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第三話「その力」

どうも。お久しぶりです。

かなり間が空いちゃって申し訳ありません。

とりあえず生きていますよと。

「それで? いったいこの人の力というのは何なんですか?」


 リィリアちゃんの提案で、俺達は喫茶店に来ていた。正直、ドレアちゃんと一緒に喫茶店に来るのはどうかと思ったけど。

 案外大丈夫だった。

 どういうわけか店員さんが普通に対応してくれたのだ。


 それに周りの客達も特にドレアちゃんの格好を気にしている様子がない。俺はかなり気になっているが、リィリアちゃんやドレアちゃんは普通に席に着いている。

 本題に入る前に、そっちの話を聞いてみよう。


「あのさ。話を中断するようで悪いと思うんだけど」

「どうしたの?」


 じっとドレアちゃんを見詰めながら問いかける。


「その、明らかにドレアちゃんの格好は目立つと思うんだけど」

「あぁ、そのこと。それはドレアちゃんが幻覚の魔法を使っているからだよ。ね?」

「そうです。ボク達は、本来表世界に存在してはならない。だから、そのほとんどが隠れて生活をしているんです。リィリアのように表世界を出歩く場合は、その場に居てもおかしくない姿と格好をする。まあ、ボクはこの格好にこだわりがありますから。表世界の格好に合わせるなんて、死んでも嫌ですが! なので、幻覚の魔法を使って周りを騙しているというわけですよ。それなのに」


 ギロリと俺のことを睨み付けてくるドレアちゃん。


「なんで君には効いてないんですか? 弱い幻覚とはいえ、何の力もない人間達には、抜群に効くはずなのに」


 そう言って今度は、リィリアちゃんを睨む。

 ここで本題に移るわけだ。

 俺も、ドレアちゃんに続き、リィリアちゃんを見詰めて、答えを待つ。


「ふふ。気になる?」

「気になる」

「ボクはそのためにわざわざ実験を中断して来てやったんです。勿体ぶってないで、早く言ってください」


 ドレアちゃんは、オレンジジュースをストローで一気に飲み干し、眉間にシワを寄せる。


「……実はね」


 ついに。


「陽樹お兄ちゃんには」


 俺に秘められた力が明らかに!


「自分に害するあらゆる力が効かないっていう力だがあるんだよ」


 そ、そんな力だったのか!? それってかなり強い力なんじゃ。

 そうか。

 幻覚も、考えてみれば害する力だよな。だから、俺にはドレアちゃんの姿が魔女っ子の姿のままで見えているのか。


「まあ、これはわたしの予想で、本当かどうかはわからないけどね」

「り、リィリアちゃん? それって実のところリィリアちゃんもわかってないってことなんじゃ?」

「えへっ」


 ぺろっと舌を出して、ごめんなさいと言っているかのようにウィンクをするリィリアちゃん。

 めちゃめちゃ可愛いけど、これは。


「あっ」


 ドレアちゃんを見ると、予想通りかなり不機嫌な表情を浮かべていた。そりゃあ、そうだ。

 わかってます風に言って、連れてこられたのに、まだ予想の段階だって聞かされたら。


「ふざけているんですか!? それはあなたの妄想に過ぎないじゃないですか!? なんですか! そのデタラメは!?」


 テーブルを盛大に叩き、席を立ち上がりながら怒鳴り散らすドレアちゃん。これにはさすがに、他の客達も注目せざるおえない。

 

「なになに?」

「まさか修羅場ってやつか? 最近の子は大人だなぁ」

「いや、姉妹喧嘩だろ? 修羅場は修羅場でも」

「でも、明らかにあの二人似てないぞ。やっぱり恋愛系の修羅場だって」


 やばい。色んな勘違いされている。

 とりあえず、この場に知り合いがいないのが救いだけど。


「落ち着いて、ドレアちゃん。確かに、予想の段階だけど。あながち間違いじゃないと思うから。ね?」

「……続けてください」


 とりあえずは落ち着いてくれたようだ。まあ、それでも視線がちらほらと突き刺さっているんだけど。

 やっぱり、喫茶店のような場所じゃなくて、リィリアちゃんの家とかそういう場所の方がよかったんじゃ。これじゃ、浮気がばれたから話し合いをしているみたいな雰囲気じゃないか。

 違うんだけどさ。


「わたしが陽樹お兄ちゃんの力をそう予想したのは、出会った時からなんだよ」

「そ、そんなに前から?」

「うん。ほら? 血を舐めたよね?」


 そう言えば舐められたな。


「なるほど。確かに、そう予想するのも無理はありませんね」

「ど、どういうこと?」

「吸血鬼であるリィリアは、相手の血液を舐めただけで体の自由を奪うことができるんですよ」


 ま、マジで!? 吸血鬼って噛み付いたらじゃなかったっけ? あれ? 


「だから、この人にはそういう特別な力があるんじゃないかなぁって。それに」

「うむ。あたしの魅了も効かなかったからにゃ」


 先ほどまで黙っていたレーニャちゃんの分身が胸ポケットから姿を現す。


「なんだ居たんですか、引きバス」

「にゃははは。引きこもりのサキュバスだからかにゃ? うまいじゃないか、猫魔女」


 そういえば、レーニャちゃんも不思議がってたな。

 

「……君、本当に何者なんですか? リィリアもレーニャも普通じゃないほど強力な力を持っているのに」

「俺も正直わからないんだけど」


 だからこそ、リィリアちゃんの話を聞きたかったわけで。


「ね? 興味出てきたよね? もし陽樹お兄ちゃんの力がわたしの予想通りなら、前代未聞だから」

「まあ、確かに少しは興味出てきましたよ。少し、ですが。あっ、オレンジジュースおかわりです」

「はーい。かしこまりました」


 とりあえずは、つかみはオッケーってところかな? この調子ならドレアちゃんの情報も聞き出せるかも。

 ……そういえば、どうしてドレアちゃんの情報を聞き出そうとしていたんだっけ? 


「それで? ボクのことを知りたいそうですが」

「話してくれるの?」

「しょうがないですから。情報交換ってことで話して上げますよ。仕方なーくですが」

「素直じゃないにゃー」


 レーニャちゃん。さっきから語尾が。可愛いんだけどさ。


「うるさいですよ。ほら、さっさと聞いてこいですよ」

「えーっと」


 改めて言われると、何を聞いていいやら。


「じゃあ。わたしが代わりに。ドレアちゃんの好みの異性は?」


 いきなりそんなことを。さすがリィリアちゃんってところだけど。


「特にないですよ。ボクは、恋愛なんて興味ないですからね」


 と、おかわりしたオレンジジュースを飲む。

 確かに、嘘はついていないみただな。

 今は、魔女王を目指して魔法の実験と修行にしか興味がないみたいだ。


「そっかー。じゃあ、次はレーニャちゃん」

「うむ。あたしからはこれだ。エッチなことに興味はあるかにゃ?」


 さすがサキュバス。質問が過激だ。


「全然興味ないですよー」


 これも本当だ。そっぽを向いているけど、俺にだって嘘をついていないってわかる。


「はい。それじゃあ、陽樹お兄ちゃん」


 ついに俺か。

 しかし、ここまでの質問で色恋沙汰なんかにはまったく興味がないドレアちゃん。となると、もっと別の質問だな。

 とはいえ、好きな食べ物は? とか。ありふれた質問でいいのだろうか? どうせなら、もうちょっと変化球で攻めてみても。


「じゃあ」


 と、俺が質問しようとし刹那。


「あっ」


 ドレアちゃんは、なにかを思い出したかのように声を上げる。

 そして、そのまま席を立つ。


「残念ですが。用事を思い出したので」

「あ、うん。わかった。無理に誘ってごめん」

「別にいいですよ。それじゃ、質問はまた今後」


 また今後? それって

 店から去っていくドレアちゃんを見て、呆然としているとリィリアちゃんがぐっと親指を立てる。


「やったね」

「あの魔法馬鹿が、興味を持ったからな。これからが楽しみだ」


 そっか。また今度、か。少しは、距離が縮まったってことなんだ。

 ちょっと嬉しいかも。

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