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94、屍の王の憂鬱

短め

 

 自身の存在意義を探した事はあるか?

 己はどこから来て、どこへ向かっているのか考えた事はあるか?


 誰しも、一度はあるはずだ。

 知識と智慧を与えられた生物ならば、必ず考えた事があると断言出来る。それだけこの問題は生物を惹きつけ、そして、その生涯を通して考えなければならないほど難しい。

 事実、(われ)も相当難儀している。

 生まれてこの方、という表現は吾に適応するか分からぬが、永き時をこの問に答えるために費やしていると言っても過言ではない。


 吾の中には、悠久の時がある。

 だが、吾の中にあるのは、他の存在とは比べられぬほど薄いものでしかないのではないか、と悩む。

 何百年も考え続けてきたのだ。考える事しかしてこなかったからこそ、吾はどうしようもなく薄いのではないのかと、悩む。

 悩む事だけの時間だった。

 神から締め出され、その末に己で定めた、この暗い虚の中で悶々とする日々だった。

 吾は変われなかった。

 ただ深く思い悩むだけで、答えどころかその手掛かりすらも掴めなかった。

 

 だから、吾は期待している。


 古き『西の獣』が何者かによって滅ぼされた。

 退屈という毒にやられたのかとも思ったが、吾と対等の存在が、自死程度で死ぬはずもないと知っている。

 少し探れば、吾らを滅ぼすための『勇者』とやらが異なる世界から呼び出されたらしい。そして、彼奴らはその役目を果たし、見事に『西の獣』を打ち破った。

 変わらなかった戦況を、見事に変えた。

 奴が犯されていた『退屈』という名の病を、彼らは見事に癒やしてみせた。


 だから、吾は期待している。


 彼奴らならば、変化をもたらすのではないか?

 変らないだけの薄き日々が、この朽ちた身を再び動かすほどの熱烈な時間に変わるのではないか?

 吾の中に巣食う『憂鬱』の病を消し去ってはもらえないだろうか?

 

 吾は期待している。



「早う、早う来い、勇者一行……」



 屍の王が、貴様らを歓迎しよう。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっとまだ途中だけど、この作品に対する好きが溢れてきたので感想書きます。 まず最初、あらすじで面白そうだなと思って読み始めて、1章は変わった主人公だなぁと思いつつその魅力に惹かれました。…
[気になる点] なんか王を一人(二人だっけ)倒したら、クララが合流してもいいって話があった気がするけど、やっぱりクララがアイリスと会いたくないから、合流しないんですかね? (まだ開幕して、主人公サイ…
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