3
誤字修正しています
木曜日のお昼、社食で唐揚げ定食を食べている時に気が付いた。
やっべ…私、勇樹のマンションに私物、置いたままにしてるんじゃね?
今更取りに行きますとか連絡を入れるのも億劫だし…それを思い出していたら、マンションの合鍵も持ったままだったことに気が付いた。直接会って勇樹の額に鍵がめり込むくらいに、腕力増強魔法を駆使して鍵を押し付けてやりたいところだが、やっぱり顔を見たら怒りより悔しくて泣けてくる気持ちの方が、今は強い気がする。
直接会うのは無理だな。
普通、こういう場合は元彼にコッソリ家に入っていると思われるのも癪だし?嫌だけど、「私物取りにマンションに入りまーす。」とか連絡を入れるものよね。じゃないといきなり行った時に元彼と遭遇したり…もっと悲惨なのが元彼の今カノに遭遇したり…という危険性があるもんね。
まあ、私はそんな心配いらないけどね。人の魔質視えるし?勇樹とあの浮気女が完全にマンションから離れている時を狙って私物を取りに行けますし?何ならこの昼休みの今、転移魔法で移動して勇樹のマンションから私物を全部引き上げて来れますけど?
ていうか、置いている可能性のある物品を数えてたら結構な量になるな…。
仕方ない、よし…今週末に勇樹のマンションに直接飛んで行って持って帰ろう。勇樹だって週末は、どこかに出かけたりするだろうし…。あ…あの女とデートか?
ムカつくムカつくムカつくっ!
土曜日の早朝…。歩いて2分の勇樹のマンションの方を視た。勇樹の部屋の魔質を探る。
ちっ…家に居るな。お泊りじゃないのか…隣にはあの女の魔質は視えない。1人か…それはそれで、モヤッとする。早く出て行けー早く出て行けー。
朝起きて朝食を食べ、古着を段ボールに詰めながら勇樹の様子を窺う。まだか?おせーなっ。私だって暇じゃねーんだよ。やっと昼前に勇樹はノロノロと起きたようだ。
私はすでに部屋の中で勇樹のマンションに突撃用の持ち物の点検をしていた。
移動は魔法を使うことにした。今思い出すだけでも一回では運びきれない荷物が置いてあると気が付いたからだ。
分別のゴミ袋、軍手とゴミ袋、大きめのエコバック…まあ何か足りなければまた取りに戻ればいい。
勇樹のマンションの方を再度見た…よし、動き出した。
勇樹はやっとマンションを出て行ったようだ。私はすぐに転移魔法を発動した。
勝手知ったる元彼の部屋…いつも来ていた頃と変わらない。しかし、変わるものがあった…。あの浮気女の魔質を感じる!
ムカつくムカつくムカつくー!
洗面所に飛び込むと、私の歯ブラシを袋に放り込んだ。浴室に置いてあるシャンプー類も全部袋に詰め込んだ。おっと忘れる所だった化粧品の類も回収した。
今度は急いで寝室の横のクローゼットを開けると、自分の服…パジャマや部屋着をエコバックに押し込んでいった。
「はぁ…はぁ…。」
一度、手荷物が一杯になったので、転移魔法で自分のマンションに戻ってから再び戻って来た。
一旦離れたことでちょっと冷静になれた。
次は台所にも入ってみた。そうだ…茶碗だ。食器棚の中からマグカップ、箸、茶碗…もエコバックに押し込む。そう言えば…と思い出して冷蔵庫の中を確認して驚愕した。
冷蔵庫の中に作り置きのおかずを置いていたのだが…おかずは全て無くなっていた!あのボケ!しっかり食べてるよっ。別れた女の作ったものを食べるなんてぇぇ…毒でも入れてやろうかぁぁ?!
もう食べられて無いけどさ…けっ。
トイレも中に入って確認した。そうだ…。トイレットペーパーをホルダーから抜き取って、便座に座っていては届かない窓際にわざわざ置いてやった。因みにストックのペーパーもわざわざ収納棚に直してあげた。
フンッ…トイレットペーパーが無いっ?!…と地味に困るがいいさ。これぐらいの嫌がらせくらいはさせてくれ。
もう一度部屋をゆっくりと見た。もう無いかな…。実は写真や映像…こういうのが残っているのは気が付いている。どうしようか…いや、それは勇樹が処分するだろう。
もう二度と来ることのない部屋。フフ…何て馬鹿なんだろうか。こんな風にムキになって私物を取りに来なくても良かったのに…何だか私物を勇樹に捨てられるのも、あの女に捨てられるもの嫌だったもの。
捨てるのなら自分の手で…。
私はこの部屋の合鍵をローテーブルの上にソッと置くと…勇樹の部屋から転移魔法を使って帰った。