#1
『————』
映画を見ていた。
寝室の小さなテレビ。クッションを敷いてベッドを背もたれにしている。
見たことのある作品だけれど、何でもう一度見ているかは分からない。
面白かったのだろうか。あんまり覚えていない。
何でこの作品を選んだのかも、覚えていない。
理由も思い出せないのに、ただ見つめている。
……あれ、さっき見ていたのと違うような。
目を離していないはずなのに、なんだか物語が変わっているように思えた。
恋愛ものからヒーローもの。どこかで勘違いしたのだろうか。冒頭シーンももう忘れたけれど、それでなんとなく納得した。
そしてまた、見つめ続ける。
次第に映画は終わって、スタッフロールが流れ始めた。すると見つめている自分が反射していて、そこで違和感に気づく。
左隣に、クッションが置かれている。自分が座るために敷いているのと同じ物。それになぜか自分の座る位置が変に右寄り。
まるで、隣に誰か座っていたみたい。
……何か足りない。何が足りない?
罅が入った。
けれどそれは、上塗りされる。
———
食卓に座っていた。
目の前には料理が並んでいて、どれも美味しそうだ。
箸を進めれば、その味はやはり想像していたもので舌づつみをうつ。
更に箸を進める。
味に慣れてくると少し暇が出来て、会話をしたくなる。
そうだ、さっきの映画の話をしよう。
どんな内容かは覚えていないけれど面白かったから。あのヒーローがカッコよかった。いや、恋愛ものだったんだっけ?
とにかく言葉を交わしたいと顔を上げて、
しかし、向かう席には誰もいない。
自分を見てくれる瞳がない。
自分が見ていたい姿はない。
空白だ。
いつからそこは、空いているのだっけ。
いつから自分は、一人でいるのだっけ。
罅が入った。
また広がった。
そして、砕け散る。
「……比良人、どこ?」
思い出す。
ここにいない彼。ずっとそばにいた彼。
どこにいるの?
どこに行ったの?
気づけば走り出していた。リビングの中だったはずなのに、周りは何もない荒野に変わっている。
そんな些細なことはどうでもいい。とにかく彼を見つけないと。
視界は広く辺りを見渡せる。けれど彼はどこにもいない。
「どこ、比良人どこ……!?」
荒野はどんどん広がっていく。全てを奪い去っていく。
そしてようやくその背中を見つけた。
「比良人っ!」
呼びかけると振り向いてくれる。彼だ。間違いない。大好きな瞳が見ていてくれる。
よかった。ここにいたんだ。
そう安堵していると、彼もこちらに気づき駆け寄ろうとして——
——直後、彼の頭がはじけ飛んだ。




