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Find me ~俺に近づく三人が明らかに怪しい。~  作者: 落光ふたつ
第6話「未来を恐れた少女」
51/63

#3

 昼を過ぎた頃。

 来客を告げるチャイムが鳴り、比良人が玄関扉を開けるとそこには繋が立っていた。もちろん、体は猪皮蒼のままだ。


「ごめんね急に、ちょっと近く寄ったから。……なにか変わったことはあった?」

「いや、特にないな。咲からの連絡もない。そっちもか?」

「うん……」


 比良人の問いに繋は面持ちを暗くして頷く。

 きっと彼女は、もしもに期待して三付家を訪れたのだろう。何か報告することがあればすぐ連絡する約束ではあるが、それでも僅かな可能性に感情を休めたかったのだ。

 何より繋は、行がいなくなったことにかなりの責任を感じている。夜道で一人にしたことを何度も悔いていた。


「なんか手伝えることあったら言ってくれ」

「いや、比良人くんはエミさんと一緒にいた方がいいと思うから」


 繋は笑顔を作って、それからすぐに「それじゃあ」と背中を向けた。玄関先に停めていた自転車へ跨ると、また孫娘の捜索へと戻っていく。


 比良人はしばらく、繋が去っていった方向を眺めていた。

「………」


 またも、胸中に無力感が襲ってくる。

 けれど発散は出来ずにいつまでも溜まっていって、頭の中では答えの出ない問いが何度も往復していた。


 そうして立ち尽くしていると、後ろから声がかかり我に返る。

「比良人、どうしたの?」

「……いや、なんでもない」

 振り向くとエミが首を傾げていて、誤魔化し玄関扉を閉めた。それから彼女の後ろについて廊下を歩く。


 今は家に二人きりだ。父は仕事の付き合いがあるそうで、母は買い物に出かけている。

 つい先ほど腹を満たした二人は、比良人の部屋へと向かった。


「比良人、今日は何する?」

「……映画でも見るか」


 エミの寝泊まりには別の空き部屋を貸しているが、彼女は多くの時間を比良人と過ごしたがった。外へと遊びに行ったのは昨日の遊園地が初めてだが、部屋ではよく一緒に、ゲームをしたりテレビを見たりしている。

 今日は、父親の洋画コレクションからいくつかDVDを借りていた。映画はゲームと違い、何をしなくても進むから少しは気が楽だ。

 クッションを敷きベッドを背もたれにしてテレビを見る。部屋がそれほど大きくないためテレビも小さめだが、それほど気にはならない。

 並んで鑑賞しているとふとした時に肩が触れる。けれどわざわざ遠ざかることはせず、なんとなくそのままにお互いを支え合った。


 ぼーっと二時間。

 父はヒーローものが特に好きで、有名シリーズは大体揃えてあり、今見ているのもその内の一つだ。

 エミとは一作目から順番に見ている。量が多くとっつきにくかったが、こうして時間を設けてみれば、もうシリーズも後半だ。

 ストーリーは、普通の青年が力を手に入れて人知れず悪と戦う王道なもの。海外作品とあってCGの迫力がすごく、言葉が違っても分かる演技の上手さに圧倒される。


 けれど比良人は、見る物を間違えたかな、とコッソリ思っていた。


 逆境の中、どうにかしようと抗う人物。

 それを目にするとまたも、自分も何かしないといけないのではと強迫観念に苛まれてしまう。映画の主役のように、力がある訳でもないのに。



 敵が悪事を企んでいる。   未来が大変なことになる。

 ヒロインが狙われている。  それはエミのせいらしく。

 頼れる仲間が導いてくれる。 どうすればいいか分からない。

 街の被害が拡大し窮地だ。  何かは起きているのに、自分は平穏だ。


 敵を倒すため、主人公は新たな力を得た。

 ……俺は、何をしている?



 思考が氾濫している間に、画面の向こうでは悪役が倒され大団円で終わっていた。


 スタッフロールが流れ、反射して画面に映る自分。

 一体その主役は、どうやって終点へと向かうべきなのだろうか。


 映画の再生が終わり、比良人は視界をリセットするかのように目頭を揉んだ。

 内容はあまり頭に入っていない。感想を聞かれたらどうしようかと、無難な言葉をいくつか考えながらディスクを取り出す。


「次も続きで良いか?」

 取り出したディスクをしまいつつ、比良人は問いかける。


 けれど、返事がなかった。

 言葉には発さず、頷きだけを見せたのだろうか。あるいは単に聞き逃しただけか。


 ……そう言えばいつから、彼女の肩から離れていたっけ。


 支え合うようにしていたはずだったが、思えばディスクを取ろうと動いた時には、触れていた感覚はなかった。

 比良人は、彼女が座っていた隣へ振り向いて。


 そしてそこに、エミがいないと知った。


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