#6
ケコサシス・
三付家のすぐ近くで事故のような揉み合いをした夜風繋と猪皮蒼は、気絶状態から立ち直るや否や比良人の部屋へと押し入った。
比良人は当然警戒しながらも、ここで拒絶して問題解決を先延ばしにする方が良くないと判断し招き入れたのだが、
「「「「…………」」」」
部屋を支配するのは四人分の沈黙。
夜風繋は威嚇するように比良人を睨み、猪皮蒼は困り顔で状況を窺っている。エミは相変わらずの人見知りを発揮してか、自分は関係ないとばかりに部屋の隅をじっと見つめ、時折手癖のように比良人の背中を小突いていた。
比良人も、誰に、何から問いただすべきかと言葉を選びかねている。
先ほどの行動に加え、その吊り上がるまなじりを見れば、夜風繋が自分に対して敵意、というより殺意を向けているのは間違いない。感情的なようだし、話が通じない場合もある。
ならばそんな彼女の凶行を止めようとしていた猪皮蒼に質問するべきだろうか。恐らく夜風繋の事情も知っていそうだし、今ならいつものように言い逃れもするまい。
それにエミは、比良人以外がいるとよそよそしく、話題を振っても微妙な反応しか返してこないため期待が出来ない。
そうして事情を聞く優先順位を決めた比良人は、ようやくに口を開く。
「蒼、まず——」
と、意を決して切り出した直後、
——ピンポーン。
家中に来客を知らせるチャイムが鳴り響いた。
そのボタンを誰が押したのか、比良人の頭になんとなく顔が浮かぶ。
そして部屋の戸を開いたのは、予想通りの人物だった。
「お母様とバッタリお会いしたので入れさせてもらいましたわ。他にもお客様がいるようですけれど……」
現れたのは咲だ。
比良人を取り囲む謎の一因。こうして全員が揃ったわけだ。
咲の髪型は暴露された時のままで、猪皮蒼はその変貌ぶりに若干驚いている。咲は隠していたというのにも関わらず、人の目を気にした風はなく、他よりも慣れた様子で比良人の部屋へと踏み入った。
そして、今も我関せずと顔を逸らしているエミを視界に捉える。
「……ああ、この方がですか」
何かを知っているように呟く。対するエミは反射的に視線を返したが、すぐにまた部屋の隅へと逃がした。
皆が円になって絨毯の上に座る中、咲は自分の座席を一段高いベッドに決定する。
高所からそれぞれを見下ろすと、彼女は言い放った。
「それでは、話し合いが必要みたいですわね」
これからするのは解決ではなく、問題提示である。




