっと意識が飛びかけた時、自分の体に魔力が流れた。

 サンターナがパーフェクトヒールをかけたのだ。

 パーフェクトヒールはハイポーションと同じ効果がある。

 神ムーン シルバーがサバス人を召喚する時、彼らが使っていた回復術を、このユグドラシルのマナを用いて作ったのがパーフェクトヒールなのだ。

 そしてこのポーションがハイポーションだ。

 ハイポーションはヒールポーション、マナポーション、スタミナポーションの効果を持った薬なのだ。


 ナイキは倒れそうだった体力、気力が元に戻ってまた走った。

 それからは、倒れそうになるとサンターナがパーフェクトヒールをかけ、ナイキは夕食まで走り続けた。


 走り始めの頃は色々考えた。

 何故こんな修練をしているのだろうか?

 こんな修練が何の役に立つのだろうか?

 いつ止めてもいいのだ。などなど。

 しかし時間が経つにつれて何も考えなくなり、気付けば夕陽が西の地平線へ隠れていたのだった。


 この日からゴールドが帰って来る日まで、この練習が続いた。


 ゴールドは帰って来てから、またダンジョンにアタックした。

 しかし今回、ドルモアには鍛冶場の設計と建設の指揮をしてもらう事にした。

 その抜けたメンバーの代わりにロカ、ニルンルートを入れてアタックを開始した。


 ベラドンナ城塞都市の兵士とロベリア領の兵士にもダンジョンアタックをさせてみた。


 精鋭チームと一般の兵士チーム5人づつのパーティーと人数無制限のチーム、計6パーティーで挑戦してもらった。

 精鋭チームの平均レベルは25で一般チームは10だった。

 人数無制限の人数は約100人で、副司令官がチームを率いての攻略だ。

 まずロベリア領の一般の兵士チームからスタート。

 彼らは1階層の中ごろまでに、角ウサギを2匹仕留めたがスライムと角ウサギに囲まれ、剣や防具がぼろぼろになり、1人の兵士が負傷して戻って来た。

 ベラドンナの一般の兵士も似たようなものだった。


 ロベリア領の精鋭チームはスライムの溶解液により、剣と防具がぼろぼろになったが、1階層はクリアした。

 2階層に降りる入り口で1泊して2階層に降りた。

 しかし2階層のポイズンスライムの毒に1人の兵士が侵されて引き返したのだった。

 魔物の毒は現在のユグドラシルの治療では治らない。

 毒消し草はデスベル草から作られるのだが、毒の進行を抑えるぐらいの効果しかない。後治るか?治らないか?は本人しだいなのだ。

 50%の確率で生き返り、50%の確率で死ぬのだ。

 副司令官が率いた100名のチームも同じ結果しか残せなかった。


 そのような中、ナイキ達のアタックが開始された。

 ゴールドはついていかない事にした。

 彼らだけでどれだけ出来るかを検証する為だ。

 今回、ナイキは何を思ったのか?大盾を持って参戦した。

 タワーシールドと呼ばれる大盾だ。

 前回、後半戦からはドルモアのテレパシーにより、魔物の居場所を先に見つけて戦う事により、攻略出来ていた。

 その対策として、ナイキが自分なりに考えてタワーシールドを持ったのだ。

 ナイキが前衛として前を進み、魔物の突進をタワーシールドで防ぎ、残りのメンバーが風魔法Lv1ウインドで魔物を空中に浮かせて止めを刺して行った。


 前回の攻略でナイキのレベルはそのままだったが、ライオスはレベルが5から8へ上がり、アデリナは10から12へ上がっていた。

 またサンターナとタンポポとの訓練により、敏捷が10上がり、ナイキも5上がっていたのだ。

 角ウサギとスライムを合わせて10匹、倒した時だった。

 止めをライオスが刺したのだが、それまでは槍で止めを刺していた。この時はタンポポ先生との訓練を思い出して、矢を2本空中に浮かせてスライムの核を壊して止めを刺したのだった。


 その瞬間に風魔法Lv2ウインドカッターと弓術Lv1に覚醒したのだ。

 ライオスのウインドカッターは魔力が40もあり、敏捷が60、器用が50で自由自在に曲がって魔物を倒せた。

 タンポポ先生の敏捷3,000を相手に修練をしたのだ。

 レベル1の角ウサギの敏捷は5だ。特技突進攻撃でも8ぐらいなのだ。

 又ライオスのMpは100もあり、落ち着いて余裕をもって正確に使っても、魔力切れになる事はなく、魔物を空中に浮かせて静止させる事が出来た。

 その魔物をアデリナは空気の玉で包んで、魔物の動きを100%止めた。

 これにより誰でも魔力操作によって浮かせた矢で魔物を倒す事が出来るようになった。


 ライオスのレベルが10になった時、盾持ちをナイキと交代した。

 ライオスは年齢が17歳で、今まで身体を鍛えてこなかったので弱かったのだが、ここにきてメキメキと体力がついてきた。

 次にウインドカッターと弓術Lv1に覚醒したのはアデリナで1階層をクリアする時、ナイキもウインドカッターと弓術Lv1に覚醒したのだった。


 2階層への入り口で魔力、体力の回復を兼ねて1泊した。

 翌日、全回復した状態で2階層に降りてきた。

 降りて直ぐポイズンスライムと出くわした。

 ライオスがタワーシールドで防ぎ、アデリナがウインドで空中に浮かせて、ナイキが空気の玉で包んで完全にポイズンスライムの動きを止めた。

 そこをロカが風魔法Lv1ウインドで矢を1本操作してポイズンスライムの核を破壊した。


 10匹目の角ウサギをロカが倒した時、ウイントカッターに覚醒し弓術Lv1に覚醒したのだった。

 この時ライオスは盾術Lv1小パリィに覚醒した。

 盾術Lv1小パリィは少し魔物の突進を受け流し、魔物を無防備状態にする技だ。

 ここからはライオスがタワーシールドで魔物を横に転がし、そこを3人がウインドカッターで倒していった。

 ウインドカッターで魔物を倒すとMPの上昇が急激に伸び出した。

 ナイキはレベル13でウインドカッターに覚醒した時、まだMPは25だった。

 2階層で角ウサギレベル3を倒した時、レベル14に上がりMPが35になったのだ。


 3階層への入り口を見つけた時、気の緩みからアデリナはライオスの前に出て、入り口の方へ走った。

 また誰もが2階層をクリアしたと思って走りだした。アデリナが少し大きな木の横を通った時、そいつは現れた。

 ポイズンスライムレベル3だ。

 アデリナは咄嗟に無詠唱でウインドカッターを放った。


 何故ウインドを放ってポイズンスライムを空中に浮かせなかったのか、後になって悔やんだ。

 アデリナのウインドカッターはポイズンスライムを切断したが核を外していた。

 そのままポイズンスライムはアデリナにぶつかった。

 身体は皮の防具を着ているので大丈夫だったが、顔と手首に毒がかかったのだ。

 ポイズンスライムの毒は触れれば麻痺し、皮膚を腐らせる毒だ。


 アデリナはヒールを詠唱しようとしたが顔が麻痺して出来なかった。

 そして皮膚が紫色に変色しだしたのだ。

 ナイキとライオス、ロカはポイズンスライムへウインドカッターを放った。

 ロカのウインドカッターが核を捉えて消滅させた。

 アデリナを見ると顔が紫色に腫れ上がり、手首も腫れて来ていた。


 ナイキ達は帰る事にした。

 ライオスがアデリナをおんぶして帰り道をいそいだ。

 魔物は全て倒していたのか、1匹も現れなかった。

 しかし2階層だけでも10kmはある。

 ナイキがアデリナの状態を見て、危なくなったらライオスが回復魔法Lv1リトルヒールをかけながら帰りを急いだ。

 しかし毒の回りが速く、ライオスのMPが底をつきかけた。


 アデリナは死を覚悟した。

 それで最後に自分の思いをライオスに告げた。

 動く左手をライオスの首にかけて涙を流しながらキスをしたのだった。

 アデリナの気持ちはライオスに届いた。

 ライオスはアデリナと出会ってから、ほぼ2人で修練に励んで来た。

 何となくだけど、ライオスにはアデリナの気持ちが分った。

 それと同時に自分もアデリナが好きな事に気付いていたのだ。



「アデリナ、僕も好きだよ。

 おおーっ、神よ、ムーン シルバー様。私の願いをお聞き下さい。

 どうか、アデリナの命をお助けください。」



 ライオスは神王だ。直ぐ言葉が返って来た。


「そなたは、ゴールドから異空間収納袋を貰ったはずだ。」


「あっ、おおーっ神よ、ムーン シルバー様、ありがとうございます。」


 この時、異空間収納袋には状態異常回復ポーションや万能薬のポーション、エリクサーまで各1本づつ入っていたのだが、まだポーションの事はライオスには分らなかった。

 ライオスが喜んだのは、聖水で家臣達を治した後のゴールドの言葉だ。


「その聖水は効果が1週間だ。せっかく作ったのだ、もったいない。この袋に入れて持っていなさい。」

「この袋は何でしょうか?」

「この袋は異空間収納袋でいつまでも聖水の効果が無くならない入れ物だ。」

「お師匠様、ありがとうございます。なんか凄い入れ物ですね。」


 このダンジョンアタックに際して、ゴールドは全員にベラドンナ草から搾った汁をコーティングして作った巾着袋を背負い袋にして渡していた。

 ライオスはその中に異空間収納袋を入れていたのだ。

 急いで異空間収納袋を取り出し、魔力を袋に流した。

 すると中に入っている物のリストが頭の中に浮かんだ。


 この時、ライオスは空間魔法Lv1空間把握、Lv2異空間把握に覚醒した。


 そして聖水を取り出して、アデリナに降り掛けた。

 全員その水から立ち上るうす青色の魔力の粒が見えた。

 アデリナが白い光に包まれ、その光りが収まると、きれいな顔で現れた。


 その瞬間、ライオスは聖魔法がLv2、回復魔法もLv2に上がった。


 この時のライオス自身は気付いていなかったが、うす青色の光の粒を全身から発していたのだ。

 ゴールドよりはその光りは薄くはあったのだが。


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