#2
ずっと、夢を見ている。
客観的にそう分かった。
何せ、視線の先には横たわる自分がいるのだから。
無機質な部屋。狭く、必要最低限の物しかない。閉鎖的な感覚に、染みついた恐怖を呼び覚まされる。
中央に鎮座するベッドの上には、少女が機器に繋がれ眠っていた。
そして彼女を囲う、二つの影。
『また、取り出すんですか?』
『一つでは足りなかった。もっと試さないといけない……』
細身の影と大柄な影。
その影を視界に入れただけで嫌悪感が湧き、けれどもどうしようもない諦念がこびりついている。
ここからは出られないのだ。
例え自分が逃げ出せても、彼女は出られない。
だから、目を離せられない。
大柄な影がどこかからナイフを取り出した。その頭髪と対照的な輝きを持つ鋭利な刃先。
その刃が向かう先を知っている。
やめて……
声は届かない。影たちに、自分は見えていない。
だから躊躇なく、彼女の腹部にナイフを突き立てた。
————
……痛い。痛い、痛い、痛い、痛い痛いいたいいたいイタイイタイイタイ……
切り裂かれ、取り出され。
逃れられない熱に、全てを侵される。
それでも自分は、彼女を見続けていた。
『やっぱり不安定になってますよっ。あまり無断でやるとなんか言われちゃんじゃないですかっ?』
『どうせ外に行くんだから構わない。そもそも政府とわたしの望みは違う』
大柄な影は何かを持っている。
良く見えない。あれは何?
目を凝らした途端に、胸の奥が握られているような感じがした。
やめてよ。もうやだ……っ。
何も分からない。でも苦しさだけはある。
泣きたくて、解放されたくて。
でも叶わない。
助けて……っ。
気づけばそんな願いを浮かべていた。
過去の幸せを思い出して、あの頃に戻りたいと祈っていた。
すると願いは聞き届けられたかのように彼が現れる。
影に相対する人物。彼はベッドに横たわる自分を見て、その目を見開いた。
その姿を見れただけで自分は救われた気分になっていて。
けれど、飛びかかる彼に影は臆した様子もない。
『またか……頼んだぞ』
『人使いが荒いですって』
細身の影が何かを取り出し、彼の額に押し当てた。
声もなく何かを叫ぶ彼。彼が影へとつかみかかろうとした瞬間、
震動。
後、彼の体は後ろへと傾いて行って。
大柄な影は、侵入者にもう見向きもしていない。
『定期的に流さないとダメだな……』
『じゃあジブン、これ片付けてきますね』
大柄な影が少女に繋がる機器をいじっている間に、小さい影が動かない体を部屋の外へと運んでいく。
運ばれていく彼の瞳は、もう開いていない。
彼女を、見てくれない。
……嫌だ。こんな場所、嫌だ。
逃げようと頭を抱えていると、次第に幸せな記憶が掘り起こされていく。




