昔の話
こんばんは、お久しぶりです。シラスよいちです。
最近は上手くいかないことが多く、相変わらず限界で生きています。
どうにか自分が、読者が、生きていける為の手助けになればと、とりあえず筆だけは執り続けています。良ければご一読下さい。
昔の話をしよう。馬鹿な感情論者と、馬鹿な詐欺師の話だ。
とある少年と、それがずっと好きだった女と、少年の友人にして女の幼馴染である男。
少年は上手くアピールしていたし、女も少しずつその気になってくれていたし、友人もそれをうまく取り持ってくれていた。
このまま、平穏に物語はハッピーエンドを迎えるはずだった。
『幼馴染の家まで来て欲しい』
ラインに送られてきた一文を見て家を飛び出した。
好きだった女に呼び出されていかないはずもなく、自転車を飛ばす。
加速、加速、加速。1秒毎にいた位置から遠のいていく。
チャイムを推して家に上げられると、静かな緊張感の中部屋に向かう。
「おいすー」
そこにいたのは、何故かメイド服を着せられた彼女とニヤニヤしながら佇む幼馴染だ
った。
「えっとー、これは…どういうこと?」
好きな女と信用していた友人が二人きりの状態で、女がコスプレ。
「終わってない?どうしてこうなった?」
少年が問いただすと、明らかに焦り出す友人。
「いや、メイド服着せた〇〇を見せたら喜ぶかなぁと思って…」
動揺しながら早口で弁明する友人にキレながらも、恋愛を手伝ってもらっている身としては何も言えない。
「じゃあ見せれたから、着替えの手伝いするから目ぇ瞑ってて」
続けて言う友人に少年は訝しげな表情を浮かべながらも素直に応じる。
少年はその日、言い訳を飲み込んで帰った。
「まぁ、おれはただの友人であっちは幼馴染だしな。俺が口出し出来ることでもないのかもしれない」
女も何故応じているのだろうか。疑問に思わずにはいられない。
帰りがけ、二人きりになったときに問うと、減るものでもないでしょうと返答が来る。
――すり減るものはあると思うんだけどな。
あれから2週間が経った頃、夏祭りの日の夜に3人で手持ち花火をするという話が持ち上がる。
その夜、花火が派手な色で手元を照らす。それは妖しく、綺麗すぎて信じてもいいのか怪しい色。風もなく、花火が映える夜だった。
少年は彼女に微笑みかける。
「綺麗やね」
あっという間に楽しい時間は終わっていく。その後に事件は起きた。
花火の片付けで俺が場を離れ、二人の元に戻ると女が涙目で立っている。
それで少年は全て察した。
「何された?」
自然と声が低く、絶対零度の気を帯びる。
「また身体触られた。もう嫌」
その声を聴いて、というかその声に反応した少年は一陣の夜風になる。
思わず身構えて正面を守る友人に対して、身体を大きく一回転させてがら空きの脇に踵で回し蹴りを叩き込む。
「二度と近づくな、変態。友達やと思ってたんに」
「違う、たまたま当たっただけで。ただの友達同士のくせに幼馴染の問題に口出すなよ」
痛みに呻きながらなおも吠える友人に、軽蔑の目を向ける。
「その薄っぺらい理論は、人の感情より重いのか?屑」
そんなことがあってから、少年は女により一層好かれ付き合うに至った。
あのメイド服のときに、ちゃんと感情をぶつけていれば。その分幸せにしなければ。
幸福に満ちた日々が始まる。訳でもなく、数か月たって関係は終わった。
感情だけで付き合わず、もっと彼女を直視していれば彼女が色んなものに依存すること
も事前に分かったかもしれない。
この昔話が、誰かの教訓になりますように。
いかがだったでしょうか?今回はリアルを描きたくて、出来るだけ脳内に浮かんだものを具現化できるような作品を目指しました。
もし良ければ感想も下さいましたら幸いです。
それでは、また次回作でお会いできることを楽しみにしています。