新しい会社
新会社の3人のメンバーで集まって考えたビジョン。
村上さんの強引な意見に、『本当に3人で考えたことになるのか?』と何か喉にひっかかるものを感じながら、会社を作ることになったときのことを思い出していた。
「やっぱり、新しい会社作らないとね。」
それは、梅雨に入りジメジメし始めた6月のことだった。
所属していた真愛グループの川上会長から、会長室に呼び出されていた。
そのときの僕は、真愛グループの子会社と関連会社と、2社の代表取締役として、グループ事業である太陽光発電所を設置する役割を任されていた。
元々は、川上会長がCEOであるIT企業「カワミー」へ入社した。
10年ほど前の話しだ。
最初の2年は順調にシステム開発のプロジェクトマネージャー(PM)として、システム開発事業を任されていた。
IT企業と言っても、小さなSIerであったが、プライムの受託会社として、お客様から直接システム開発を請け負い、僕も部長という立場でカワミーのCEOであった川上会長と一緒に事業に邁進していた。
しかし、受託していたメインのお客様の事業撤退に伴い、カワミーの業績は悪化。
オフィスの賃料も払えないほど後がない状況に陥ってしまった。
そんな苦しい状況で新規事業を模索し、再生可能エネルギー事業に転換していったのだった。
以前、開発を請け負ったことのあるお客様ご縁で、再生可能エネルギー企業のシステム開発をカワミーで請け負うことになり、その流れでインターネットでのマーケティングも任され、結果、自社でも再エネ事業を新規事業として立ち上げるまでになったのだった。
そして、奇跡的にV字回復した。
以降、再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電所のEPCとして、約8年間、数百の太陽光発電所を設置し、お客様に販売し、そして、O&Mを手がけている。
そんな順風満帆に事業が進んでいた状況で、急に会長室に呼ばれ会社を作れと言われたのだった。
僕:『新しい会社・・・ですか?』
川上:「そう。株主も佐藤さんの名前じゃないと。」
僕が代表取締役となっている2つ会社は、1つは真愛グループの子会社で、もう一つは川上社長の息子が株主となっている。
再生可能エネルギー事業を進める上で必要にせまられ、カワミーを退職し、2つの会社の代表取締役に就任していた。
実際は真愛グループの再生可能エネルギー事業部そのものだ。
太陽光発電所のEPCの委託と、発電所向けのIoTシステムを開発をしていた。
川上:「FITも厳しくなってきてるから。それと、銀行から融資してもらえるようにね。」
僕:「はい・・・。」
太陽光発電所の事業は、国のFIT(固定価格買取制度)があって成り立つ事業だ。
しかし、年々、分割問題などのルールが厳しくなってきており、この先の展開を考えると、会社を作っておいた方が良い、ということを指していた。
そして、もう1つ。
銀行から融資を受けられない、という大きな課題があった。
川上会長の過去の事件の影響で、グループの子会社や会長の親族が経営に関わっている会社では、銀行融資が受けれなかったのだ。
川上:「そろそろ、体制変更をしようと思っていたから、佐藤さんが株主、代表取締役の会社を作る前提で、考えるから。よろしくね。」
僕:『わかりました。。。』
今まで、2社の代表取締役、グループの他のもう1社の取締役として、真愛グループの事業を担ってきた。
今回も同じように進められれば問題ないか。と、このときは安直に考えていた。
これが、この後の1年間、いや僕の人生最大の苦難を引き起こすスタートだった。
だが、この時、僕は気づくことすらできなかった。