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ロカ、ニルンルート  作者: 明広
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勇者の弟子

 ゴールドは冒険者ギルド開発の責任者の騎士に挨拶をした。

 名前は知らないが顔は知っていた。

 アーノルド将軍と一緒にいた9名の兵士の1人だ。

 兵士はゴールドの前で跪いた。

 ゴールドはサーチをその兵士に放った。


 カスパー、クロスフィールド37歳。

 レベル37。中将、ロベリア領主軍第一隊隊長。

 剣術レベル4だ。

 もしロームに階級制があれば伯爵か侯爵だろう。

 レベル37はローム王国では最高のレベルだ。

 リーガンのゴールドに対する気持ちが分る人事だろう。


「勇者さま、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「カスパー殿、今日私達はローム王都へ参ります。アリスやサンターナも連れて行きます。後をお願いします。」

「はい、命に代えましても、勇者さまの仕事は成し遂げてみせます。本日は伐採の後の整地の仕事をやります。任せてください。」

「ありがとう。そのお礼としてですが、貴方の剣を見せてください。」

 カスパーは腰の剣をゴールドに渡した。

 ゴールドは剣を抜いた。鋼で出来た見事な剣だ。

「これは見事な剣ですね。」

「はい、我が家に代々伝わる剣でございます。」

「貴方の剣術のうでとこの剣があれば、オーガでも対応出来ると思いますが、念のためです。私が作った剣を差し上げましょう。」

「いえ、私ではオーガを倒す事は無理です。50人ぐらいの兵士で囲んで、やっと倒せるぐらいの強敵です。サンターナ殿のようには出来ません。」

「この斬鉄剣改ならば、オーガの腕ぐらいは斬り飛ばす事が出来るはずです。サンターナが持っている剣と同じ物です。貴方の鋼の剣でも切り飛ばせるはずです。」

「鋼の剣が切れるのですか?」

「切れます。貴方の技量ならヒドラの首でも一刀両断出来ます。」

「この剣は神剣ですか?」

「いえ、私が作ったただの剣ですよ。よろしくお願いしますね。」


 ゴールドはカスパーに斬鉄剣改を渡してベラドンナ城塞都市の執務室へ飛んだ。

 ロドリゲスの執務室には5人の騎士が控えていた。

 ゴールド達を見ても、誰一人として剣を抜くものはいなかった。

 ロドリゲスは椅子から立って騎士の礼をゴールドに対して取った。

 片膝をついたのだ。

 5名の騎士も片膝をついた。

「ロドリゲス殿、いまからローム王都へ行くつもりですが、貴方も一緒に行かれますか?」「はい、お供いたします。ユーレンベック、後を頼む。」

「畏まりました。」

 ユーレンベック、タッキーニ36歳はベラドンナ城塞都市守備隊隊長Lv30だ。



 ゴールドはロドリゲスを連れてロベリア城の謁見の間に飛んだ。

 謁見の間には誰もいなかった。

 ゴールドは勝って知ったるロベリア城で、そのまま謁見の間を出て、執務室へ歩き出した。

 直ぐ衛兵に見つかり用件を尋ねられた。

 衛兵は片膝をついている。

 ここロベリア城で勇者を知らない者はいない。

「リーガン殿に会いに来た。おられるか?」

 ゴールドはサーチでリーガンが執務室にいる事は知っている。

「はい、執務室に居られます。こちらでございます。」

 衛兵は執務室へ案内をした。

 出会う全ての兵士が片膝をついた。

 執務室のドアの所まで来たら、中からドアが開いてリーガンとアーノルドが出てきた。


「勇者さま、よくおいでくださいました。」

「リーガン殿、今からローム王都へ行きます。貴方も一緒に行かれますか?」

「はい、お供いたします。」

「私もお供させてください。」

「アーノルド殿も行かれるか?」

「はい、是非お供させてください。叔父上、後を頼みます。」

「はい、確りやってきてください。」


 ゴールドはこの宰相も顔は知っている。

 アーノルドと一緒にいた9名の騎士の1人だ。

 ロベリア領の宰相、ミケランゼェロ、ロベリア36歳。

 リーガンの父、アッテンボローの一番下の弟でレベル25。

 勇猛でいて頭がきれる宰相だ。



 ゴールドはワープでローム城の謁見の間に飛んだ。

 そこには既にローム王一族が顔を揃えていた。

 昨日、アドリアナ姫が神託を受けたのだ。

「明日、勇者が帰って来る。」

 今回は全員が信じて昨日から謁見の間に出迎えの用意をして待っていたのだ。


 ゴールドを見つけたアドリアナ姫は駆けてゴールドに飛びついた。

 ゴールドは抱っこしてあげた。

「お元気でしたか、アドリアナ姫。」

「はい、元気にしていました。」

「それは良かったです。」


 ロドリゲスとリーガン、アーノルドはアデル王の前に跪いた。

「王、お変わりはありませんか。」

「おーっ、リーガン、ご苦労である。ロドリゲスもアーノルドも勇者さまのお供、ご苦労である。」

「はっ、ありがたきお言葉。」

「して、今回の用事は何なのだ?」

「はい、勇者さまは我々に魔法とポーションを与えてくださるとの事でございます。」

「リーガン、魔法とは神の御業の事か?」

「はい、さようにございます。」

「それは凄い事だ。」

「はい、我々も驚いています。」

「ところでポーションとは何だ?」

「はい、神の薬の事でございます。」

「神の薬?」

「はい、こちらも魔法と同じく無くした腕を復活させたり、病で死に掛けた者を生き返らせる神の薬の事でございます。」

「その様な薬があるのか?」

「はい、この目でしかと見ました。」

「何と!!!!」



 そこにアンリ、ローム第3王子がゴールドの前に来て、話し始めた。

「勇者さま、ご報告したい事があります。」

「はい、アンリ様、何でしょうか?」

「勇者さまから言いつかっていました孤児院の件でございます。」


 一瞬、ゴールドは何の事が分らなかった。

 自分がお願いした事をすっかり忘れていたのだ。

 半年前の事だ。

 この半年、色々な事がありすぎて忘れていた。


「あれから孤児院にずっとパンを届けています。

 マイケル、ロッキード助祭は悪党と組んで悪事を働いていましたので、ローム王国法に基づいて処分されました。

 今はシスター、サイラと新たに司祭が来て孤児院を運営しています。

 子供達も元気になり、確り育っています。

 子供達は私に懐いてくれて、私がパンを届けるのを待ってくれるようになりました。」


「おおーっ、そうですか。ありがとう、そしてご苦労様でした。」

 ゴールドは、この王子の約束を確実に守る誠実さに感動した。

 これこそ、神ムーン シルバー様のお導きだと考えたのだ。


 アドリアナ姫に魔法とポーションを覚えて貰おうと思っていたのだが、アンリ王子の半年前の、あの機転のきく対応、今の話を聞いて、アンリ王子に魔法を覚えて貰おうと考えを変えたのだった。


 それにアドリアナ姫はまだ10歳だ。

 10歳の女の子に、いくら才能があっても死ぬような危険な事をさせたく無かった。

 またゴールドには、それは出来ない事だっただろう。


「アデル王よ、神ムーン シルバー様の使い、勇者としてのお願いだ。

 ベラドンナに冒険者ギルド、錬金術師ギルドの設立を認めて欲しい。

 又、その責任者としてアンリ王子を私の弟子にください。どうであろうか?」


「アンリをですか?」

「そうです。さすればローム王国は繁栄の時を迎えるでしょう。」


「分りました、神のご意思に感謝いたします。

 アンリよ、王としてより父としてお前にお願いする。

 ロームの人々の為、神の使徒、勇者さまの弟子となり、このロームを繁栄に導いてくれ。」


「父上、分りました。アンリは勇者様について行きます。」

「アデル王。」

「何じゃ、ナウマン。」

「このナウマンにアンリ王子のお供をさせて下さい。」

「お前も行ってくれるのか。よろしく頼む。」

「はい、このナウマン、命に代えましても王子と勇者さまの為に働かせていただきます。」


 こうしてゴールドは、最初考えていた事とは違ったが、神ムーン シルバー様の願いの第一歩を踏み出したのだった。

 ローム王アデルはこの謁見の間にいる全ての騎士に宣言した。

「これよりローム王国は勇者さまの仕事を何より優先する。皆もそのつもりでいよ。」

「はっ。」



 ゴールドはベラドンナに帰ってきた。

 帰る時、料理長のチェスター、クック45歳もゴールド達について来た。

 流石にこれは断りきれなかった。

 弟子の件を断っていたからだ。

 こうしてアンリとナウマン、料理長のチェスター、アンリの従妹で許婚、カトリーナ、ロゼッタ12歳がアンリの侍女としてついてきた。


 通常ならベラドンナ城塞の王の部屋で住む事になるのだが、ゴールドが自分の弟子なら王子の身分を隠すように言ったのだ。

 弟子の心構えも伝えた。

 身も心も師匠に捧げる事。その代償として魔法とポーションを得るのだ。

 このゴールドの言葉に確りとアンリ王子は頷いた。

 後にこの言葉はロームにおいて弟子と師匠の関係を表す言葉となって行く。


 それで王家の私邸で暮らす事になった。

 私邸はベラドンナ城塞都市の門の横にあった。

 ここで4人は暮らす事になる。

 半年以上、誰も使っていなかったので埃だらけだった。

 私邸と言っても王家の私邸だ。

 王が海への保養の時使う物だ。

 50人ぐらいは生活出来そうな大きさがある。


 ゴールドは生活魔法Lv3クリーンの詠唱に入った。


「ユグドラシルのフェアリー、ブラウニーに命じる。この家を整理、整頓、清掃をして、清潔にせよ。クリーン。」


 光の玉が家中を駆け回り、30分ぐらいすると家の中から外までピッカピカになった。


 ゴールドが先ずやった事は丁度お昼時になったのでクレープとアイスクリーム、炭酸入りラモンジュースを調理場に行き、チェスターに教えながら作った事だ。


 サンターナも一緒になって調理した。

 ゴールドはクレープのレシピをチェスターに渡していたのだが、チェスターはゴールドから食べさせてもらったクレープの味が出せないでいたのだ。

 チェスターはゴールドが使う調味料に驚いた。

 チェスターはこの後、調味料の研究をしてこのユグドラシルの料理を500年進めたと言われる料理人になった。

 食堂で待っていたユリア、アリス、シンフォニー、ユリは大喜びだ。

 アンリもクレープを見て喜んだ。

 半年前に食べたあの味を忘れていなかったのだ。

 この喜んだ回りを見て、不思議そうにしたのはカトリーナとナウマンだ。


「アンリ様、何故そんなに嬉そうなのですか?」

「カトリーナ、貴女もアドリアナの5つの願いは知っているだろう。」

「はい、知っています。父、アイゼンから何度も聞かされましたもの。」

「では願いの2つ目は知っているでしょう。」

「はい、2つ目はクレープが食べたいです。父は凄く美味しそうな匂いがして、自分も食べたかったが食べられなかったとずっと悔やんでいました。」

「貴女の目の前にあるのがクレープですよ。」

「えっ、このクルクル巻かれた物がクレープなのですか?」

「そうですよ。また食べられるとは私も思っても見ませんでした。神様の食べ物だと思っていたのです。凄く好い匂いで、凄く美味しいですよ。」

「アンリさまは食べられたのですか?」

「はい、食べさせていただいたのです。」

「では、この白いクルクル巻かれた食べ物は何でしょうか?」

「それは私も知らない食べ物ですよ。」

「カトリーナさま、それはアイスクリームと言う食べ物です。少しづつぺろぺろとこういうふうに食べるのです。」

「ユリア姫さま、こうですか?」

「そうです。すこしづつ食べるのですよ。」


 テーブルの向こう側でアンリとチェスター、ナウマンが頭を押えていた。

 カトリーナはアイスクリームを食べ終えてクレープを食べてみた。

「あっ、美味しい。これが噂のクレープ。」

 父でも食べられなかった食べ物なのだ。

 アンリとチェスター、ナウマンは涙を流しながらクレープを食べていた。


 カトリーナは最後に炭酸入り氷ラモンジュースを飲んだ。

 炭酸にむせたがあまりの美味しさにラモンジュースの虜になった。

 なんて美味しいんでしょう。

 一気に飲んでしまったので、直ぐ無くなってしまった。

 回りを見渡せば全員飲んでしまっていた。



 この日から、ゴールドとアンリの修行の日々が始まった。

 ゴールドはムーン シルバーさまから教えていただいた魔法の伝授の仕方を思い出していた。

 その身で魔法を受ける事。

 受ければ素質のある者は覚醒する。

 または魔法の魔力を相手に流し込む。

 例えば回復魔法Lv1、Mp10を発動する前に相手に流し込み、体内をぐるぐる回す。

 これを繰り返す事で素質のある者は回復魔法Lv1に覚醒する。

 ゴールドはレオ、エヴァンゲリスタに風魔法を覚醒させた時を思い出していた。

 普通の風魔法Lv1では覚醒しなかった。

 10mを吹き飛ばし、後の壁まで転がって行くぐらいの強風で覚醒したのだ。

 あれをやればアンリは骨折するだろう。

 最悪死ぬかもしれない。

 アンリ王子に、その身で魔法を受けさせる事は止める事にした。


 もう一つのやり方、魔法をアンリの身体に流し込むやり方を試す事にした。

 初めに回復魔法Lv1、Mp10を流してみた。

 アンリは魔力を流された瞬間に意識が飛んだ。

 目の前が真っ白になり、すっと眠ってしまったのだ。

 アンリは1日眠っていた。

 起きたのは次の日の朝だった。

 ゴールドは心配でアンリが目を覚ますまでずっと起きていた。

 何かあれば、直ぐ対応するためだ。

 最悪死にかけてもエリクサーがある。


 朝起きたアンリに気持ちを尋ねた。

「アンリ王子、どんな気持ちだったですか?」

「はい、何も感じなくて眠ってしまいました。」

 ゴールドはほっとした。

 そして回復魔法は素質がないのだと思った。

 次の日にゴールドは聖魔法を試みた。

 アンリは聖魔法も直ぐ意識を無くして1日眠っていた。

 アンリには聖魔法の素質はないようだった。

 次にゴールドは4属性魔法を試してみた。

 先ず炎魔法を試した。これもアンリは直ぐ意識を無くして1日眠った。

 次にゴールドは風魔法を試した。

 これも直ぐ意識を無くして眠ってしまった。

 しかし3時間ぐらいで意識が戻ったのだ。


「アンリ王子、気持ちはどんなでしたか?」

「今までと変わらないです。」

「ではもう一度魔力を流しますがいいですか?」

「はい、大丈夫です。」

 ゴールドは風魔法の魔力をアンリに流した。

 今度もアンリは意識を無くした。

 しかしだ。今度は1時間で意識が戻ったのだ。


「アンリ王子、気持ちはどんなですか?」

「はい、何ともありません。」

「では、もう一度魔力をながします。いいですか?」

「はい、お願いします。

 ゴールドは風魔法の魔力を流した。

 しかしまた直ぐアンリ王子は意識を無くしてしまった。

 ゴールドはこの方法では覚醒はダメなのか?と思った。

 やはりその身で魔法を受けなければ覚醒しないのか?

 1時間後アンリ王子は目を覚ました。

 その瞬間にアンリ王子の身体から魔力が流れだした。

 魔法使いしか見る事は出来ない魔力の波だ。

 風魔法の魔力が少しだけど漏れているのだ。

 ゴールドはサーチをアンリ王子に放った。

 風魔法Lv1に覚醒していた。

 ゴールドは嬉しかった。

 神ムーン シルバー様との約束の第一歩を踏み出せたのだ。



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