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第一話「見知らぬ豪邸に」

 どうも、俺、木山陽樹です。

 昔から仲良くしていた幼馴染二人が突然付き合うことになったのに加え、ざまぁされてしまい色々参っていた俺ですが、なんか回復しました。


 え? どうしてかって? 

 それは……。


「ほら、お兄ちゃん。あーんして」

「あーん」

「おいしい?」

「おいしいです! それと膝枕最高です!!」

「よかったぁ。大分元気になったね、お兄ちゃん。よしよし」


 このように天使のような幼女に甘やかされた結果。

 俺は、すっかり元気になりました。

 はっきり言って、まだ二人のことは気になるけど……今は、この至福の時間を堪能したいと思います。


 それにしても、びっくりしたよな。

 まさか迷い混んだところもそうだけど、出会ったこの子が……。



・・・・



「こっちだよ、お兄ちゃん」

「う、うん」


 迷い混んだ森で出会った幼女の名前はリィリアというらしい。

 やっぱり外国の子だったようだ。

 歳は、今年で十二歳になるらしく、同年代の友達は数え切れないほどいて、毎日が順風満帆。

 今日は、食後の散歩をしていた時に俺を見つけたようなのだ。


 そんなリィリアに俺は自宅に誘われた。

 いったいどういう意図があるかは未だに謎だ。けど、悪い子ではないことは確実だ。

 何せこんな見ず知らずの男のことを元気付けてくれた天使のような子だからな。あの感触……笑顔は俺の脳裏にしかと焼き付けられた。


「ねえ、リィリアちゃん。本当にこんな森の奥に自宅があるの?」


 俺が住んでいるところは、都会ほどではないが建物が多い。森がないわけではないが、少ないだろう。

 昔はよく森の中を駆け回っていたけど……こんなに霧が濃いのは初めてかもしれない。というか、リィリアちゃんみたいな子が住んでいたなんて初めて知った。こんなに可愛い子が町に居たら普通話題になるはずなんだけどな。


「うん。もうちょっとだから頑張ってお兄ちゃん。家なら電話も使えるから」


 現在の時刻は十九時を回っている。さすがに部活にも入っていないのにこんな時間まで何の連絡もなしに帰らないとなれば、両親が心配するはずだ。

 まずリィリアちゃんの家に着いたらちゃんと連絡しないと。


「ほら、着いたよ」

「ここが……」


 霧がいつの間にか晴れており、進行の邪魔をしたいた木々もなくなって景色がはっきりと見える。

 森を抜けた先にあったのは、テレビなどでしか見たことがないお金持ちが住んでいそうな豪邸。近くには月光により美しく輝いている湖があり、夏にはあそこで思いっきり泳ぎたいという気持ちになってしまう。

 森の奥にこんな豪邸があったなんて……どうして今まで見つからなかったんだ?


「ただいまぁ」


 俺の自宅の玄関より二倍、いや三倍? とにかく大きなドアをリィリアちゃんが軽々と片手で開き中へ入っていく。俺も後に続こうとするが、足が自然と止まってしまう。

 なんていうか、こういう豪邸に入ったことがないから、俺なんかが足を踏み入れて良いのだろうか? と体を反応したのだ。


「ほら、お兄ちゃん。入って入って」

「うおっ!?」


 しかし、リィリアちゃんに手を引かれ強制的にお邪魔します。

 ドアが閉まる音を背に俺は、中の光景を唖然とした表情で見詰める。

 何せシャンデリアがあるんだ。階段が大きいんだ。赤い絨毯があるんだ。もはや玄関からして、俺の家の何倍もの広さだ。リィリアちゃんって本当に何者なんだ?


「あっ、お嬢様。お帰りなさいませ。今日は少し遅いお戻りですね」


 唖然としていたらメイドさんが登場。スカートはロングタイプで、とても清楚な子だ。

 しかし、服の上からでもハッキリとわかる胸。あれは……湊よりも大きいのでは? 漆黒のボブヘアーのメイドさんはリィリアちゃんに頭を下げた後、立ち尽くしていた俺に視線を向け、目を丸くする。

 あはは、やっぱり俺みたいな田舎者が来るのはあんまりないんだろうな……。


「お、お嬢様。そちらの男性は?」

「陽樹お兄ちゃんだよ。森で出会ったの。元気がないからわたしが元気付けてあげようって。それに」


 何やらメイドさんの耳元でリィリアちゃんがこそこそと呟いている。な、何だろう?


「そ、それはまことですか?」

「うん!」

「このお方が……」

 

 なんかさっきとは違った驚き顔で俺を見ている。なんだ? 俺がここに連れてこられた理由を聞いて、だよな。

 思い当たる節は……血?

 いやいやそんなまさか。もし、俺の考えが正しかったらリィリアちゃんは。


「パパとママは?」

「旦那様は、現在所用により外出中です。奥様は浴室に」

「そっか。あっ、お兄ちゃん。紹介するね。新人メイドのウィテルだよ」

「新人メイドのウィテルと申します。陽樹様」


 こ、これはどうもと新人とは思えない優雅な佇まいにぎこちないお辞儀で返す。


「じゃあさっそくだけどお兄ちゃん。電話はこっちだよ」

「あ、ああ」


 軽い挨拶を終えた俺は、笑顔のウィテルさんに見守られながらリィリアちゃんに電話の場所まで案内される。

 途中ですれ違う違うメイドさん達に、物珍しそうな視線も向けられ、なんとか電話のある場所へ到着。なんていうか今では珍しいダイヤル式の電話だ。


「……あっ、母さん。俺、陽樹だけど」


 ダイヤル式は初めてだったので、ちょっとぎこちない感じで自宅の番号を回したところ、ワンコールで母が出た。


《ちょっと陽樹! あんたいったいどこに居る!? 携帯に何回かけたと思ってるの!?》


 予想通りすごく心配していたようだ。俺は怒鳴りながらも、心配そうな声音の母さんに森に迷い混んだこと、携帯が圏外だったことを順をおって説明した。

 そして、今は自分を助けてくれた子の家の電話からかけていることを伝えるとどんな子? と聞かれたのでリィリアちゃんに一度変わってもらうことにした。


「もしもし、お電話変わりました。リィリア・ファフニーラと申します」

《が、外国の人?》

「はい。実は、陽樹さんは今とても疲れている状態でして、しばらくはここでお休みになることになっているんです」


 そう、ここまで何とか歩いてこれたけど、もう限界。

 本当にどれだけ歩いたのか……精神的にも参っているのもあり、早く休みたい気分なのだ。


 そのことをリィリアちゃんが丁寧に説明していると母さんは納得してくれた。そして、今日は遅い時間なのでリィリアちゃんの自宅に泊まることを提案されたのだが、母さんは車で迎えに行くと言う。

 というか母さん、相変わらず声が大きいな。

 受話器を持ってない俺にも聞こえるぞ。


「でしたら、こちらでご自宅までお送り致します。慣れていないと道に迷ってしまうかもしれませんから」

《そ、そうなの。じゃあ、お願いしようかしら。あっ、息子に代わってくれる? リィリアちゃん》

「わかりました。はい、お兄ちゃん」

「あ、ああ」


 電話を代わると、迷惑をかけないようにとか、可愛い女の子っぽいから手を出すなとか色々言われ、電話は終了。

 その後、俺はリィリアちゃんの自室に連れられ癒しタイムへと……。

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