#7
家へと帰る道の途中。
「咲、ヅラだったのか……」
先ほど味わった衝撃が忘れられず、俺はつい言葉を漏らす。
今日一日、デートと称して色んな所で遊び、最後には咲の部屋へと招かれたのだが、そこで明かされたのは、今まで衆目を集めてきた金の髪は作り物だったというもの。
どうも聞くに、婿養子として神楽咲家に入った父の娘であることをアピールするため、海外の血を強調していたとのことらしい。
母親が決めた相手ではあるものの、咲の父親は神楽咲家では肩身が狭いようで、それを少しでも改善しようと体を張っていたと。
上流階級は大変なんだな、と思いつつも拭いきれない違和感がある。
つい最近。デートに誘われる直前の出来事。
蒼に好きなタイプを聞かれた俺は、『黒髪ショート』と答えた。
その場には咲もいて。
果たして偶然なのだろうか。
暴露後、咲はいつも通り求婚してきたが、さすがに困惑した俺は時間を貰いたいと部屋を後にした。送るという提案も、黒髪の咲を見ていると頭が混乱するし一人で色々考えもしたかったから、俺は歩いて自宅を目指すことにしたのだ。
結構距離はあるが、頭を冷やすには丁度良い。
……黒髪ショート。
その特徴は俺が、中学生を目前にした時に見かけた女性のもの。
あまりハッキリとは思い出せないが、しかし咲とはどうしても重ならない。
「そういやあのオッサンも何だったんだろうな」
あの時に出会った奇妙な人物は女性だけではなく、変な中年男性もいた。
やけに気安く、なのに不信感を覚えられなかった人。
二人は一瞬のうちに消えて、あの記憶が夢だったのではと思う自分もいる。
そうして過去を振り返りながら歩いていると、気づけばまさにその場所へとやって来ていた。
河川敷。
当時は学校の帰り道で、不意に呼び止められ振り向けばオッサンがいたのだ。
それから隣に座って、様々なことを話した。記憶の中の無邪気な少年は、なんだか今では他人事のようにも思える。
あの時の出来事が、今までの全ての答えに繋がるのだろうか。
そう思い立って、俺は緑の坂を下り、中腹、丁度当時と同じように、オッサンの座っていただろう場所に腰を下ろした。
風が吹く。
瞬間、当時の感覚が呼び起こされて。
俺はふと、隣を見た——




