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#6
消されていたものが戻っていく。
彼女が無意識に目を逸らしていたもの。いつの間にか見えなくなっていたもの。
それを言葉にするなら、色だ。
青い海。赤い果実。黄色い花。緑の草葉。紫の蝶。橙の夕日。藍の空。
白む息に、黒ずむ影。
——単調だった景色は彩を思い出す
瞳の深さ。髪の艶やかさ。頬の火照り。焼けた肌。冷えた指先。覗く八重歯。
治りかけの傷痕に、勢い余った愛の証。
——再び、記憶の付箋となる
溢れる色彩は、独りでないと教えてくれた。
目を惹く色彩は、不安を忘れさせてくれた。
全てに宿る色彩は、可能性を広げてくれた。
遠く離れた時。すれ違った時。失った時。
目の前から消えてしまっても、それは目印になる。
再びを願うなら、それを目指せばいい。
時には盲目でいることの方が、多くを見つけられた。
——染まり色づいていく
——世界が広がっていく
それらだって喜んでいた。
ようやく見つけてくれた、と。
そうして、始まったのだ。




